「所有と経営の分離」
岩波新書の新刊『コーポレートガバナンス入門』(太田洋・著)は、コーポレートガバナンスの理論や歴史について、網羅的に叙述を展開する内容の濃い入門書。その最後の最後に、改めて「コーポレートガバナンスとは結局何なのか」との問いかけが置かれている。確かに、そう言いたくなる感じもあるので、ちょっと苦笑。で、同書の結論的には、それは不断に変化し続けるもの、である。以下に、同書第8章から抜き書きする。
「コーポレートガバナンスの本質は、経営者に対する『規律づけ』という点において不変であるものの、その目的、そしてそれを実現するための具体的な仕組みは、不断に変化し続けるものである」。「『理想のコーポレートガバナンス』像は、経済や社会のあり方や、その中における株式会社の位置付けの変遷とともに、常にアップデートされ続けるもの」であり、我々は「『理想のコーポレートガバナンス』像を目指して、試行錯誤を繰り返しながら、常に走り続けることを運命づけられているのだろう」。
・・・まあ何事によらず、結局何なの?という感じになったら、いったん原点に戻るのが良いと思う。コーポレートガバナンスの場合は、「所有と経営の分離」という考え方。以下に、同書第1章からメモする。
コーポレートガバナンスに関する考え方(すなわち、コーポレートガバナンスとは、会社経営者に対して「規律づけ」をするための制度的な担保及び具体的な制度運用の総体を意味するという考え方)を、「所有と経営の分離」という概念を用いて明快に基礎づけたのが、米国の法律家バーリと経済学者ミーンズである。(『現代株式会社と私有財産』、1932年)
バーリとミーンズの指摘――多数の株主を擁し、所有と経営が分離した近代的な大企業では、チェック・アンド・バランスのメカニズムが有効に機能しなくなり、結果、経営者が、株主の利益から離れて、自分自身の利益を追求するようになっている、との指摘――は、極めて先駆的な考察であった。「経営者をいかに規律づけるか」という「コーポレートガバナンス」の考え方は、事実上、このバーリとミーンズによる「所有と経営の分離」という指摘からスタートしているといっても過言ではないだろう。
・・・コーポレートガバナンスとは何なのかよく分からなくなったら、とりあえず「所有と経営の分離」に立ち帰り、株主の負託を受ける経営者は何をするべきか、株主は経営者に何をさせるべきか、あるいは何をさせないべきか、考えてみるのが良いのではないか。
| 固定リンク | 0
