「自由主義者」の特攻隊員
先日24日に放映されたNHK「特攻 若者たちの絶望と祈り」(映像の世紀バタフライエフェクト)の中で、昭和20年5月に戦死した特攻隊員上原良司の遺した言葉が紹介されていた。特攻隊員の中でも、おそらく上原さんはかなりの有名人ではないかと思う。知覧特攻平和会館では彼の遺書が展示され、『きけ わだつみのこえ 日本戦没学生の手記』には彼の残した「遺書」「所感」の二つの文書が収められている。遺書の他にも日記やノートなど多くの文章が遺されており、それらは『あゝ祖国よ恋人よ』(信濃毎日新聞社発行)に纏められている。上原さんの文章の中から、一部を引用してみる。
「私は明確にいえば自由主義に憧れていました。日本が真に永久に続くためには自由主義が必要であると思ったからです。これは馬鹿な事に見えるかも知れません。それは現在日本が全体主義的な気分に包まれているからです。しかし、真に大きな眼を開き、人間の本性を考えた時、自由主義こそ合理的になる主義だと思います。」(昭和19年前半に書かれたと見られる「遺書」)
「自由主義の勝利、それは当然すぎるほど当然であろう。自分は自由の力を信じている。最後に勝利を得るものは自由である。」「自由は人間性なるが故に、自由主義国家群の勝利は明白である。日本は思想的に既に敗れているのだ。」(昭和19年のメモ)
「悠久の大義に生きるとか、そんなことはどうでも良い。あくまで日本を愛する。祖国のために独立自由のため闘うのだ。」(昭和20年のメモ)
「思えば長き学生時代を通じて得た、信念とも申すべき理論万能の道理から考えた場合、これはあるいは、自由主義者といわれるかも知れませんが自由の勝利は明白な事だと思います。」「真理の普遍さは今、現実によって証明されつつ過去において歴史が示したごとく未来永久に自由の偉大さを証明して行くと思われます。自己の信念の正しかった事、この事はあるいは祖国にとって恐るべき事であるかも知れませんが吾人にとっては嬉しい限りです。」「明日は自由主義者が一人この世から去って行きます。彼の後姿は淋しいですが、心中満足で一杯です。」(昭和20年5月11日出撃の前夜に書かれた「所感」)
・・・自由は人間の本性であると考えた上原さんは、「自由主義者」を自認していた。戦争も、最後には自由主義の国が勝利するのは自明であると考え、そして現実に日本の敗色は濃厚であった。自由主義の勝利という自分の信念の正しさを確信しつつ、敗北に向かう祖国を守るため、彼は特攻機上の人となり、沖縄の空に散った。戦争の時代を生きる羽目になった人々の過酷な運命と無念を思うと、ただただ哀惜の気持ちを覚えるしかない。
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