進撃の「庵野ゴジラ」
庵野秀明の脚本・総監督による映画「シン・ゴジラ」。最初あんまり観る気がしなかった。だって「エヴァンゲリオン」の庵野だろ~。キモチワルイ出来になってるんじゃないか。実際、新ゴジラのビジュアルは自分には気持ち悪かったし。
ところが興行収入・評価共に良いという話を聞いて、いちおう見ておきますか、くらいの気持ちで先日映画館に足を運んだ。
そしたら、意外と面白かった。というか凄い映画だと思った。とにかく演出テンポが良い。そしてフルCGのゴジラ。東京に進撃して、自衛隊のヘリコプターや戦車からの攻撃をものともせずに、凄まじい破壊を続けるゴジラの姿を見ると、もう映画って、何でもCGで出来ちゃう時代なんだと思える。
これまでのゴジラ映画というと、人間の側は主人公たちの他は自衛隊と博士、みたいな感じだったと思うけど、「シン・ゴジラ」では政府関係者が大量に登場。勢い会議シーンも多くなるけど、演出テンポが良いこともあり飽きさせない。
そしてすでに多く語られていると思うけど、この映画はまさに「3.11」後のゴジラ映画だと言える。最初のゴジラ(昭29)はまさに原水爆、戦争の記憶を背負った怪獣として現われた。その30年後に復活したゴジラ(昭59)も、冷戦終盤の核戦争勃発の恐れを背景としており、核兵器と重なる大怪獣のイメージを大きく変えるものではなかった。ところが「シン・ゴジラ」がイメージさせるものは、制御不能状態の原子力発電所だ。最後のクライマックスであるゴジラ凍結作戦の場面も、福島原発事故の際の原子炉を冷やすための必死の放水作業を思い起こさせる。(最近のNHK原発事故の再現ドラマで所長を演じていた大杉漣が、この作品では総理大臣役で妙な既視感 苦笑)
「3.11」という未曽有の災害の経験の後に登場した「シン・ゴジラ」は、ゴジラの体現するものを「原爆・戦争」から「原発・災害」に転換してみせたのだ。同時に危機に立ち向かい対処しようとする人間、というか日本人の組織的な努力を描くことで、単なる怪獣映画を超えたリアリティを獲得していると思える。
「シン・ゴジラ」は公開1ヵ月で観客360万人を動員、興行収入は50億円を超えたという。この映画を見に行く理由は人それぞれだろうけど、この現象そのものが、日本人の「危機」に対する意識や感覚が、かつてよりも鋭敏になっていることを示しているのではないか。そんな感じがしてくる。
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