映画で戦争を学んだ世代
『生き延びるための昭和100年史』(小学館新書)は、佐藤優と片山杜秀の対談本。以下に、第5章「昭和100年の知的遺産」からメモする。
佐藤:私たちが子どもの頃は、大人は戦争を知っているのが当たり前でした。文化や娯楽にもその人たちの経験が活かされ、同時に戦争体験者の需要に応えるようにできていたと思います。私たち子ども世代も、そうした文学を読んだり映画を観たりすることから歴史を学んでいきました。
片山:私は怪獣映画が好きだったのですが、戦争映画もやはり好きで、幼稚園の頃からたびたび連れて行ってもらいましたね。幼稚園生の時に観た映画ではっきり覚えているのがイギリス映画の『空軍大戦略』(1969年)です。それに『コンバット』(1962~67年)もよく観ていました。私の世代はよく「コンバットごっこ」で遊んでいましたよ。それに1967年から始まった、東宝の「8・15シリーズ」はどれも印象深い映画ばかりで。
佐藤:最初が『日本のいちばん長い日』(1967年)。次が『連合艦隊司令長官 山本五十六』(1968年)でしたね。東宝8・15シリーズは必見ですね。第4作の『激動の昭和史 軍閥』(1970年)は東條英機を主人公として、昭和の日本が戦争に向かっていく流れを描いた作品です。現代の空気と呼応するものがあると私は思っています。
片山:アメリカでもヨーロッパでも、第二次世界大戦ものの大作は続々と撮られていきましたね。ソ連映画では『ヨーロッパの解放』(1970年)でしょうか。ちょうど映画や出版物に興味を持ち始めた頃に、戦争、とくに第二次世界大戦ものが占めている比重が大きかったので、理解している、していないは別として、なんとなくたくさん観ていたのは時代のせいもあると思います。
佐藤:それは私たちの世代の特徴かもしれませんね。
・・・片山氏には、ゴジラ映画の作曲家、伊福部昭の評伝『大楽必易』の著作もあり、怪獣映画好きもここまでくると尊敬モノである。それはともかく、佐藤氏1960年生まれ、片山氏1963年生まれの語るところには、1959年生まれの小生も同感、共感するしかない。小学生の時に怪獣映画と戦争映画、もう少し大きくなると『ゴッドファーザー』などギャング映画を観ていたという世代だ(苦笑)。
独ソ戦を描いた『ヨーロッパの解放』は、確かに印象深い。特に「クルスク大戦車戦」のパートには、見た目がかなり本物に近いドイツのタイガー戦車が出てくるので、戦車のプラモデル作りに熱中していた当時の少年は興奮した覚えあり。アメリカ映画の『バルジ大作戦』(1965年)も大好きで、鉄十字のマークを付けた米国製M47戦車がドイツのキングタイガー戦車として大量に登場する、まさに「戦車映画」。ドイツ戦車隊長役のロバート・ショーもカッコいい!・・・という感じで、かつての戦車プラモ少年にとって、クルスクとアルデンヌはまさに二大聖地だ。
太平洋戦争の映画では、やはり日米開戦を描いた『トラ・トラ・トラ!』(1970年)が、今でも最高傑作だと思う。自分が観た時は小学校高学年だったはずだが、後半のハワイ空襲場面から目が離せなかったのはもちろん、前半の外交場面も飽きずに見ることができた。当時の「少年マガジン」(大伴昌司の大図解)で、戦艦長門の洋上部分の実物大セットが地上(砂浜)に作られていたのを見て、なるほど映像のマジックとはこういうことかと感心した。それにしても、自国がコテンパンにやられる戦争映画を大金を投じて作るアメリカという国は凄いなと、つくづく思った。
映画やプラモやマンガが戦争を知る入口となり、さらに戦争関連の本を読んだ人、特にサンケイの「第二次世界大戦ブックス」シリーズを手に取った人も多いのではないだろうか。自分も、多分初めて読んだ大人向けの本が「第二次世界大戦ブックス」だった。
何だかんだで我々の世代は子供の頃、文化的な製作物により戦争の知識やイメージを与えられて、自然に吸収していったように思う。時代や環境が違うとはいえ、今の子供たちは、どうやって戦争を学ぶのか気になるところだ。
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