『SHOGUN 将軍』劇場公開
先週、期間限定で劇場公開された『SHOGUN 将軍』(第1話と第2話)を観た。
言うまでもない、アメリカのエミー賞受賞作品。今年9月に作品賞、主演男優賞、主演女優賞ほか、史上最多の18部門を受賞したドラマシリーズである。主演の真田広之がプロデューサーも兼ねて、日本文化を正しく伝える時代劇を目指して作り上げた作品が、まさに歴史的快挙を成し遂げたとして、日本のエンタメ界を大いに賑わせたニュースだったのは記憶に新しい。
いわば「本物の時代劇」を目指した『将軍』だが、第1話と第2話を見る限りでは、本物感がそれほど強い印象ではなかった。というのは、ストーリーは日本に漂着したイギリス人の船乗りを中心に進むし、当時の日本に広まっていたキリスト教カトリックの国(ポルトガル、スペイン)と、後からやってきたプロテスタントの国(オランダ、イギリス)の対立を強調する場面がいやに目立っていたからだ。さらに、主人公の武将「吉井虎永」とそのライバル「石堂和成」を含む「五大老」、つまり日本の最高クラスの権力者たち5人のうち2人がキリシタン大名。そのカトリックの2大名が、プロテスタントのイギリス人を速やかに抹殺するよう求めるなど、当時のヨーロッパの新教と旧教の対立が日本にも持ち込まれているという、何だかかなり妙な感じのするストーリーなのだった。お話のベースとしているのは、1600年の「関ヶ原の戦い」直前の時代で、確かに16世紀のヨーロッパは宗教改革の時代であり、その結果としてカトリックのイエズス会が日本にキリスト教を伝えたようなものだけど、日本のキリシタンにプロテスタントを目の敵にする気持ちがあったとは思えないわけで。その辺はキリスト教ベースの西洋人にも入りやすいストーリーにしているのかもしれないが、日本人にはやや奇妙な感じのする「時代劇」になっているというのが、正直な感想。
「インスパイアされた」という言い方になっているが、登場人物にはモデルがあり、吉井虎永は徳川家康、石堂和成は石田三成。フィクションなので別にいいけど、石堂は五大老のひとり(史実は五奉行)で、虎永とほぼ対等感のある人物にグレードアップ。五大老のひとりに、大谷吉継にインスパイアされたと思われる武将がいるが、なぜかキリシタン大名で、ハンセン病が重くなって見た目がグロい感じになっているのが、ちょっと嫌だな。(汗)
もしかすると第3話以降、より本格的な時代劇になっていくのかも知れないが、今のところ配信で見る気もあんまりしないなあ。
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