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2024年4月 8日 (月)

過去30年は企業変革期だった(のか)

シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』の著者、経営学者ウリケ・シェーデは、日本企業の過去30年間は「失われた時代」というよりも、抜本的な企業変革の期間に見える、と言う。「日経ビジネス」電子版4月5日付記事(「失われた30年」は企業変革の期間)から以下にメモする。

1950年代から80年代まで、日本は30年かけて製造技術の面で欧米に追いついた。そして今、最先端技術で競争するために、飛躍的イノベーションの新体制に向けてピボット(方向転換)している。そのために必要なのは新しい戦略、イノベーションの手順、企業カルチャーの変革であり、新しいコーポレート・アイデンティティーを創出することだ。

この変革は20年以上前から始まり、その成果が今、目に見える形で表れてきている。日本企業は賢く機敏かつユニークなプレーヤーとして再浮上し、それに応じてグローバル・イメージも変わりつつある。

この変革スピードの遅さは、日本のリーダーの意図的な選択によるものであり、そこには日本社会の好みが反映されている。あえてゆっくりと変わる利点は、社会に与える大きな打撃がより軽減されることにある。他方、この安定に対して日本が払ってきた代償は、低成長が長期化することだ。しかし今、日本は比較的平等な社会で、失業者も少ない、新しいプレーヤーとして台頭している。遅いことは停滞ではない。それは相違点にすぎず、日本の強みになり得るのだ。

日本経済の現状は「20対80の法則」(パレートの法則)に似ている。これは、少数のインプットでアウトプットの大部分が説明されるという法則だ。例えば、日々の営みを見ると、20%の活動が生産性の80%を左右している。通信、航空、ホテルなど多くの業界では、20%の顧客が売り上げの約80%を占める。現在の日本経済も20対80の法則が働いているような状態にあり、少数企業が日本の好業績の大きな割合を占めていると見られる。日本が前進するためには、先頭ランナーをよく知り、学ぶことが役立つだろう。願わくは、経済全体で好調企業と不調企業の割合を40対60くらいに素早く移行させることができるとよい。

・・・株価が最高値を更新すれば、「失われた30年」も企業変革期だったと見えてくる。というか、現在の立ち位置が変われば過去の意味付けも変わってくる、ということはある。とはいえ変革期としても、低成長の30年は長かったと感じる。

それはともかく、日本企業の20%が好業績で、日本経済を引っ張っているというのは、その通りなんだろう。日経平均株価が最高値を更新する、つまり指数採用の225社の業績が好調としても、日本経済が全体としてそんなに景気が良いとも思えないのは、20対80の法則で理解しておけばよいのだろう。

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