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2025年5月30日 (金)

「ウェストファリア神話」

ヨーロッパの歴史における最大最後の宗教戦争である三十年戦争(1618~1648)を終結させたウェストファリア条約。これにより主権国家体制が確立した、というのが教科書的な説明。しかし最近の研究では、それは「神話」であり、事実はそんな単純なものではない、ようである。『昭和100年』(古市憲寿・著、講談社)からメモする。

社会学や歴史学では、時代を「古代」「中世」「近代」と三つに分けることが多い。この区分が生まれたヨーロッパでは、文明の起源である素晴らしい古代、文明が停滞した暗黒時代としての中世、そして古代を受け継いだ輝かしい時代を近代と考えた。

その「近代」を説明する際に、必ず持ち出される出来事の一つが、1648年のウェストファリア講和条約。終わりのない宗教戦争に終止符を打ち、国家が特定の領土を持ち、その領土内の国民が国家の主権を構成する国民国家という仕組みの起点となったとされる。

(しかし近年の研究動向によれば、)「近代主権国家」「近代国民国家」や「近代国際法」の原点をウェストファリア条約に求めてしまうのは、だいぶ怪しい話であるらしいのだ。実際には、ウェストファリア条約は現状追認的な性格を持ち、かつ継続性があるものでもなかった。近年の研究が主張するように、「近代国家」の成立期は地域ごとに違うのだから、一つの条約に「近代」の始まりを見いだす必要はない。

近年、ヨーロッパ近世史を語る際に「複合国家」という概念がよく用いられる。単一の主権国家ではなく、複数の領域や国々が一つの君主のもとで結ばれた政治形態を指す。いわば「ミニ帝国」とも言えそうだ。要は中世の終わりと共に、一気に中央集権的な近代国家が出現したわけではない、ということなのだろう。

・・・自分も、ウェストファリア条約の話を聞いて、ルターの宗教改革(1517)から130年後に主権国家体制確立という、何かマジックでも見てるような展開に歴史のダイナミズムを感じたりしていたのだが、やっぱり130年じゃ短いというか早いというか、ちょっと無理かな(苦笑)。いきなり多数の国が中央集権的な主権国家になったわけではないし、さらに時間をかけて、国民国家を形成していったというのが現実的なところなのだろうなあ。その国民国家も現在、どうするどうなるみたいな話なので、国民国家の前段階である複合国家が注目されている、という感じがする。

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