昭和が「エモい」らしい
日経新聞電子版の記事「若者なぜ昭和レトロ」第4回(友達親子で価値観共有 手軽に楽しむ「エモい」)からメモする。
最近の親子はすごく仲がいい。親が好きだった音楽を好んで聴き、親が若い頃着ていた服のお下がりを「エモい(=エモーショナルな)」と喜んで着る。若者の間でブームの昭和レトロ。研究テーマの一つとする明治大学の藤田結子専任教授(社会学)は「『友達親子』と呼ばれるフラットな親子関係が色濃く影響している」と指摘する。
なぜ今の若者は親と仲がいいのか。藤田氏は「もっと前の世代は、親と子の育った社会環境の違いが大きすぎた。でも今の若者と親の価値観はあまり変わらず、育った環境もそう大きくは違わない」とみる。
例えば団塊世代と団塊ジュニア。団塊世代が若いころは日本で消費文化が根付いていなかった。しかし今の若者の親は40~50代が中心。80年代ごろの消費文化が花開いた時代に思春期を送った世代のため、今の若者と育った環境も価値観もそれほど大きくは違わない。若者にとって親は「共感できる相手」というわけだ。
昭和レトロに厳密な定義はないが、これまでは60年代くらいを中心にせいぜい80年代までのイメージだった。しかし今20歳前後の若者が「昭和レトロと思うもの」には、昭和から平成に移り変わった後の90年代も含まれている。
その理由を藤田氏は「メディア環境、中でもインターネット普及の影響が大きい」と分析する。今の若者にとって「昭和」はネットを通じて触れられるもの。特に80年代以降の写真や映像などといったコンテンツはネット上に大量に流通しており、そうしたものに若者が出合いやすい環境がある。
親と子が隔たりなく話せるようになり、親から聞いたことに「それは何だろう」と思えば、すぐにネットで調べられる環境にある今の若者たち。適度な古さがあり同時に比較的近くて「つながることができる」時代、それが彼らにとっての昭和。珍しさと懐かしさも感じられるものに触れることが「エモい」につながる。
親からの話を通して今の若者が抱く昭和のイメージはとても肯定的だ。藤田氏はそこに「今よりも景気が良かったし、人も温かかった」という仮想のノスタルジーがあるとみる。若者にとって昭和は「ゆっくりしていて良かった時代」と映るようだ。
・・・昭和の枕詞は「激動の」、つまり戦前、戦後も含めて昭和、というのが昭和34年生まれの自分の感覚。実際、昭和天皇崩御の時は、テレビ放送は「激動の昭和」回顧番組一色になった。ところが今の「昭和レトロ」の対象は戦後のみ、おそらくは昭和30年代の高度経済成長期を起点として90年代の平成初期まで延長された時代が、「エモい昭和」として認知されているようだ。「激動の昭和」から「エモい昭和」へ、まさに時代を捉える感覚は変わったということだな。
また、親子間の時代環境や価値観のギャップが小さくなっている、というのも肯ける感じ。自分が子供の頃、明治・大正・昭和と並べると随分違う時代に感じたものだが、今まで自分が生きてきた昭和(戦後)・平成・令和と並べると、大体地続きの時代と思えるし。でも今後、令和ではデジタル化がさらに急速に進むだろうから、自分は付いていけなくなることだろう。(苦笑)
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