エゴン・シーレの映画
映画「エゴン・シーレ 死と乙女」を観た。20世紀初頭のウィーンを舞台に、28歳で夭折した天才画家の生涯を描く作品。
その昔、「エゴン・シーレ」という映画を観たことがある。1983年公開だから34年前か。大昔だな(苦笑)。もう内容なんか殆ど覚えていないけど、世紀末的退廃ムードの強い映画だったような。シーレを演じた男優(マチュー・カリエール)もちょっとニヒルな感じの美青年。
それに比べると新作の主演俳優ノア・サーベトラは爽やかさも感じられる美男子で、ちょっとディーン・フジオカ入ってるような。(苦笑)
物語はシーレと女性たちの関わりを軸に展開していく。男女関係に近い親密さを見せる妹のゲルティ、タヒチの娘で踊り子のモア、師であるクリムトのモデルだった赤毛のヴァリ、結婚相手となるエディット・ハルムス、その姉のアデーレの5人。
このうちシーレにとって最も大きな存在だったのはヴァリ。彼女をモデルにした傑作を、シーレは次々に生み出していく。飛び切りの美人とはいえないが、画家に霊感を与える女神的存在であるヴァリを、ヴァレリー・パハナーという女優さんが表情豊かにチャーミングに演じていて、画家との愛の生活、そして破局に至るドラマが心を打つ。
第一次世界大戦の戦火がヨーロッパに広がる中、若き才能ある画家として注目されつつあったシーレはヴァリと別れ、中産階級の娘であるエディットと結婚する。ヴァリは従軍看護婦となり、1917年12月戦地で病死する。その知らせを受けたシーレは、完成させた大作の題名を「男と乙女」から「死と乙女」に変更する。ヴァリへの追悼の気持ちの現れだったのだろう。
1918年10月、大流行したスペイン風邪にかかりシーレは死去。その3日前に妻エディットも同じ病で死亡していた。だが、一組の男女の運命的な繋がりの強さを見出すべきなのは、一年足らずの間にヴァリとシーレが相次いで世を去ったという事実だろう。
この映画を観て感じたのは、芸術至上主義を信じる芸術家がまさにリアルに生きていた、そういう時代がかつてあったということ。そしてエゴン・シーレは、その時代の最後に彗星のように現れて、妖しい輝きを放ちながら消えていった天才だったのだ。
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