アルゴリズム取引の恐怖
日経新聞本日付電子版のコラム記事「株式市場の構造変化を映す超乱高下」(豊島逸夫)からメモする。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)といえば、トレーディングフロアの騒がしさが想起される。しかし、今や取引所の心臓部はニューヨーク郊外のニュージャージーにあるデータセンターだ。ビル内にはスーパーコンピューターが整然と並ぶ。
24日、NYSEの寄り付きでダウ平均が1000ドル以上急落する現象が生じた所も、実はマンハッタンではなく、ニュージャージーだった。フロアでの売買はもはや形骸化し、ショータイム(見せ物)などと呼ばれている。
アジア・欧州と株急落が連鎖し、ニューヨーク市場のオープニングも急落確実な状況だった。そこで、100分の1秒でも早く売り注文を集中的に出そうと高速度取引トレーダーたちが動いたのだ。その結果、株価が200~300ドル急落すると、自動的に多くの「損切り」注文が実行され、相場の振れを増幅させる。売りの連鎖で1000ドル以上下げたところで、一部のアルゴリズム取引のコンピュータプログラムが、割安感から「逆張り」の買い注文を発した。そこで、相場は1000ドル近く急反発。その後も瞬間的に100ドル刻み程度の乱高下を繰り返し、前日比588ドル安で引けた。
この市場の騒乱について中国経済や米利上げなどの後講釈で説明を試みてもむなしい。
実はニューヨーク市場が寄り付く30分ほど前に、最初の異変が為替市場で生じていた。円相場がほぼ瞬間的に1ドル=120円台から116円台まで円高に振れたのだ。この現象の背景もやはり、アルゴリズム取引である。
このような効率性を追求した結果の市場の構造変化が果たして健全といえるだろうか。
米国で高速度取引規制論が生じるのも当然と思ってしまう。
先進国の株式市場も、乱高下する上海市場を「初心者集団のカジノ」などと揶揄できなくなった。
パニック売りなどといわれるが、人間の手を離れ、相場を主導するコンピューターに感情はない。自然な沈静化を待つのか、機械的な売りの連鎖を官の手で断ち切るのか。
・・・集団心理による売買も、心理とは無縁に見える機械的売買も、どっちも相場の乱高下をもたらす要因になるというのは何とも皮肉な話だな。
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