「同意なき買収」の呪い
ニデックは買収を諦めたが、牧野フライスがこれでひと安心、というわけでもないようだ。昨日1日付日経新聞記事(同意なき買収 真の怖さ)からメモする。
ニデックに同意なき買収を仕掛けられた牧野フライス製作所が、ホワイトナイト(友好的買収者)とされるアジア系投資ファンドのMBKパートナーズに買収される方向で最終交渉に入った。だが、きっかけを作ったニデックは既に撤退済み。「牧野フライスはファンドとの交渉も打ち切ればよいのではないか」と素朴な考えが浮かぶだろう。ところが、資本市場ではその論法が許されない。
ニデックは1株あたり1万1000円でTOBを始めた。これにより牧野フライスはM&A(合併・買収)市場において「値札」がついた。わかりやすく例えると、ニデックは牧野フライスという会社を、1万1000円という値札をつけて店頭に強制的に並べてしまったのだ。牧野フライスもホワイトナイトを募った。自分で自分を売り物であると宣言したに等しい。かくして牧野フライスという会社そのものが商品化した。
こうした状態をM&A業界では「FOR SALE」と言う。一度、「売り物」になった企業は、独立路線を維持するのが極めて難しい。独立路線を株主に納得してもらうには、買収者が出したプレミアム付きの値段以上の株価を実現させなければいけないためだ。
同意なき買収への対応は基本的に3つある。(1)受け入れる(2)ホワイトナイトを探し徹底抗戦する(3)自助努力で買収者の提案より株価を上げる、だ。(1)を選んだのがニデックの傘下に入った工作機械のTAKISAWAだ。(2)に失敗し、(3)に取り組むのが、カナダ企業から買収提案を受けているセブン&アイ・ホールディングスだろう。自助努力で株価を上げるのがどれだけ困難かはセブン&アイを見てもよくわかる。結果として、多くがホワイトナイト探しを選ぶ。
だが、そのホワイトナイト探しは前述のように対象会社を「FOR SALE」の状態に追い込む。最初の買収者を撃退できても、結局は独立維持が難しい状態に追い込まれることが多いのだ。同意なき買収は一度発動されると、狙われた企業はM&A市場で「売り物」として扱われ続ける。同意なき買収の真の怖さはここにある。
・・・ニデックがTOBで買うとしたプレミアム付きの株価1万1000円を、これからも牧野フライスは長く維持するという課題を背負ったことになる。同意なき買収の呪いがかけられた、という感じ。
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