政治家の「経済オンチ」は罪深い
日本の政党の掲げる経済政策は妥当性が疑われるものばかり。日経新聞電子版15日発信のコラム記事(自民・国民民主・れいわ「経済オンチ」は一体だれか?)からメモする。
石破首相(自民党総裁)は衆院選で「最優先すべきはデフレからの完全脱却だ」と主張した。一方でそのために掲げたのは「物価高を克服するための経済対策」だった。
デフレなのか物価高なのか。消費者物価指数の上昇率は、インフレ目標である2%を2年半にわたって上回り続けている。生活者の物価感をデフレかインフレかの二択で示せば、今はインフレだろう。ところがデフレという単語は曖昧に解釈できる。「デフレ=経済停滞」と広義にとらえれば、ガソリン補助金のような物価高対策に大義名分が生まれ、有権者にアピールする財政出動に道が開ける。
国民民主の玉木代表は「賃金デフレ」という言葉を使う。それが指すのは「1996年をピークに下がり続けている実質賃金」だという。
実質賃金は、実際に生活者が受け取る賃金(名目賃金)から物価上昇分を差し引いて計算する。2023年の実質賃金は前年から2.5%も下落した。ただ、実質賃金が下がった最大の理由は手取りが減ったからではなく、消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)が3.8%も上がったからだ。現状は円安を起点に賃金上昇を上回るインフレ圧力がかかっている。本来なら引き締め的な円安対策を講じるのが王道だ。玉木氏はそれを「賃金デフレ」と言い換えることで、所得税の非課税枠拡大といった大幅減税案で有権者の歓心を買うことに成功した。
衆院選で議席を増やしたれいわの山本代表は「30年不況」という厳しい言葉を繰り返す。
経済論議の中で「不況」とは通常、景気循環上の悪化局面を指す。実際の日本経済は、1993年から2020年までの5回の景気循環の中で拡張期は245カ月、後退期は74カ月と成長期の方が大幅に長い。長期トレンドとして「低成長」の状態にあるが、マイナス成長を続けているわけではない。不況期であれば、失業者の増加を防ぐ即効性のある財政出動と金融緩和が必要になる。山本氏がいう「消費税減税」も検討対象の一つになるかもしれない。
経済状態が不況でなく低成長であれば処方箋は変わる。成長企業に働き手を移す労働市場改革や国際競争力の高いハイテク産業の育成など、複雑な構造改革こそ求められる。野党のように「減税」の一言で政策を語ることはできなくなる。二大政党制と異なり少数野党が乱立する日本の政治は、バラマキ的な公約合戦につながりやすい。政権を担う意志がなければ、財源も副作用も気にする必要はない。
30年の長期停滞でわかったのは、日本経済に一発逆転劇をもたらす「魔法の杖」は見当たらないことだ。レトリックではなく、息の長い地道な改革を説く責任政党はどこなのか。有権者一人一人に政治の幻惑を見破る高い読解能力が求められている。
・・・「デフレ」とか「不況」とか、政治家は言葉を何だかテキトーに使っているなあという印象。政権担当能力のない野党は、経済政策も無責任なことばかり言うだけだ。日本経済を変える「魔法の杖」はないし、地道な構造改革しかないのも分かり切った話。しかし当然ながら、構造改革は言うは易く行うのは難し。はたして今の日本に、地道な構造改革をやり切る胆力のある政治家はいるのだろうか。
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