今日の日経新聞を開いたら、「2016年4月23日ビール純粋令500周年」との文字が目に飛び込んできた。1516年にドイツで制定された「ビール純粋令」、すなわちビールの原材料は「麦芽、ホップ、水、酵母のみ」と定めた法律を守るビールを提供しています、との某外食企業が出した全面広告でありました。
16世紀のドイツは、領邦と呼ばれる地域国家の連合体「神聖ローマ帝国」の時代。件の広告を見て、ああそういえば、と思い出したのが朝日カルチャーセンター講座(皆川卓先生)で聞いた話。以下はそのレジュメ資料から。
帝国屈指の有力な領邦君主であるバイエルン公ヴィルヘルム4世(1488~1550)は、ビールが多く造られるバイエルン公国の君主であったが、都のミュンヘンが田舎の城下町から大都市に変わっていく中、ビールに安い混ぜものがされることが原因で起こる業者と消費者のトラブルを数多く抱えていた。そこでバイエルン公は、1516年にミュンヘンをはじめバイエルン全土で、水・大麦・ホップ以外の材料をビール製造に使うことを禁止する法律を出した。
おりしも1530年にアウクスブルクで開かれた帝国議会では、一般住民の経済や生活にかかわる法律を一括して出す計画が進められていた。そこで帝国議会に出席したバイエルン公は、この法令を手本にする提案を行った。同じトラブルに悩まされていた皇帝カール5世や他の領邦君主、自由都市も納得し、新しい帝国法にこのビール純粋令(Reinheitsgebot)を盛り込んだ。
この法令は、添加物によらず自然の温度や湿度を利用して味も色も全く異なるビールを作り出す技術を生み出し、ドイツ連邦にもドイツ帝国にもドイツ連邦共和国にも引き継がれて、現在に至るまでドイツビールの質を最高水準に保っている。
・・・500年も前に作られた法律を今も頑固に守り続けているのがドイツらしいと思える一方、そういう制約があったからこそ様々な工夫が生まれたとも考えられるわけで、それもまた研究熱心というか道を究めるドイツ人気質の現われなのかと。