清原達郎氏の『わが投資術』
20年前の高額納税者トップ、長者番付1位の清原達郎氏。推定年収100億円サラリーマンとして、週刊誌ネタにもなっていた覚えがある。その「伝説の人」が本を出したというから驚いた。自身の投資ファンドの運用終了、引退を機に書いたものという。その著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社発行)から、氏が得意としていた中小型割安株の投資アイデアをメモする。
見るべきは、会社が赤字になろうがなるまいが、同じ値段で売れる資産がどれほどあるか、ということです。それに会社が持っている現金を足して、全負債を差っ引いた数字がキーなのです。それがネットキャッシュです。
ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ/時価総額
ネットキャッシュ比率が1というのは、「会社がただで買えるほど割安」ということです。数字が大きいほど割安、ということになります。ネットキャッシュ比率が1なら、お金を借りて時価でその会社の株を全部買うと、借りたお金は、会社にある現金や換金可能な流動資産を売って返済できます。さらにネットキャッシュ比率が1を超えている株式は、「ただで会社をもらった上に現金までもらえる」ということです。
「もし割安株を買って儲からないなら、そもそも割安の定義が間違っていた」ということです。逆に(正確には対偶命題で)言うと、「①割安株に投資すると儲かります」。もちろん、すぐ儲かるかどうかはわかりませんが。
低PERの株は将来の業績予想をするとき、別に増益になる必要がないのです。業績横ばいでも、株価が上がる可能性は十分あります。なぜなら、過大な固定資産投資をしなければ、ネットキャッシュが毎年大きく積み上がってくるからです。ある意味、ネットキャッシュ比率が1以上というのは「矛盾」です。だから、正しい「割安」の定義は、「②割安な株の株価が上がらず、割安に放置されたままだと、時間の経過とともに矛盾がさらに大きくなる」ということかもしれません。そして、その矛盾は無限に大きくなることはなく、どこかで解消されていくということなら、①と②の命題は一致します。
我々は、PER、ネットキャッシュ比率で割安である順に銘柄が出てくるよう、スクリーニングを行います。すると、基本ダメな会社順に並んで出てきます。でも、その中に「この会社ってそんなにダメなの? ちょっと調べてみようか」という会社が、何社か出てくるのです。それを一銘柄ずつ会社訪問をし、丹念に調べていこうというのが、我々のやり方でした。
成長の源泉は、オーナー社長のガッツと能力ですから。社長に会って話を聞くのが、一番手っ取り早いですよ。
・・・キャッシュリッチかつ利益も出し続けている企業の株を保有して、企業評価の修正、割安な株価の水準訂正を待つ、というイメージだろうか(ちょっと根気が要るかも)。清原氏が強調するのは、株式投資の才能というものはない、自分の失敗から学ぶしかない、ということ。運用で財を成した人の言葉を肝に銘じよう。
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