ノストラダムスと「オウム世代」
『村上さんのところ』(新潮社)は、読者からの質問メール473通に対する村上春樹の回答が収められた本。実に雑多なと言って良いくらいの多種多様な質問が投げかけられている中で、オウム真理教絡みの質問回答に自分の関心が向いた。
読者の「村上さんは、オウム真理教による地下鉄サリン事件の実行犯の世代(大体、現在の40代前半から50代後半)をどのような世代ととらえられますか」との質問に対して、作家は以下のように答えている。
オウム真理教の信者・元信者の人たちをインタビューしてきて、ひとつ思ったのは「ノストラダムスの予言」に影響された人がけっこう多かったということでした。その世代の人たちがいちばん感じやすい十代のころに、「ノストラダムスの予言」についての本が大ベストセラーになりました。そしてテレビなんかでも盛んに取り上げられました。1999年に世界は破滅するという例の予言です。そのおかげで「終末」という観念が、彼らの意識に強くすり込まれてしまった。
だから麻原彰晃の説く終末論(ハルマゲドン)がすんなりと抵抗なく受け入れられたのでしょう。そこにはまた「スプーン曲げ」に代表される、「超能力」に対する憧れ・信仰のようなものもありました(そこにもまたテレビの影響が見られます)。
・・・こう言われると、確かに自分も「オウム世代」の一員だなとしみじみ自覚する。五島勉の『ノストラダムスの大予言』が出たのは1973年。タイミング的には石油ショックが起きて世の中に先行き不安感も漂っていた頃で、「1999年7の月、人類滅亡」を唱えた書物は、たちまち大ベストセラーになった。自分は当時中学2年生だったが、あと25年程度で人類が滅亡すると言われて(何しろまだ14年しか生きてなかったせいもあるのだろう)、充分ありうると思ったのを覚えている。そうでなくても公害やら資源枯渇やら第三次世界大戦やら、人類滅亡のネタはいろいろ言われていたこともあるし。
同じ頃、超能力も流行っていたよなあ。UFO、超常現象、未確認生物などなど、70年代の日本テレビが主導していたオカルトの世界。これはまさに自分の十代に重なる。
最初はもろもろの切実な動機があって、人は「宗教」に関わるとは思うのだが・・・それこそ当時のギャグバラエティ番組「ゲバゲバ90分!」に出てくる「ある異常な集団に起こった普通の出来事」じゃないけれど、人間の集団、特に「教団」はヤバいところがあるなと思う。
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