株式会社の機能、その再確認
日経新聞昨日7日付社説(株式会社の機能を十分に引き出せ)からメモする。
資本主義の歩みと不可分の関係にあるのが「株式会社」だ。株式で調達した資金を投資に回し、生まれた富を社会に幅広く還元する。そうした株式会社の意義を見つめ直し、機能を十分に引き出すことが、日本の資本主義を磨くことにつながる。
会社の存在意義に関しては、大きく分けて2つの主張がある。一つは、会社は資本を提供するシェアホルダー(株主)のためにあるとする考え。もう一つが、消費者や取引先、従業員など企業のステークホルダー(利害関係者)を等しく大切にしなければならないという見解だ。
懸念されるのは、株主利益を最重視する考えの見直しが、日本では株主還元を減らし従業員などに手厚く分配せよとの短絡的な主張に、結びつきやすい点だ。
現下の日本に必要なのは、始まったばかりの企業統治改革を軌道に乗せ、資本市場の規律を経営にきかせることだ。この点は強く念を押しておきたい。
株主への分配という観点で、日米企業を比べてみる。19年の利益に占める配当・自社株買いをあわせた総還元額の比率は、米国大企業の多くが80%を超え、100%超の例も決して珍しくない。これに対して日本企業の約半数は、総還元額が20~40%にとどまる。
しかも、株主還元に積極的な米企業は、従業員や投資などにも資金を振り向けている。生命保険協会の分析では、1997年から18年までの間に、米企業の人件費と設備投資はともに2.3倍に増えた。同期間の日本企業は人件費がほとんど増えず、投資も1.4倍にとどまっている。
結果として、日本企業の手元には、多額の資金が未使用のまま積み上がる。日銀によれば、昨年9月末に金融機関以外の企業が持つ現金・預金は321兆円と、97年末から1.9倍に増えた。
日本企業は富の生成・分配という株式会社の機能が衰え、存在意義も揺らいでいる。この状態から抜け出すことが必要だ。
まずは株主の声を聞き、採算の低い事業から高い分野へと、経営資源を移すべきだ。収益性の向上が賃上げや社会貢献など、あらゆる分配戦略の起点となることはいうまでもない。
・・・株主にせよ従業員にせよ設備投資にせよ、とにかくまず会社に金を使ってもらわないと、資本主義経済はどうにも回らない。リスク回避の傾向が強い印象のある日本企業に、投資など金を使ってもらうにはどうすればいいのか。やっぱり「アニマルスピリット」だよ、という話になるのかな。
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