「ガバナンス相場」は本物か
日経平均株価は昨日まで12連騰の後、反落して終了。1988年2月に記録した13連騰には及ばなかったが、このところの株式相場の強さの背景の一つに「ガバナンス改革」への期待がある。関連して本日付日経新聞の記事をふたつメモする。まずマーケット総合面コラム記事「スクランブル」(ガバナンス相場の号砲)から。
海外投資家が日本株を買う理由の一つがガバナンス改革だ。株主が企業経営に注文をつけ、共同で企業価値の拡大に取り組むとの期待は高い。その進捗を測る物差しがROEだ。
株主が企業に求める収益率は「株主資本コスト」と呼ばれ、安全資産である長期国債利回りに株式のリスクプレミアムを上乗せして算出する。日本では8%程度とされ、ROEがこの水準を超えれば株主の期待に応えたことになる。
企業が資本効率を意識してROE引き上げに励めば、企業統治改革をけん引役とするガバナンス相場の息は長くなりそうだ。
・・・次に、投資情報面コラム記事「一目均衡」(統治改革の目的と手段)から。
ガバナンス改革をテコに日本企業は収益力の向上や資本の最適化を実現し、投資家にもたらす市場のリターンは増大する――。今の株高の底流にあるシナリオだ。しかし長期投資家の胸中は複雑なよう。コモンズ投信の伊井哲朗社長は「企業も市場も反応は近視眼的。議論が本質からずれている懸念がある」という。
例えば活発化する自社株買い。一時的にROEを高めても、継続的な効果は見込みにくい。引き上げたROEを維持するには、今度は本業の利益率を上げていく必要がある。
ROEの改善で重要なのは分母(自己資本)対策ではなく分子(利益)をいかに増やすか。
その分子対策も短期と長期で視点は異なる。企業価値の増大を重視する長期投資家は、会計上の利益より利益の源泉であるキャッシュフローの創出力に注目する。
ガバナンス改革は企業の持続的な成長を促すのが目的。資本効率の向上はその重要な手段だ。短期的な利益のかさ上げや内部留保のはき出しばかりでは「企業が毎月分配型投資信託のようになる」(伊井氏)。
・・・長期的な企業価値の向上という本来の目的が置き去りにされれば、「ガバナンス改革」も単なる株価の材料でしかない。「ガバナンス相場」の息が長いものになるかどうかは、結局のところ企業価値向上の実現に懸かっている。「一目均衡」コラムは、株主が納得できる成長ストーリーを企業自らが描き実行するしかない、と結んでいる。
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