ティラノサウルス像の「進化」
世間が夏休みの時期に入ると、「恐竜」の文字を目にすることが多くなる。ニッポンの夏は恐竜の夏。ということで、雑誌「ニュートン」9月号のティラノサウルス関連記事からメモします。
1902年、アメリカ自然史博物館のバーナム・ブラウンは、アメリカ、モンタナ州で大型恐竜の化石を発見した。その化石は、その後、古生物学者ヘンリー・オズボーンによって「ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)」と命名された。ティラノサウルスは「暴君トカゲ」、レックスは「王」の意味である。
名づけ親である古生物学者ヘンリー・オズボーンが発表したティラノサウルスの復元図は、体が垂直に近く、尾をひきずっており、ゴジラのような姿でえがかれていた。当時は、ほとんどの恐竜がそのような姿だと考えられていたのだ。
その後、足跡の化石のまわりに尾をひきずったあとが残されていないことなどから、尾をひきずる姿勢がまちがいだとわかった。今では、尾が体に水平な姿で復元されている。
恐竜は骨盤の形から大きく「鳥盤類」と「竜盤類」に分類される。代表的な鳥盤類はトリケラトプスやステゴサウルスなど、竜盤類はブラキオサウルスなどだ。ティラノサウルスは竜盤類で、なかでも「獣脚類」とよばれるグループである。
現在、鳥類は小型の獣脚類から進化したと考えられている。ティラノサウルスは現生の爬虫類より鳥類に近いのだ。
2012年4月、大型のティラノサウルス類に羽毛が生えていたことがはじめて明らかになった。新しく中国で発見された、体長9メートルのティラノサウルス類「ユティラヌス・フアリ」は、全身に羽毛がはえていたのだ。それまで、ティラノサウルスの仲間では小型の種でしか羽毛が見つかっていなかった。大型種での発見により、ティラノサウルスの仲間の多くに羽毛が生えていた可能性が高まったといえる。ただし、寒い地域にすむ仲間だけが、保温のために羽毛を持っていたのではないかとする説もあり、ティラノサウルス類すべてに羽毛が生えていたわけではないと主張する研究者もいる。
・・・ティラノサウルス・レックスの復元像の変遷を辿ると、科学的知見というものはどんどん更新されていくのだなあという感慨を持つ。今では、羽毛のあるティラノサウルス・レックスの復元図も出てきて、それが真実という可能性はあるにしても、見た目だけで言えば肉食恐竜の猛々しさや荒々しさが薄まるものだから、何だかビミョー。
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