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2024年11月 8日 (金)

「失われた○年」は続く?

日本経済の低迷は「失われた30年」で終わった、と見るのは誤りだと言うのは、エコノミストの門間一夫氏。本日付日経新聞コラム記事「エコノミスト360°視点」(「失われた40年」にしないために)からメモする。

過去30年を「失われた」と形容するかどうかは定義次第だが、低成長であったことを失われたというのであれば、状況は改善していない。コロナ禍前の2019年から24年前半までの4年半で、国内総生産(GDP)の実質成長率は年率わずか0.1%にすぎない。

一方、株価は10年代初頭の約5倍にまで上がっている。株価の低迷は「失われた20年」の段階でとっくに終わっており、10年以上も明確な上昇トレンドにある。株価は代表的な日本企業の稼ぐ力を表すものであり、それらの企業は近年、株主目線の改革を着実に進めてきた。日本経済は少子高齢化、地方の疲弊、消費の低迷に悩み続けているが、「日本企業」はそれらから影響を受ける事業の効率化を図りつつ、グローバルには拡張戦略をとって利益成長を実現してきた。株価は今後も中長期的に上昇し続けるだろう。

日本経済には2つの道がある。ひとつは、株価だけが上昇し続けて日本経済はこのまま「失われた40年」「失われた50年」になる道である。もうひとつは、株価の上昇とともに実質賃金がしっかり上がるようになり、国民生活も豊かになっていく道である。

大前提として株主重視の流れは止まらないし、資産運用立国を標榜する以上、株価が上がり続ける国でなければならない。論点は、株主重視の企業改革を賃金の上昇や中小企業の繁栄にも波及させるには、何が必要なのかである。

「国内拠点の充実こそ企業価値向上の鍵であり、そのためなら賃金も上げるしサプライヤーにも報いたい」と企業が思えるようなビジネス環境を、国内につくることが国の成長戦略である。新分野への挑戦機会が豊富で、エネルギー供給に不安がなく、世界一の教育があり、海外からも優秀な人が集まる――そういう日本の「創生」を、政府には期待したい。

・・・日経平均採用の225社は株主重視のグローバル企業となり、日経平均株価も過去最高値を更新。その一方で、中小企業は置いてきぼりとなり、日本経済全体も決して好調とは言えない。株価が上昇し続けるのであれば、中小企業の従業員は資産運用に励めば良いのかも知れないが、やはり賃金が上がって消費も増えるというのが基本の姿だろう。この大企業と中小企業の業況の格差というか、大企業業績とマクロ経済の乖離というか、これが解消に向かうような政策を実行しないと、日本経済の「失われた時代」が延々と続くことにもなりかねない。

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