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2014年5月26日 (月)

新たな「資本論」の登場

日経新聞電子版5/25付記事(ピケティ氏の陰鬱な「資本論」)からメモする。

「エコノミスト界のスター」「新たな経済学の伝道者」「現代のマルクス」「いま最も熱い思想家」。呼び名は、さまざまだ。富の集中は資本主義の必然――。そう訴える大著が、米国で一大旋風を巻き起こしているフランス人経済学者がいる。

「21世紀の資本論」。パリ経済学校のトマ・ピケティ教授が著した685ページにも及ぶハードカバー本だ。昨年のフランス語版に続き、今春、英訳を出版。米アマゾン・ドット・コムでたちまちベストセラーになり、全米の書店で売り切れが続発して増版を重ねている。

ピケティ氏の著書は、大きく3つの部分からなる。まず、ここ数世紀にわたる、主に米欧での経済格差の歴史。第2に、今後の見通し。そして、格差是正への処方箋だ。15年ほどかけて各国の税務データなどを調べ上げ、実証的に論理を組み立てたのが特徴だ。

ピケティ氏の主張の中核をなすのは、「R>G」という数式だ。資本からの収益率(R)は、経済成長率(G)よりも大きいとの指摘。株式などへの投資で得られる利益は、労働から得られる資金を上回る、と言い換えてもいい。だから、資本をもつ人々の富は雪だるま式に膨らむ一方、それ以外の人々は取り残され、経済の格差はひたすら広がる。これが資本主義の宿命である、との悲観的な見方を示す。

20世紀半ばをはさんだ一時期は、例外的に経済格差が縮まったが、これは大恐慌と2度の世界大戦、これらに伴う富裕層への課税強化や経営者の報酬抑制などが要因だという。今後も格差は広がる可能性が高く、それを防ぐには最富裕層に最大80%のきつい累進税を課すべきだと提案。課税逃れを防ぐため、これをグローバルに導入せよ、とも説く。

「リベラル派が主張してきたことを実証した」。クルーグマン教授は称賛。スティグリッツ教授や、ライシュ教授など、多くのリベラル派経済学者は、研究を熱烈に支持した。

一方、保守派の経済学者からは、批判が相次いでいる。ロゴフ教授「グローバルな富裕層課税などは施行に多くの問題があるし、政治的にも現実味がない」。フェルドシュタイン教授「格差が永遠に広がり続けるとの結論は飛躍であり、誤りだ」。

いずれにせよ、格差をめぐる論戦が、新たな局面を迎えたのは間違いない。米経済学界には、しばらくピケティ旋風が吹き荒れそうだ。

・・・かつて、労働者を搾取する資本家は「打倒」の対象だった。新しい「資本論」は、膨大な富をひたすら我がものとする超富裕層を「制裁」の対象とする。

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