2024年4月14日 (日)

Z世代と核兵器

戦争や核兵器に対して、若い世代は深刻な感覚を持っていないみたいだし、それは世界的傾向のようでもある。「ニューズウィーク日本版」4/16号の映画『オッペンハイマー』特集記事の一部を、以下に引用する。

アメリカでは今や人口の40%以上が、1981年以降に生まれたミレニアム世代とZ世代だ。彼らは第2次大戦に関する知識が驚くほど薄い。ヒロシマと原爆は知っているが、その開発や日本に投下するという決断については、ほとんど何も知らない。実際、この世代の大多数は、第2次大戦のアメリカの同盟国と敵国はどこかという質問にさえ答えられないのだ。

彼ら若い世代の70%近くが核兵器は非合法化しなければならないと考えているが、一方で、『オッペンハイマー』のクリストファー・ノーラン監督の息子の言葉にうなずく人も多いだろう。Z世代である息子は父親の新作のテーマを聞いて、「核兵器や戦争について本気で心配する人はもういない」と言った。

ノーランはこう答えた――「たぶん心配したほうがいい」。今は若い世代にも心配している人が増えただろう。『オッペンハイマー』の観客の3分の1以上は32歳以下だ。

・・・自分の子供の頃は、第3次世界大戦はアメリカとソ連が核ミサイルを撃ち合って決着をつける、という話がフツーに流布していたし、映画やマンガやプラモデルで戦争を学んだという記憶がある。確かに冷戦が終わりソ連が終了して、「最終戦争」が起きる可能性は殆ど無くなったし、それに伴い、戦争や核兵器についてあれこれ考える必要性が低下したとは思う。けれども昨今、ロシアやイスラエルの行動を見ても、今度はポスト冷戦の時代が終わったと思わざるを得ない状況だ。言い換えれば、またもや戦争や核兵器について本気で心配しないといけない時代に入った、ということかもしれない。

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2024年4月 3日 (水)

中国人民解放軍は台湾を「解放」する

本日付日経新聞「中外時評」(中国は米国の衰退を待たず)から、以下にメモする。

名は体を表す。「中国人民解放軍」も例外ではない。言わずもがな、中国の軍隊である。ただし「中国軍」と呼ぶのはふさわしくない。中華人民共和国という国家でなく、中国共産党という政党に属する軍隊だからだ。戦う相手は「党の敵」であり、必ずしも外国勢力とは限らない。もともと、共産党が国民党を倒すためにつくった軍隊だ。国内を含め敵の支配下にある人びとを解放する。それを任務とするから「人民解放軍」である。

なぜ国防軍ではだめなのか。研究者に尋ねたことがある。次の答えが返ってきた。「台湾を解放するまで、名前を変えるわけにはいかない」

解放軍の最も重要な任務は台湾の統一だ。それを悲願とする習近平(シー・ジンピン)国家主席は、解放軍に絶対的な忠誠を求めている。習氏にすれば、解放軍の国軍化はありえない。台湾を取り戻すために、武力を使う選択肢は常に党の手中に置いておく必要がある。

防衛省の防衛研究所で解放軍の動向を分析する杉浦康之主任研究官が注目するのは、ロシアのウクライナ侵攻が解放軍の戦略に与えた影響だ。遠隔で操作する最先端の兵器を使って攻めるだけでは勝てない。大規模な部隊を台湾に送り込み、市街戦も覚悟しなければならない。

一方、ウクライナ戦争をへて中国が核戦力の重要性を再認識した点は見逃せない。習氏が台湾有事の際、プーチン氏にならって核の脅しを考えてもおかしくない。杉浦氏は「米中の核戦力が拮抗すれば台湾有事の危険性は増す」と警鐘を鳴らす。

少し前まで、中国の国内総生産(GDP)は2030年ころに米国を抜くとみられていた。習氏を含む中国人の多くは米国が放っておいても衰退し、台湾を守る力は弱まると考えていたはずだ。実際は、米国に追いつく前に中国の成長力に陰りが出てきた。人口の減少が始まり、深刻な不動産不況を起点とする経済の苦境は出口がみえない。

米国が弱くなるのを待っていては、台湾を統一する時機を逸してしまう。習氏がそう判断したとき、台湾有事は現実味を増す。

・・・中国人民解放軍は、中国共産党の、習近平氏の「私兵」である。習氏が一度心に決めれば、いつでもどこへでも動かせる軍隊であると思うと、やはり脅威であるというほかない。

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2023年4月 1日 (土)

今の中ロは1930年代の日独

昨日3月31日付日経新聞オピニオン面のコラム記事「1930~40年代繰り返すな」(ギデオン・ラックマン氏)から、以下にメモ。

米ハーバード大学の政治学者グレアム・アリソン教授は、習近平氏のモスクワ訪問によって中ロの間には「世界で最も重要な宣言なき同盟」、つまり、ユーラシア大陸を横断する中ロの枢軸関係が存在することが明白になったと指摘する。

このロシアと中国の同盟に対抗するのが、米国と密接な同盟関係を結んでいる複数の民主主義国家だ。同陣営は、大西洋をまたにかけた軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)と、日本を筆頭とするインド太平洋地域のアジア諸国と米国の同盟関係によって、強固な関係を築いている。

対立する2つの陣営が世界に出現したことで、新たな冷戦が始まったとの議論が沸き起こっている。新冷戦も米ソの冷戦と明らかに似たところがある。つまり、中ロが米国を中心とする民主主義諸国を敵視する一方、今回もいずれの陣営とも同盟関係を結んでいない多くの途上国(最近は「グローバルサウス」と呼ばれている)が、どちらにもつかないで両陣営の動きをそばでみている点はそっくりだ。

しかし、歴史を振り返れば米ソ冷戦時代以上に今の状況に似た時代がある。それは世界各地で緊張が高まった1930~40年代だ。当時も今と同じく、欧州とアジアの2つの権威主義国家が、英米が不当に世界を支配しているとみなし、強い不満を抱いていた。30年代にそうした不満を抱いていたのは、ドイツと日本だ。

欧州で戦争が始まり、東アジアで緊張が高まるなか、これら2つの動きが互いに結びつきを強めつつある現状は、まさに1930年代を思い起こさせる。

・・・今の権威主義国家は、ソフトな全体主義国家。1930年代の全体主義国家は結局、世界大戦に負けて民主主義国になった。そして冷戦時代の資本主義、社会主義、第三世界の構図から、今は西側陣営、中国とロシア、そしてグローバルサウスの3つに色分けされる世界に移った。経済はグローバル化して、その恩恵を中国とロシアも受けてきたはずなのだが、その両国が軍事行動の横暴により、グローバル経済にひびを入れたのは皮肉な事態とも言える。しかし世界大戦が不可能であるならば、相互依存状況の強まった世界経済の中で、あの手この手で経済的不利益を被らせることにより、権威主義国家をさらにソフトにするしかないのだろう。

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2023年2月28日 (火)

プーチンの欧米憎悪

27日付日経新聞オピニオン面掲載フィナンシャルタイムズのコラム記事(プーチン氏、「脱欧米」へ執念)から、以下にメモする。

ロシアのプーチン大統領は21日の年次教書演説で、ウクライナ侵攻の継続を強調しただけでなく、同時に自国の政治や経済、社会の目指すべき方向性も示した。それは、西側諸国との完全な決別の意志を改めて裏付けるものだ。

同氏は軍事作戦が、国内の反体制派を一掃し、「敵対的」あるいは「退廃的」な西側の影響力を遮断することと密接に結び付いていると力説した。
換言すると、ウクライナの領土の恒久的な支配だけを狙っているのではない。欧米の影響をこの先、一切排除する形でロシア社会を再構築することも意図しているのだ。

演説の眼目は自国が軍事、政治、経済、文化のあらゆる面で西側の攻撃にさらされており、欧米の手先として動いているのがウクライナの現政権だという主張に置かれた。
演説で目を引いたのは、西側に渡ってぜいたくな暮らしを続けようとする新興財閥(オリガルヒ)を何度も見下したことだ。対照的に、ロシア正教に古くから根差す民族的アイデンティティーは繰り返したたえた。
プーチン氏は、国家と社会を自身の理想に沿って造り替えた暁には、親欧米的な価値観の入り込む余地は一切ないと、経済界のエリートらに警告を発した。

・・・プーチンの欧米憎悪は、一体全体どこから来ているものなのか。そして、この思念はロシア国民にどこまで共有されているものなのか。わからんなあ。

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2023年2月23日 (木)

独ソ戦の「記憶」

ロシアのウクライナ侵攻開始から、明日で一年が経つ。正直なところ、いまだになぜこんなことが起きているのか、よく理解できない。この戦争が世界の将来にどんな影響を与えるのかについても、既にいろいろ議論されてはいるが、今は何よりも早期の停戦を願うばかりだ。

さて、昭和世代の一部には独ソ戦の「記憶」がある、と言うと怪訝に思われるだろうか。第二次世界大戦後10年以上過ぎた昭和3040年代生まれの世代は、太平洋戦争はもちろん欧州戦線も、映画・マンガ・プラモデルで「学んだ」と言える。田宮模型のタイガー戦車やT34戦車を作り、ソ連映画『ヨーロッパの解放』から独ソ戦の決定的なイメージを受け取ったように思う。

ソ連終焉から約30年が経った2020年代初頭、日本の読書界で「独ソ戦」のテーマが注目され、『独ソ戦』『戦争は女の顔をしていない』『同志少女よ、敵を撃て』が読者を獲得。そして、なぜかその状況に「シンクロ」するように2022年2月24日、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した。かつての独ソ戦の戦場で、旧ソ連の国同士が敵対し、キエフやハリコフの攻防戦が伝えられる事態に、独ソ戦の「記憶」を持つ者としては、深い困惑と奇妙な「既視感」を覚えるばかりだった。現在も戦闘の終わる兆しは見えず、欧米のウクライナ支援も、ロシアが継戦能力を失うまで続く気配が濃厚になってきている。

最近の独ソ戦の研究では、ヒトラーの「世界観戦争」との見方も強調されてはいるが、経済的資源の獲得を目指す収奪戦争であったことも疑いない。これに対して、「プーチンの戦争」とも呼ばれるウクライナ戦争には、純然たる「世界観戦争」の印象がある。独善的な思想を持つ指導者の指令で遂行される戦争が「世界観戦争」であるならば、この戦争が実行可能と見られる国家体制を敷く国々が、日本の近隣に存在している。この戦慄的な地政学的現実への対応として、日本が戦後の安全保障政策の大転換に踏み出したことは、基本的な方向性として是認できる。

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2023年1月26日 (木)

「レオパルト2」戦車、ウクライナへ

日経新聞電子版25日配信記事「最強戦車レオパルト2を供与へ なぜドイツは迷ったのか」から以下にメモする。

ドイツが「世界最強の主力戦車」とされるドイツ製レオパルト2をウクライナに供与する見通しとなった。しかし決断には時間がかかった。なぜドイツは迷ったのか。

「いまのウクライナ情勢をみていると第2次世界大戦中の独ソ戦をほうふつさせる」。それがドイツ政界関係者の偽らざる心境だ。キーウ(キエフ)、ハルキウ、ドニエプル川、アゾフ海。戦場の地名は第2次世界大戦中のものと重なる。

「正直言ってレオパルト2とロシア製戦車の戦闘はみたくない」とドイツ与党幹部は取材に語った。いまウクライナは戦争の被害者であり、侵略者から領土を守る立場だ。それでも心理的な壁がある。

負の歴史を背負うドイツとしては、自らが北大西洋条約機構(NATO)とロシアの戦争の引き金を引くのは絶対に避けたい。戦後ドイツは「過去への謝罪」に膨大な労力を費やした。その努力が無駄になるリスクがある限り、ドイツ政治は動けない。

慎重居士のショルツ首相は決断のタイミングを探っていたようだ。核保有国の米英仏の3カ国が供与に動くのをじっと待ち、足並みをそろえた。特に米国の意向を気にしていた。動きの鈍さが国内外で批判されたが、「追い込まれた末の決断」という印象のほうが好都合と思っていたフシすらある。

・・・ウクライナは独ソ戦の戦場である。自分のように昔、田宮模型のタイガー戦車やT34戦車を作り、ソ連映画「ヨーロッパの解放」を観た者には、今のウクライナ戦争にはデジャブに近い感覚がある。そうでなくても近年、日本の読書界では『独ソ戦』『戦争は女の顔をしていない』『同志少女よ、敵を撃て』が多くの読者を獲得するなど、ちょっとした「独ソ戦」ブーム。ただの偶然にしては余りにも摩訶不思議なシンクロだ。この現実を、どう理解すれば良いのやら。

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2022年12月25日 (日)

平成の政治改革も今は昔?

12月7日付日経新聞市況欄コラム「大機小機」(令和で再び政治活性化を)からメモする。

平成(1989~2019)は政治改革の時代だった。約40年続いた自民党の政権独占と、その下での政官関係が国民の信頼を失ったことが起点になった。旧態依然とした日本の政治行政の体制では、バブル崩壊後の経済と冷戦終結後の国際環境に対応できないという危機感も強かった。選挙制度改革、省庁再編などが次々と実現した。

国民からの信頼の獲得を目指す政党間の競争、そして政権交代の可能性が政治に規律を与える。同時に政治のリーダーシップの発揮によって、行政や政策が既得権益のしがらみから解き放たれ、国民本位の改革が推進される。成果は別として、こうした理念が一貫して平成の改革の根底にあったことは間違いない。

小泉政権から数えて約20年。政治改革のサイクルが一巡し、昨今の状況は政治不信を招いた90年代に酷似してきていないか。政権交代の期待を担う野党は見当たらなくなった。自民党が選ぶリーダーは内向き・調整型になった。噴出する政治とカネの問題にも既視感がある。

90年代と比べて、内外の環境は格段に厳しくなっている。人口減少と高齢化は現実化し、経済の停滞は打開できないままだ。地政学的対立やエネルギー環境問題の緊迫化の中で、日本の針路選択は不透明さを増している。政治家には国益を見据え、歴史感覚を持ち、国民本位で蛮勇を振るうことを期待したい。

・・・平成時代の政権で改革イメージが強いのは、細川、橋本、小泉、安倍というところか。特に安倍政権は長期政権となり、金融・財政から働き方改革まで、経済改革はひと通り取り組んだという印象がある。しかし反面、いわゆる成長戦略あるいは構造改革は、まだまだ足りないと指摘されるところ。令和の日本政治は、とりあえず平成でやり残した改革を進めることになるのだろう。

ところで昨今の防衛予算の増額、原発政策の修正、NISA大改造などを見ていると、意外と岸田政権はリアリズムで課題に取り組むのだな、という感じがしてきた。支持率は低下傾向だけど、取って代わる人も特に見当たらないし、何となく続いていくのかな。

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2022年5月25日 (水)

「ネオナチ」批判、空回り

日経新聞電子版本日付配信記事「プーチン大統領、ネオナチ批判の重いツケ 侵攻3カ月」からメモする。

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して3カ月。プーチン大統領は侵攻理由のひとつに、ナチズムとの闘いを掲げる。ウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ政権」と非難。第2次世界大戦で当時のソ連がヒトラー率いるナチス・ドイツに勝利した歴史と重ね合わせ、ロシア国民の愛国心をあおって侵攻を正当化しようとしている。だが、こうした戦術が奏功しているとは言い難い。

プーチン氏が執拗にネオナチを持ち出し、ウクライナ非難の宣伝材料にするのには理由がある。第2次大戦前後にウクライナの独立運動を主導した政治家ステパン・バンデラの存在だ。
バンデラは「ウクライナ民族主義者組織」の指導者で、ウクライナ西部を中心に戦前はポーランド支配、その後はソ連支配からの独立を求めて武力闘争やテロ活動を主導した。1959年、滞在先のミュンヘンでソ連国家保安委員会(KGB)の工作員によって暗殺された。
ソ連による占領に対抗するため、一時的にナチス・ドイツとの協力を唱えた経緯があり、旧ソ連やロシアではバンデラを「ヒトラーの協力者」、バンデラ主義者を「ネオナチ」とみなす。一方、ウクライナでは91年末の国家独立以降、バンデラを英雄視する傾向が強まり、各地に銅像も建てられるようになった。
ロシアを中心に旧ソ連ではもともと、ナチズムへの嫌悪感が根強い。第2次大戦の対独戦で3000万人近い犠牲者を出したからだ。一時的にせよナチスと協力したバンデラの存在は、ウクライナ侵攻で国民の支持を得たいプーチン氏にとって格好の宣伝材料となっている。

ただし、政権の思惑が必ずしも成功しているわけではない。「ウクライナ情勢で何を懸念しているか」。民間世論調査会社のレバダ・センターが4月に実施した調査によると、民間人やロシア兵を含めた人的犠牲が47%を占めた。半面、バンデラ主義者やナチズム信奉者の脅威を挙げたのは6%にすぎなかった。

・・・「ネオナチだから敵だ」という主張は、NATOに接近するウクライナを「敵」と見做して、後からネオナチのレッテル張りをしているだけのこと。そんなバレバレの主張で戦争を起こす人間というのは、やはり正気ではないとしか言いようがない。「極悪」のシンボルとして引き合いに出されたナチスにも、お門違いの「不名誉」であるかも知れないと、かつてドイツと同盟国だった極東の島国の住人であるワタシは思ったりする。

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2022年5月 9日 (月)

プーチンの戦争の行方

今日のロシアの「戦勝記念日」におけるプーチン大統領の演説では、「戦争状態」宣言など新たな展開を示す言葉は語られなかった。一方で、ウクライナとの戦争を止める気配も皆無。ということで現状ロシアの苦戦が伝えられる中、敗北を回避しつつ戦争を終わらせるために、ロシアが限定的に核兵器を使う可能性も消えていない。「文藝春秋」5月号掲載「徹底分析プーチンの軍事戦略」(小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師)から、以下にメモする。

プーチンがウクライナでの戦争を簡単に終わらせるとは考えられません。現状、ウクライナへの全面侵攻によって、ロシアに何か特別な利益がもたらされたとは思えない。

こうなると従来は心理戦だと考えられてきたエスカレーション抑止戦略が、突如として現実味を帯びてくる。限定的に核を使用し、ロシアにとって有利な形で戦争を終わらせようとするのではないかという可能性が高まってきたのです。

※エスカレーション抑止:戦争に負けそうになったら、一発だけ限定的に核を使用する。その核の警告によって相手に戦争の継続を諦めさせる、あるいは、ロシアにとって受け入れ可能な条件で戦争を停止させることができると考える。

ロシアの限定核戦争にどう対応するかは、その時の指導者や国民の気分次第です。使用した場所がウクライナ域内だったとしても、アメリカがロシアの無人地帯に向けて、核での報復を行う可能性はあります。

そこから先は、不確実性に不確実性を積み重ねていく世界です。どこまでエスカレートするかは、神のみぞ知る。なにしろ核のボタンを握っているのはあのプーチンです。彼の精神状態が良くない方向に嵩じて行けば、全面核戦争に踏み込んでもおかしくはない。
仮に「ロシア対アメリカ・NATO」の全面核戦争に発展した場合、日本も無関係ではいられません。

ロシアの軍事思想を踏まえると、彼らは有事の際には、アクティブ・ディフェンス(攻撃的な防御)の構えをとる。攻撃を受ける前に敵の戦力発揮能力を破壊する行為が防御のうちに含まれているのです。となれば、ロシアは確実に日本の米軍基地を狙ってきます。つまり、このウクライナ戦争は日本にとって対岸の火事ではない。

日本も含めた国際社会に求められるのは、ロシアが核使用までエスカレートする前に、プーチンとゼレンスキーを交渉のテーブルにつかせること。プーチンの最低限のメンツを保ちつつ、かつウクライナの主権を奪われない形でなんとか話を妥結する必要があります。

・・・とにかく両国の大統領の会談が実現しなければ、戦争を終わらせて和平に向かうプロセスの入り口にも立てない。そして今のところ、その入り口すら遠くて見えない状況というほかはない。

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2022年4月21日 (木)

ロシアの近未来像は

ウクライナ戦争が終結する時、プーチンのロシアに何が起きるのか。以下は、小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師の見方。(雑誌「Wedgeウェッジ」5月号掲載のインタビュー記事からのメモ)

(ロシアの「勢力圏」と「大国」意識について)
ロシアには「大国」を中心とする国際秩序観がある。「勢力圏」というのは、西欧は米国のシマであり、東欧はロシアのシマという認識だ。特徴的なのは、「勢力圏」と、「ルーシ(スラブ)の民は一つ」というナショナリズムが癒着していることだ。昨年7月にプーチン大統領は『ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について』という論文を発表したが、現状においても「ウクライナは西側にたぶらかされているから、ロシアが保護する必要がある」と、あたかも自分たちこそがスラブ民族の救世主であるかのごとく考えている。

(ウクライナ侵攻の理由)
「ウクライナとロシアの統一」とは観念的で、フワッとしている。プーチン大統領が頭の中ではそのように考えていたとしても、政治家であれば現実的に行動するのが普通だ。今回の場合、いわば、頭の中の考えをそのまま外に出してしまったようなものだ。なぜ戦争まで踏み込んだのかは不明だ。

(「戦後」のロシアについて)
戦後については4つのシナリオが考えられる。まず、「大北朝鮮化」、つまり「プーチニスタン」の出現だ。大量破壊兵器の使用も辞さず、何を起こすのか分からない。国際的にも完全に孤立する。
次に、現政権内部でプーチンを引きずり降ろす可能性である。プーチン後を誰が率いるかが課題だ。
3つ目は、国民とエリートが合意して現在の権力構造を変えることだ。
最後に、ロシアの人々が最も恐れる状況が「大動乱(スムータ)」だ。「第二次ソ連崩壊」と言えるかもしれない。誰も全土を統治できる人間がおらず、混乱が続くという状況だ。

・・・さすがに「大北朝鮮化」だけは勘弁してほしい。のだが、新型ICBM発射成功を自信たっぷりに発表するプーチンを見ていると、北朝鮮化が確実に進んでいるようにも思える。

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