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2025年3月23日 (日)

人生という不完全情報ゲーム

咒の脳科学』(講談社+α新書)は、脳科学者中野信子の新刊。咒は「まじない」と読むとのこと。以下に序章からメモする。

私たちは、物理世界に生きてはいるが、それ以上に、人間関係の中、人間の認知の形成する社会の中に生きており、その認知は、自他の言語や行動によって鋭敏に影響を受け、未来が変わってしまうということが実は頻繁に起きているのだとしたら。現在の自分の言動をより子細に分析し、よりよくコントロールできた者が勝者になるとは言えまいか。

この世に生を受けるということは、不完全情報ゲームの中に強制的に参加させられるということだ。

不完全情報ゲームは、一部の情報がプレイヤーに隠されているか、ゲームの状態が完全には見えないという特徴がある。隠された情報を確率論的に推測する必要があり、これが勝敗に影響を与える――要するに、「運」が実力よりも勝敗を左右する大きな要素として扱われるというのが、この不完全情報ゲームの面白いところなのだ。

不完全情報ゲームでは、「相手がどう考えるか」を読む心理戦が重要になる。もっと言えば「相手を思うさまに動かす能力」「相手をこちらの意図どおりに誘導できる技術」があれば、このゲームには高確率で勝つことができる。

近年、脳科学ブームが続いているのは、脳科学がこうした技術の源泉になり得る科学的な根拠を与えるものだと一般に考えられているからだろう。

・・・人は、自分自身を動かすため他人を動かすため、時には、強い願望を込めているけど大した根拠のない「おまじない」のような言葉すら発してしまう。もしかしたら脳科学はその根拠になるのかもしれないが、しかしそれでも、自分の言動を強くコントロールできるとか、多くの他人を思い通り動かせると思ったら、過大な期待でしょう。それにしても、他人を動かすというのは、最も広い意味で「政治」だな。要するに人間は社会的動物だってことだが。

この本の中で、中野先生がセクハラされた相手に対して怒りを感じて、死ねと思ったら間もなく死んだ、という経験も記されている。確かに当事者としてはちょっとショッキングな出来事だろうから、自分の思いが何かしら相手に影響したのかと感じるのも無理はないのかもしれないが、読者からすると、まあそういうこともあるかもね、くらいの感じではあるなあ。

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