「振り飛車」を応援しよう
本日付日経新聞記事「AIにあらがう将棋棋士」から、以下にメモする。
将棋トップ棋士の間で、人工知能(AI)が不利と評価する戦法「振り飛車」が見直されている。AI全盛の世で、人間の創造力を探る好例といえそうだ。
居飛車と振り飛車の棋士の割合は約3対1。もともと振り飛車党は少数派だが、近年は上位ほどその割合が減る傾向にあった。飛車を動かす場所は主に3通りあり、いずれも将棋AIはマイナスの評価を下す。次々とタイトルを獲得していった藤井聡太七冠が居飛車しか指さないことも大きい。
だがこの1、2年で風向きが変わった。振り飛車復活の流れを作ったのは佐藤天彦九段だ。23年秋、振り飛車に転向。当初は苦戦したが、24年度はA級でトップを走った。
振り飛車再評価の背景には、AI研究合戦による居飛車同士の戦いの行き詰まり感がある。AIが示す有利な戦い方を暗記し、再現できるかが勝敗に直結する。佐藤九段は「AI研究は若さ、時間との親和性が高い」とも指摘。体力と時間を要する研究勝負は若手に有利な面がある。他方、振り飛車を指すようになったトップ棋士は30代半ばが目立つ。「30代には人間同士の中で得てきた戦い方の知恵のようなものがある」と佐藤九段。
タイトル戦では、23年度に振り飛車党の菅井竜也八段が藤井七冠に2度挑戦。藤井七冠は「振り飛車党でも佐藤九段と菅井八段では棋風が全く違う。対局者の個性が出やすい」と話す。
「最善」や「真理」の追究は将棋の醍醐味だが、試合の中で生まれるひらめきこそが楽しさにつながる。それはどんな分野にも通じる喜びだろう。AI研究の先端を行く将棋界での静かな変革は、人間とAIの関係を見つめ直す示唆に富む。
・・・大昔のプロ将棋は、相矢倉と振り飛車が二大戦法で、角換わりや相掛かり中心の現在とは、まさに今昔の感。それでもプロ棋士はともかく、アマでは振り飛車は今も人気戦法だ。相居飛車の戦いは定跡研究が高度に進み、一手一手の意味が難解なものになっているのに対して、振り飛車居飛車の対抗型は、攻めと守りの狙いが比較的分かりやすい。その辺が、アマに好まれるのだと思う。
振り飛車戦法は、実質的に美濃囲い戦法だろう(穴熊もありますが)。とにかく飛車をどかして、飛車のいた位置に王様を移して、銀を一手動かせば堅陣が出来上がる。飛車を動かす一手がAIには評価されないとしても、これはこれで合理的な戦法だと思う。指す人の個性が出やすいということは、つまり見ていて面白いということでもあるし、振り飛車党の棋士がタイトル戦にもっと登場することを望みます。
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