「ベルエポック」は格差拡大時代
アメリカで論争を巻き起こしている『21世紀の資本論』。フランスの経済学者ピケティ氏の大著の内容を、齋藤精一郎先生が簡潔に紹介している。「日経BPnet」5/20配信の記事から以下にメモ。
ピケティの主張を一言で結論すると、現在は「第2のベルエポック」に入っているということ。ベルエポック(フランス語で良き時代という意味)とは、19世紀後半から20世紀初頭のヨーロッパ、特にパリにおいて華やかで平和な時代が開花したことを指す。
ピケティの功績の一つは、過去200年以上の期間について欧米の膨大なデータを分析し、ベルエポックにおける所得と富の集中、分配の不平等を統計的に跡付けたこと。そのうえで、現代、とくに1980年以降の欧米は「第2のベルエポック」に入っていると指摘。
ベルエポックで広がった所得と資産の格差は、第一次世界大戦から1970年代までの間に縮小。しかし、1980年以降、これら格差は再び拡大して100年前の状態に近づいている。
ピケティは資本主義の特性として、資本収益率(r)と経済成長率(g)の乖離を実証的に明らかにしている。資本収益率とは、投下した資本がどれだけの利益を上げているか。経済成長率はGDPがどれだけ増えているか(を示す)。
歴史的に見ると、戦後の一時期を除いて、資本収益率は経済成長率を上回っているというのがピケティの注目すべき指摘。つまり、「r>g」という不等式が基本的に成り立つということ。
gの増加は中間層や貧困層を含めた国民全体を潤すが、rの増加は富裕層に恩恵が集中する。gよりもrが大きい期間が長くなればなるほど、貧富の差は広がり、富が集中していく。これがベルエポックと「第2のベルエポック」における格差拡大の真相ということになる。
ピケティは、世襲の復活について警鐘を鳴らす。「第2のベルエポック」で大きな資産を築いた富裕層がその資産を子孫に継承することで、100年ぶりに世襲による階級が復活しつつある。
ピケティはそうした格差の固定化、さらに拡大を防ぐために、グローバル累進課税という制度を提言。
しかし、このグローバル累進課税構想は米国の保守派を刺激した。「ピケティはマルキスト(マルクス主義者)だ」といった批判がわき起こっている。
ピケティの主張・提言を引き続き検証しながら、政治的な分配問題を含めた議論を活発にしていくこと(が求められる)。
・・・(資本収益率>経済成長率)=格差拡大。成長が望めない社会では、格差は拡大する一方になる。のか。
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