存在感高まる「中世都市」
29日付日経新聞の「私見卓見」コラム(グローバル化で復権する中世都市)からメモする。筆者は今年、『ポピュリズムとは何か』(中公新書)が話題になった、水島治郎・千葉大学教授。
ルターが始めた宗教改革はカトリック教会という普遍的な権威を失墜させ、それぞれの領土の中で国家が絶対的な権限を独占する主権国家が主役を張る近代への道を開いた。
2017年は国民国家の礎を築いた宗教改革から500年の節目だったが、逆に国民国家モデルの揺らぎが目に付いた。このモデルの本家といえる欧州では、スペイン・カタルーニャ州の分離独立問題をはじめ、地方による自立の動きが活発だ。10月にはイタリアの北部2州で自治権拡大を求める住民投票が行われ、スコットランドでも独立問題が再燃している。偶然の一致ではない。
注目すべきはいずれも中世以来の有力都市が中心になっている点だ。伊ロンバルディア州はミラノ、ベネト州はベネチアを抱える。近年、分権派が躍進するベルギー北部フランドルも、アントワープなどの自立した都市が欧州広域の経済圏を掌握して発展した。
中世の都市復活の背景にあるのはグローバル化だ。国家が独占管理してきたヒト、モノ、カネが国家の枠を超えて動き始め、さらにインターネットの登場で情報も国境を越えるようになった。国家の枠が緩むことで、押さえこまれてきた都市のアイデンティティーが再び頭をもたげてきたとみるべきだろう。
EUは地域や都市を直接支援するなど、地域分権を推進してきた。地域と超国家体が国家をバイパスして結び付く姿は、教会や皇帝といった普遍的権威が自治都市と併存した中世と重なり、「新しい中世」ともいえる。
・・・コラムは、過去500年の国民国家モデルに捕われることなく、現代社会の変動に向き合う姿勢の大切さを示唆しているが、ルターの宗教改革開始から、ウェストファリア条約締結による主権国家体制確立まで130年間。現在が歴史の転換期であるとしても、新しい社会モデル――「新しい中世」の他にも、ポストモダンやポスト資本主義など呼び名は様々だが――の姿が見えるまでは、まだ相当時間がかかりそうだ。
ところで「中世都市」復権と、ポピュリズム台頭はどう絡むのかと考えてみると、グローバル化に適合する「中世都市」含む大都市VSグローバル化に抵抗する地方という図式になり、ポピュリズム(疑似ナショナリズム)は後者から強く現れているという感じかな。
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