日米同盟の「顕教」と「密教」
『生き延びるための昭和100年史』(小学館新書)は、佐藤優と片山杜秀の対談本。佐藤優の「まえがき」からメモする。
仏教の教学には顕教と密教という二つの教えがある。顕教とは文字になって誰でも知ることができる教えだ。対して、密教は秘密にされていて、秘伝として口頭で伝えられ、特定の専門家集団で共有されている教えだ。日米同盟にも顕教と密教がある。
日米同盟の顕教とは以下の内容だ。太平洋戦争に敗北した後、日本は国家体制を根本的に転換した。天皇は統治権の総攬者から国家と国民統合の象徴になった。国民主権、民主主義、人権尊重が日本国家の基本的価値だ。これらは文明世界の基本的価値観と見なされているが、実際はアングロ・アメリカン(英米)的な価値観に過ぎない。
日米同盟の密教とは以下の内容だ。アングロ・サクソン諸国は、戦争に強く、敵と見なした国家や民族に対しては、どんなに残酷なことも平気で行う。いくつか例をあげる。1945年3月10日の大空襲で、米軍は東京の下町に焼夷弾を投下した。死者のほとんどが非武装の民間人だった。国際法違反の無差別爆撃で、一晩で10万人を殺害した例は、極めて稀だ。米軍は1945年8月6日に広島、同9日に長崎に原子爆弾を投下した。国際法違反の無差別爆撃で多くの非武装の民間人が殺害された。日本人を同じ人間と思っていたならばできない蛮行だ。アメリカは未だ謝罪はもとより原爆の投下責任すら認めていない。
太平洋戦争に敗北し、焦土となった経験から学ぶのは、アングロ・アメリカン(とりわけアメリカ)とは、絶対に戦争をしてはいけないということだ。そのためにもっとも効果的なのは、ジュニアパートナーとしてアメリカと同盟関係を構築することだ。それを単純に対米従属と非難することはできない。アメリカのジュニアパートナーとなることが国家と国民の生き残りにとって最も現実的な選択だからだ。
日本外交の目的は日本国家と日本国民の生き残りだ。観念論もしくは理想主義的日米同盟観(価値観の一致)からリアリズムに基づく日米同盟観(新帝国主義的国際環境での日本国家と日本国民の生き残り)に視座を転換する必要がある。トランプ大統領時代のいまこそ日米同盟は日本の生命線であり、日本外交の公理系を形成しているという現実を忘れてはならない。
・・・アメリカは途方もなく恐ろしい国だ。「属国」と言われようとも結局、日本外交は日米同盟堅持というリアリズムでいくしかない。
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