「不機嫌な時代」は終わらない
『不機嫌な時代―JAPAN2020』(1997)などの著作があるピーター・タスカ。長年、日本市場をウオッチしてきたストラテジストは、この先の日本をどうみているか。日経新聞電子版1/22発信のインタビュー記事からメモする。
景気低迷で閉塞感に満ちた日本の90年代を「不機嫌な時代」と表現しました。現在はどうでしょう。
「不機嫌な時代は終わるどころか、世界的な流れになってしまった。90年代は日本だけの問題だったが、いまや先進国経済は総じて長期停滞に陥り、多くの国で政治の内向き傾向が強まっている」
「大きく3つの原因がある。まずは人口成長の減速。次に将来への不安だ。IT(情報技術)や人工知能(AI)の普及で、いまやホワイトカラーの労働者も職が奪われる懸念を抱いている。3つ目が若い世代の価値観。モノの所有ではなく共有が一般的になり、消費の伸びが抑えられている。不機嫌な時代から抜け出るのは容易ではないだろう」
2045年にかけて日本が直面するリスクは。
「『失われた20年』に逆戻りする可能性が否定できない。アジアや世界で経済・金融危機が起きれば、超円高が進んで再びデフレに陥る恐れがある。引き金を引く可能性が相対的に高いのが中国だ。デレバレッジ(過剰債務の圧縮)が一気に進んで、景気が腰折れするリスクがある。そうなれば影響は世界に広がる」
日本の強みを生かし、変革を促す原動力は何でしょう。
「労働力不足への対応が成長へのドライバーとなる。労働者の効率的な活用が不可欠になるし、自動化に向けた設備投資も高水準で続くだろう」
・・・『不機嫌な時代』の刊行された1997年は、山一証券や北海道拓殖銀行が破綻するなど、日本の金融危機のピークの時期に当たる。それだけに当時は日本が混乱から衰退に向かう見通しにリアリティがあり、2020年のイメージは「灰色」としか思えなかった。そして今、あの頃の未来である2020年にぼくらは立っている。オリンピックへの期待もあり、思ったほど状況は悪くはないみたいだ。とはいえ、人口が減少する日本の大きなトレンドは衰退方向であるという印象も変わらない。もはやトレンドを大きく転換させるのは難しいとしても、日本は出来る限りの手を尽くして、国民の生活水準や利便性を一定以上のレベルに維持していくべきであり、それはまた可能だと考える。
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