2022年7月17日 (日)

若年層の投票先に変化の兆し?

先の参議院選挙では自民党が大勝したが、若年層の投票先を分析すると、変化の兆しも見えるようだ。本日付日経新聞記事からメモする。

自民党は選挙区で議席を積み増した一方で、比例代表は前回2019年から1減った。比例代表の投票先を分析すると、安倍政権下で自民党に流れた若年層の票が、新たな選択肢に向かった動きが浮かぶ。
比例代表は政党の支持傾向が反映されやすい。自民党の今回の得票率は19年より0.9ポイント低い34.4%だった。
共同通信社の出口調査で年齢層別の投票先をみると、自民党の比率は50歳代以上の各年代で19年より高まった。対照的に若い世代は落ち込み、特に20歳代は3.5ポイント下がって4割を切った。
野党第1党の立憲民主党も、20歳代で19年の旧立民を1.6ポイント下回った。公明党や共産党の比率も低下した。

自民党などから離れた若者の票はどこに向かったのか。伸びたのは参政党や国民民主党、日本維新の会などだ。
参院選に初めて候補を立てた参政党は20歳代の投票先で5.9%に達し、共産を上回った。国民民主党も、19年の旧国民民主より3.9ポイント高く10.5%になった。日本維新の会も0.7ポイント伸びて、国民民主と並ぶ10.5%を占めた。

京都府立大の秦正樹准教授は「新しい選択肢の存在が若者をひき付ける力になった」との仮説を示す。秦氏の研究によると、維新は政権を担当する能力があると考える人が増えている。より変化を求める20歳代は、すでに目新しさに乏しいと感じている可能性もある。

第2次安倍政権以降は、現状に飽き足らない若い世代ほど自民党に投票する傾向があった。今回の参院選からは、その構造が再び変わってきたことがうかがえる。

・・・自分はシニア世代だけど、今回の参院選は国民民主党に投票した。与党の自民と公明には票を入れる気がせず、維新もピンとこず、国民民主も何か印象が弱いけど、とりあえず「改憲勢力」の一角らしいので消去法的に入れたという次第。現状、野党には政権担当能力は無いわけだから、結局政権交代が起きるのは、93年のように自民党が分裂する時なのだろうが、その可能性は今のところ限りなく小さい。

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2022年5月25日 (水)

「ネオナチ」批判、空回り

日経新聞電子版本日付配信記事「プーチン大統領、ネオナチ批判の重いツケ 侵攻3カ月」からメモする。

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して3カ月。プーチン大統領は侵攻理由のひとつに、ナチズムとの闘いを掲げる。ウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ政権」と非難。第2次世界大戦で当時のソ連がヒトラー率いるナチス・ドイツに勝利した歴史と重ね合わせ、ロシア国民の愛国心をあおって侵攻を正当化しようとしている。だが、こうした戦術が奏功しているとは言い難い。

プーチン氏が執拗にネオナチを持ち出し、ウクライナ非難の宣伝材料にするのには理由がある。第2次大戦前後にウクライナの独立運動を主導した政治家ステパン・バンデラの存在だ。
バンデラは「ウクライナ民族主義者組織」の指導者で、ウクライナ西部を中心に戦前はポーランド支配、その後はソ連支配からの独立を求めて武力闘争やテロ活動を主導した。1959年、滞在先のミュンヘンでソ連国家保安委員会(KGB)の工作員によって暗殺された。
ソ連による占領に対抗するため、一時的にナチス・ドイツとの協力を唱えた経緯があり、旧ソ連やロシアではバンデラを「ヒトラーの協力者」、バンデラ主義者を「ネオナチ」とみなす。一方、ウクライナでは91年末の国家独立以降、バンデラを英雄視する傾向が強まり、各地に銅像も建てられるようになった。
ロシアを中心に旧ソ連ではもともと、ナチズムへの嫌悪感が根強い。第2次大戦の対独戦で3000万人近い犠牲者を出したからだ。一時的にせよナチスと協力したバンデラの存在は、ウクライナ侵攻で国民の支持を得たいプーチン氏にとって格好の宣伝材料となっている。

ただし、政権の思惑が必ずしも成功しているわけではない。「ウクライナ情勢で何を懸念しているか」。民間世論調査会社のレバダ・センターが4月に実施した調査によると、民間人やロシア兵を含めた人的犠牲が47%を占めた。半面、バンデラ主義者やナチズム信奉者の脅威を挙げたのは6%にすぎなかった。

・・・「ネオナチだから敵だ」という主張は、NATOに接近するウクライナを「敵」と見做して、後からネオナチのレッテル張りをしているだけのこと。そんなバレバレの主張で戦争を起こす人間というのは、やはり正気ではないとしか言いようがない。「極悪」のシンボルとして引き合いに出されたナチスにも、お門違いの「不名誉」であるかも知れないと、かつてドイツと同盟国だった極東の島国の住人であるワタシは思ったりする。

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2022年5月 9日 (月)

プーチンの戦争の行方

今日のロシアの「戦勝記念日」におけるプーチン大統領の演説では、「戦争状態」宣言など新たな展開を示す言葉は語られなかった。一方で、ウクライナとの戦争を止める気配も皆無。ということで現状ロシアの苦戦が伝えられる中、敗北を回避しつつ戦争を終わらせるために、ロシアが限定的に核兵器を使う可能性も消えていない。「文藝春秋」5月号掲載「徹底分析プーチンの軍事戦略」(小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師)から、以下にメモする。

プーチンがウクライナでの戦争を簡単に終わらせるとは考えられません。現状、ウクライナへの全面侵攻によって、ロシアに何か特別な利益がもたらされたとは思えない。

こうなると従来は心理戦だと考えられてきたエスカレーション抑止戦略が、突如として現実味を帯びてくる。限定的に核を使用し、ロシアにとって有利な形で戦争を終わらせようとするのではないかという可能性が高まってきたのです。

※エスカレーション抑止:戦争に負けそうになったら、一発だけ限定的に核を使用する。その核の警告によって相手に戦争の継続を諦めさせる、あるいは、ロシアにとって受け入れ可能な条件で戦争を停止させることができると考える。

ロシアの限定核戦争にどう対応するかは、その時の指導者や国民の気分次第です。使用した場所がウクライナ域内だったとしても、アメリカがロシアの無人地帯に向けて、核での報復を行う可能性はあります。

そこから先は、不確実性に不確実性を積み重ねていく世界です。どこまでエスカレートするかは、神のみぞ知る。なにしろ核のボタンを握っているのはあのプーチンです。彼の精神状態が良くない方向に嵩じて行けば、全面核戦争に踏み込んでもおかしくはない。
仮に「ロシア対アメリカ・NATO」の全面核戦争に発展した場合、日本も無関係ではいられません。

ロシアの軍事思想を踏まえると、彼らは有事の際には、アクティブ・ディフェンス(攻撃的な防御)の構えをとる。攻撃を受ける前に敵の戦力発揮能力を破壊する行為が防御のうちに含まれているのです。となれば、ロシアは確実に日本の米軍基地を狙ってきます。つまり、このウクライナ戦争は日本にとって対岸の火事ではない。

日本も含めた国際社会に求められるのは、ロシアが核使用までエスカレートする前に、プーチンとゼレンスキーを交渉のテーブルにつかせること。プーチンの最低限のメンツを保ちつつ、かつウクライナの主権を奪われない形でなんとか話を妥結する必要があります。

・・・とにかく両国の大統領の会談が実現しなければ、戦争を終わらせて和平に向かうプロセスの入り口にも立てない。そして今のところ、その入り口すら遠くて見えない状況というほかはない。

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2022年4月21日 (木)

ロシアの近未来像は

ウクライナ戦争が終結する時、プーチンのロシアに何が起きるのか。以下は、小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師の見方。(雑誌「Wedgeウェッジ」5月号掲載のインタビュー記事からのメモ)

(ロシアの「勢力圏」と「大国」意識について)
ロシアには「大国」を中心とする国際秩序観がある。「勢力圏」というのは、西欧は米国のシマであり、東欧はロシアのシマという認識だ。特徴的なのは、「勢力圏」と、「ルーシ(スラブ)の民は一つ」というナショナリズムが癒着していることだ。昨年7月にプーチン大統領は『ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について』という論文を発表したが、現状においても「ウクライナは西側にたぶらかされているから、ロシアが保護する必要がある」と、あたかも自分たちこそがスラブ民族の救世主であるかのごとく考えている。

(ウクライナ侵攻の理由)
「ウクライナとロシアの統一」とは観念的で、フワッとしている。プーチン大統領が頭の中ではそのように考えていたとしても、政治家であれば現実的に行動するのが普通だ。今回の場合、いわば、頭の中の考えをそのまま外に出してしまったようなものだ。なぜ戦争まで踏み込んだのかは不明だ。

(「戦後」のロシアについて)
戦後については4つのシナリオが考えられる。まず、「大北朝鮮化」、つまり「プーチニスタン」の出現だ。大量破壊兵器の使用も辞さず、何を起こすのか分からない。国際的にも完全に孤立する。
次に、現政権内部でプーチンを引きずり降ろす可能性である。プーチン後を誰が率いるかが課題だ。
3つ目は、国民とエリートが合意して現在の権力構造を変えることだ。
最後に、ロシアの人々が最も恐れる状況が「大動乱(スムータ)」だ。「第二次ソ連崩壊」と言えるかもしれない。誰も全土を統治できる人間がおらず、混乱が続くという状況だ。

・・・さすがに「大北朝鮮化」だけは勘弁してほしい。のだが、新型ICBM発射成功を自信たっぷりに発表するプーチンを見ていると、北朝鮮化が確実に進んでいるようにも思える。

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2022年4月20日 (水)

ロシア「KGB政権」

KGB出身のプーチンを「皇帝」として戴くロシアは、かつての共産党ソ連よりも厄介な国家になっていると思われる・・・本日付日経新聞「中外時評」(ロシアに巣くうKGBの亡霊)からメモする。

ロシア軍によるウクライナ侵攻開始からもうすぐ2カ月。ロシアでは制裁の影響で物価が上昇するなど、国民の間に不満の芽が出つつある。しかし、プーチン大統領は全体主義と恐怖政治で、それを覆い隠そうとしている。

連邦保安局(FSB)は、ソ連時代の国家保安委員会(KGB)の流れをくむ治安・情報機関だ。もとをたどれば16世紀に、イワン雷帝が反皇帝勢力を弾圧するために創設した親衛隊オプリーチニキに行き着く。以来、名称や勢力は変えながら、時の権力者がよみがえらせてきた。
そんな亡霊のような存在が侵攻をきっかけに、ソ連崩壊以降最も活発に活動し始めた。KGB出身のプーチン氏が大統領に就任したのが2000年。それ以降、側近をKGB出身者で固めたうえで、憲法を改正したり、有力企業を政府の支配下に置いたりして、長期独裁体制を整えてきた。
野党は事実上存在せず、与党「統一ロシア」はプーチン氏の政党だ。ソ連時代は共産党とKGBがけん制し合う側面もあった。だが、いまの政権を支配するのは、西側を敵視し、力を信奉し、異論は許さないKGBの論理のみだ。

デモ参加者は有無を言わさず拘束。家族をも巻き込む手法は伝統だ。情報統制も徹底している。多くの国民は政府のプロパガンダを信じるしかなくなった。
あの手この手のプロパガンダは、戦争に異議を唱えることを許さない。
だが、国民は多数の若い兵士が戦死したことを知り、外国との関係を断たれたことによる困難と不自由さを味わい始めている。政権側は「すべては西側のせい」と批判をかわそうとしているが、それにも限界がある。行き着く先は、独裁による恐怖政治だ。

KGBの亡霊が巣くうロシアは、侵攻前より不安定さを増している。世界にとって危うい存在であり続けるのは間違いない。

・・・一党独裁とプロパガンダ。KGB出身のリーダーとKGBの後継組織が支配するロシアは、ナチス・ドイツと相似形の国家としか見えない。

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2022年4月 3日 (日)

スターリン化するプーチン

本日付日経新聞の「NIKKEIAsia」オピニオン記事(スターリンと似るプーチン氏)からメモする。

ロシアのプーチン大統領はかつて、尊敬する人物はピョートル大帝だと語った。18世紀初頭にロシアを近代欧州の列強の一つに仕立て上げた人物だ。彼の最も素晴らしい遺産は、西部に建設した都市サンクトペテルブルクで、1917年のロシア革命まで首都であり続けた。

指導者としてのプーチン氏は、ジョージア(グルジア)出身で22~53年にソ連を率いたスターリンに似ている。スターリンは30年代の「大粛清」での弾圧や拷問、強制収容により、多くの死者を出した。プーチン氏は大粛清ほどの犠牲を生んでいないとはいえ、振る舞いは冷酷な独裁者のスターリンに近づいている。
ソ連のジューコフ元帥は回想録で、数多くの兵士の命を無駄にした責任がスターリンにあると非難した。プーチン氏も、あらゆる人命に対して無関心な様子だ。

プーチン氏は侵攻前、ウクライナが存在する権利はないという意味の発言をした。しかし戦闘が1カ月以上続いてなお、プーチン氏はウクライナの政権を崩壊させるなど当初の目的を達成していない。
追い詰められたプーチン氏は、真実と虚構の混ざった不満を抱え込み、危険だ。国際社会はある意味で、プーチン氏がスターリンともう一つの共通点を持つことを期待するしかない。無慈悲で常軌を逸しているが、究極的には合理的な人物であることだ。

・・・スターリンが「合理的な人物」かどうかはさておき、ウクライナ戦争においては現状、とにかくプーチンが諸々の「潮時」を了解して「合理的」に行動してくれることを期待するしかない感じではある。

気が付けばスターリン化していた独裁的権力者プーチン。ただスターリンの共産党(あるいはヒトラーのナチス党)のような、強固な組織的基盤が無いように見えるにも係わらず、プーチンが何年もかけて独裁的権力の強化を図ることができたのは、ちょっと不思議な気がする。

独裁的権力者プーチンは大国復活を目指しているようだが、その念頭にあるのはロシア帝国なのかソ連なのか。どちらにしても、時代錯誤というほかは無いのだが、プーチンがスターリン化するのではなく、西欧かぶれのピョートル大帝を真似してくれれば、世界は平和だったろうに。(ため息)

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2022年3月21日 (月)

「冷戦後」の終わり?

本日付日経新聞コラム記事(パラダイム危機の時代)から以下にメモする。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻からもうすぐ1カ月。冷戦後の国際秩序のパラダイム(枠組み)が大きく揺らぎ始めたのではないかという危機感を、多くの人が抱き始めている。

「マクドナルドがある国と国では戦争は起きない」。冷戦後に旧ソ連・東欧が民主化・市場化し、自由にヒト、モノ、カネが動くグローバル化が進み世界経済が一つになったので、もう大きな戦争は起こらないという説だ。90年1月にモスクワに第1号店を開き、冷戦終結の象徴となったマクドナルド。同社も今回のウクライナ危機で、ロシア国内全店の一時休業に追い込まれた。30年前の冷戦終結と軌を一にするかのように進んだ経済のグローバル化。ロシアのウクライナ侵攻は冷戦後の国際秩序を揺さぶると同時に、グローバル経済に再考を迫る。

経済政策、とりわけ金融政策はパラダイムの揺らぎに直面している。冷戦後に金融のグローバル化が進むとともに、物価情勢は1970~80年代のインフレから、ディスインフレーション(物価鎮静化)の時代に入り、21世紀に入ると金融政策はインフレ目標、フォワードガイダンス(先行き指針)など経済学者らが合議で進める枠組みが優勢になったが、その有効性が今問われ始めている。

米連邦準備理事会(FRB)は16日、2018年12月以来3年3カ月ぶりの利上げに踏み切り、インフレ退治に本腰を入れ始めた。足元のインフレは2年に及ぶコロナ禍からの需要の急回復と、サプライチェーンの途絶による供給制約という需要・供給双方の特殊要因と解釈されてきた。だが、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油、希少金属、穀物など国際商品の価格上昇や供給不安も重なり、国際秩序の揺らぎと同調する複合危機の様相を強めている。

コロナ禍からウクライナ危機。この2年間で世界の大変動を目撃してきた我々は、これまでは当たり前と信じていた枠組みの揺れを感じている。それは歴史が逆流していくような感覚にも似る。秩序の揺れがいずれ収拾に向かうのか、あるいは中長期の混乱の時代に突入するのか。

・・・ロシアの侵略は、この30年間の「冷戦後」の終わりを告げる出来事なのか。これにより歴史のトレンドは再び大きく変わるのか。あるいは、長期的なトレンドは変わらない中での、短期的な「反動」に止まるのか。しかし後者の場合でも、「冷戦後」の枠組みの修正は必至だろう。いずれにせよ我々が一定の認識を得るまでには、いましばらく時間を要すると思われる。

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2022年3月17日 (木)

「新冷戦」の武器は経済力

本日17日付日経新聞、イアン・ブレマー氏の寄稿文(後戻りできないロシアと世界)から以下にメモする。

ロシアのウクライナ侵攻は多くの人を不確実な状況に陥れたが、一つだけ確かなことがある。ロシアと西側諸国はいまや戦争状態にあるという点だ。いままでで最も厳しい経済制裁を科し、殺傷能力の高い武器をウクライナに供与し、ロシアを孤立させようとする欧米の取り組みは宣戦布告に等しい。プーチン大統領の譲歩という、いまや想像しがたい事態が起きない限り、ロシアと西側は「新冷戦」に直面する。

だが、こうした対立は多くの点で、20世紀の冷戦ほど危険ではないだろう。ロシアの国内総生産(GDP)は米ニューヨーク州よりも小さく、低迷するロシア経済は制裁により、今後1年間で10%以上縮小する可能性が高い。かつロシアの金融システムは、崩壊の危機にひんしている。

ロシアとの関係強化が懸念されている中国はどうか。中ロ関係ではロシアの立場が弱い。ロシアの10倍の経済規模である中国は、ロシアが西側に売れなくなった石油・ガス、鉱物などを買い、ロシア経済を支えるとみられる。中国の将来は経済成長できるかどうかにかかっており、欧米とつながり続けられるかがポイントになる。中国政府はロシアのウクライナ侵攻を非難しないだろうが、西側の制裁にある程度は従う可能性が高い。

ロシアは、ウクライナをプーチン氏の支配下に置くために攻撃を続けるだろう。だがロシア軍が全土を制圧したとしても、ウクライナ国民は戦いを止めず、西側の首脳はウクライナを支援し続けるだろう。史上最も厳しい制裁はさらに強化されることになる。新冷戦への道はもはや後戻りできない。

・・・この記事について日経新聞編集委員は、「新冷戦」の主戦場は経済であり、どちらが先に消耗するかの持久戦でもある、とコメントしている。残念ながら冷戦の歴史は繰り返されてしまったが、直接的な暴力以上に、経済力を武器にして戦うというのが、今起きている「新冷戦」の新しさなのだろう。

プーチンの起こした戦争の結末はウクライナ軍の全滅か、ロシア経済の大幅悪化か。極端に言えばどちらが先か、というチキンゲームの様相であるようだ。

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2022年3月16日 (水)

ロシア軍「Z」マーク、シンボル化

ロシアでは、「Z」マークがプーチン政権支持表明のシンボルになっている。本日付日経新聞国際面記事からメモする。

ウクライナへの侵攻を続けるプーチン政権を支持する層はアルファベットの「Z」を、愛国心を示すシンボルとしている。一方、ウクライナでは侵略の象徴として受け止められており、ナチスドイツの「かぎ十字」になぞらえる見方も各国で広がる。

2月24日の侵攻開始以降、ロシア国内やウクライナの親ロ派勢力が支配する地域では、Z字が「プーチン政権擁護」といった新たな意味を帯びて急速に広がり始めた。

ロシア語を表記するキリル文字にはZはなく、由来は諸説ある。ロシア国防省はZの発音で始まるロシア語の「勝利のために」から来ていると示唆するが、政権転覆を図るウクライナのゼレンスキー大統領の頭文字から来ているという見方もある。ウクライナに展開するロシア軍の戦車の一部に「Z」と白く書かれていたことに由来するとの説も有力だ。

・・・ロシア軍の侵攻直前、作家の佐藤優氏は映像でロシア軍車両の「Z」マークを見て、「ロシアはウクライナに入る肚だと確信した」という。なぜなら、「ロシアとウクライナは同じ車両を使っており、何らかの形で区別する必要がある」からだと述べている(「週刊新潮」3/10号)。おそらくこの識別マークがそのままシンボル化したということなんだろうし、「Z」マークが選ばれた理由もロシア国防省の示唆するところで良いのかもしれない。しかしまあ自分のような年寄りは、昔の「快傑ゾロ」やら「怪獣ゼットン」やら「マジンガーZ」を思い出して、「Z」は簡単に書けるし、強い感じがするのと謎めいた印象があるのも良いのかな、と思ったりもする(苦笑)。

それはそれとして、プーチンがウクライナの政権を「ネオナチ」と呼び、これに対して、ウクライナ側はロシアの押し立てる「Z」マークを「鍵十字」に見立てるという思考の筋道は、むしろ今でもナチスの「絶対悪」としての輝きは不変であることを示しているようだ。

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2022年3月15日 (火)

国連、「オワコン化」が明瞭に

ロシアの蛮行により、国連の国際秩序維持機能の無力化が明らかになった。本日付日経新聞オピニオン面コラム記事(国連、これでいいのか)よりメモする。

ロシアによるウクライナへの侵略は、平和を保つための国際社会の機能がまひしている現実を突きつけた。その最たるものが、国連の安全保障理事会だ。
安保理に求められるのは「平和の番人」の役割で、その権限も与えられている。平和を脅かす国には制裁を決定し、国連メンバーはそれに従う義務がある。
ロシアの侵攻を受け、安保理は2月25日に急きょ、会合を開いた。だが、制裁はおろか、非難決議すらも採択できなかった。
常任理事国の米英仏中ロは決議への拒否権を持っている。ロシアはこの特権を使い、これからも制裁案を葬るにちがいない。

この状態はアジア太平洋の安定にとっても大きな脅威だ。仮に、中国が台湾に侵攻したとしても、同国の拒否権により、安保理は全く身動きできない恐れが強い。
このありさまは今の安保理体制が、もう限界にあることを示している。この体制は先の大戦直後の1945年10月、戦勝国の米英、ソ連(ロシア)が主導し、中国とフランスも加えて立ち上げた。
これら5カ国が世界秩序を支えることを想定していたが、前提は完全に崩れた。ロシアは明白な侵略国となり、中国も現秩序を守るより、曲げる側に回っている。

では、どうすればよいのか。いちばん望ましい方策は、常任理事国の拒否権に一定の制限を設け、中ロなどが乱発できないようにすることだ。
それには国連憲章を変えなければならない。憲章の改定には総会の3分の2と、すべての常任理事国の賛成が要る。実現は極めて難しいと言わざるを得ない。
そこで次善策としては、米英仏中ロの拒否権をそのままにする代わりに、安保理メンバーを増やすという道がある。
常任理事国に日本やドイツ、インドといった主要国を加えたり、現行10カ国の非常任理事国枠を広げたりする。もっとも、これも憲法改定が必要だ。

ならば、まずはウクライナ侵攻問題に焦点を絞り、常任理事国などからロシアを外すことを考えてはどうか。欧州メディアによれば、西側諸国の一部では、この案を探る動きが浮上しつつある。
ロシアは1991年に崩壊したソ連を引き継いで、常任理事国におさまった。国連憲章上、この手続きに「不備」がなかったかどうかを厳しく検証し、ロシア追放につながる根拠を探すことなどを想定しているようだ。

強制力をもつ安保理がこのままでは、世界の秩序はおぼつかない。ロシアの蛮行をもってしても改革できないとすれば、安保理が変われる日は永遠に来ないだろう。

・・・今回のロシアの蛮行は、ポスト冷戦はおろか、冷戦さらには大戦直後まで遡る、世界秩序構築のこれまでの過程を全て台無しにした、とも言える。戦勝国中心の国際秩序維持の仕組みは、もはや有効性を失った。これは新たな国際秩序維持の体制を作るチャンスとも見えるが、恐ろしく難題であることも疑いない。

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