2023年2月27日 (月)

PBR1倍宣言!

本日付日経新聞ビジネス面コラム記事「経営の視点」(始まった「JTC」の逆襲)から、以下にメモする。

「ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー」を略したJTCはネットでよく使われる言葉だ。日本の伝統的な大企業に共通する、内向きで硬直的な組織運営や企業文化を皮肉る時に、使われることが多い。もうすぐ創業150年を迎えるコングロマリット企業の大日本印刷は、投資家が考えるJTCの代表格だ。経営トップが株主の前に出てくるのは、年に1回の株主総会の時だけ。決算説明会を初めて開いたのは2019年と、日経平均構成企業の中で最も遅かった。

そんな大日印が出してきた、「自己資本利益率(ROE)10%とPBR(株価純資産倍率)1倍超」をめざすという次期中期経営計画の基本方針。市場は、後者の方にひっくり返った。

株価を解散価値である1株純資産で割ったのがPBRだ。市場が決める株価が左右し、企業はほぼコントロールできない。実際、これまでPBRを経営目標に掲げた企業は皆無だろう。しかも、大日印のPBRが過去10年で1倍を超えたことは一度もない。

大日印の変身に、2つの「外圧」が強く影響したのは間違いない。世界最大のアクティビストである米エリオット・マネジメントの株取得と、PBR1倍割れの企業に「改善計画」の開示を強く求めるという東京証券取引所の新方針だ。

大日印のある幹部はいう。「非連続の変化が必要だという意味で、市場と我々の利害は一致する」
変化が必要と腹落ちした大企業の組織力は侮れない。JTC逆襲の「のろし」は上がった。

・・・東証の要請以来、バリュー株相場が展開中。ROE向上とPBR1倍回復を目指す計画表明が、単なる株買いの材料に止まらず、実際の経営改革から企業価値向上につながることを強く望む。

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2021年9月 6日 (月)

「ハイリスク・ハイリターン」とは

投資の世界でいう「ハイリスク・ハイリターン」とは、リスクを多く取ればリターンも多く得られる、ではない。『あなたが投資で儲からない理由』(大江英樹・著、日経プレミアシリーズ)から以下にメモ。

投資の世界においてよく使われる「ハイリスク・ハイリターン」という言葉がある。どうもこの言葉については間違った理解をしている人が多いようだ。
間違いの最たるものは、この言葉の意味を「リスクの高いものはリターンも高い」と理解していることだ。ところがこれは明らかな間違いである。ハイリスクのものは決してハイリターンではないのだ。

リスクというのは結果の不確実性のことを言う。したがって「リスクが高い」というのはブレ幅が大きい、すなわち儲かる場合と損する場合の差が大きいということを表わしている。「儲かるか損するかわからないし、その差は大きくブレる」ということになるから、リターンが高い(=たくさん儲かる)とは言い切れないはずだ。
ところが多くの人は金融機関などから間違った説明を受けてしまった結果、「たくさんリスクを取ればたくさん儲かる」と勘違いをしてしまうことになる。

では「ハイリスク・ハイリターン」の正しい意味は何か。それは「高いリターンを求めると必ずリスクは高くなる」ということである。
別な表現をすれば「大きく儲けようと思うと大きな損も覚悟しなければならない」というごく当たり前の話となる。リスクが高いということは、大きく儲かる可能性があるのと同じぐらい大きく損することもある、ということである。

たくさん儲けたければたくさん損をする可能性も覚悟しなければならないし、損をするのが嫌であればそれほど高い利益を期待することはできない。これは投資においてはごく当たり前のことであり、この原理原則をきちんと理解していないと失敗する。

・・・「ハイリスクはハイリターン・オア・ビッグロス」と言わなきゃいけないかな。

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2021年8月 3日 (火)

公的年金に学ぶ資産運用

本日付日経新聞市況欄コラム「大機小機」(個人の運用、公的年金に学ぼう)からメモする。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7月、2020年度の運用報告書を公表した。個人投資家が参考にすべき内容も多く含まれる。

第1は、報告書が掲げる過去の投資成績を見ると、投資スタンスを長期に構えることの有効性を強く実感させられる点だ。過去20年間を通算した投資収益率は平均3.61%だが、うち13年はプラス、7年はマイナスであった。単年度の投資収益がマイナスであっても、めげずに投資スタンスを貫くことが肝心である。

第2は、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券への均等配分を基本とするオーソドックスな投資戦略を選択していることだ。各資産クラスに25%ずつの配分を基本ポートフォリオに選んでいる。

第3は、投資手法は主にインデックス運用を採用し、銘柄選択で勝負するアクティブ運用は多様を避けていることである。GPIFがインデックス運用を多用しているという事実は、投資手法が明快でコストも安いインデックス投信や上場投資信託(ETF)が、個人投資家にとって利便性が高いことを示唆するものといってもよいであろう。

・・・あまり投資を研究する時間がない人は、長期分散そしてインデックス運用が基本ということだろう。GPIFがインデックス運用を主力とするのは、長期的にアクティブ運用はパッシブ(インデックス)運用に勝てない、というポートフォリオ理論上の実証的ルールもあるからだろう。とはいえ、「個別株投資は趣味としては面白い」(経済評論家の山崎元氏)ので、研究する時間のある人は、インデックス運用プラスアルファの成績を目指して、相場に取り組んでみるのも結構楽しいんじゃないかと思う。

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2021年5月26日 (水)

バブル崩壊のトラウマの無い世代

昨日25日付日経新聞市況面コラム「大機小機」の表題は「トラウマを知らない子供たち」。その昔、「戦争を知らない子供たち」という歌があったなぁ、と思いつつ、以下にメモする。

日本の個人金融資産は2020年末に1948兆円に達し、2000兆円到達も目の前だ。一方、日本の家計の金融資産の54%は現預金、しかも円で保有され、欧米のようにリスク資産に分散された状況と大きく異なる。
しかしこうした状況は、1990年前後のバブル崩壊を機に、資産デフレと円高のダブルパンチが加わった中での必然でもあった。
こうしたバブル崩壊以降の負の体験、いわゆるトラウマが四半世紀近く続いたなか、リスクテイクを行うことを恐れる世代が生じたのも無理もないことだ。

一方、実質的にアベノミクスが始まった12年末以降の8年間の局面で、為替は1ドル70円台から100円台後半の水準に定着し、株式市場も日経平均が1万円割れから2万円台後半の水準に達した。
今日、20歳代の若者は社会人になって以降、アベノミクス相場の資産運用で成功体験しかない。同様に30歳代も金融危機以降に社会人になり、比較的トラウマは少ない。
これらの「トラウマを知らない子供たち」は、それ以前の世代と異なることを認識する必要がある。こうした世代が昨今、ネット証券を中心として口座を急増させているのだ。
トラウマを持たず、かつパソコンやインターネットに囲まれて育った「デジタルネーティブ」の若者世代の台頭が起点となって、日本でも貯蓄から投資への流れが生じていく可能性を秘めている。

・・・90年代バブル崩壊の「トラウマ」。確かに90年代の記憶のある者と、アベノミクス以降しか知らない若い世代とは、株相場に対する世界観はおそらくまるで違うだろう。過去を知らないというのは、それはそれで強みであると捉えることもできる。が、果たして「トラウマを知らない子供たち」は、新しい時代を開くことになるのだろうか。思い出すのは80年代バブル相場初期の株価高騰も、若い世代の機関投資家が主役の「新人類相場」と呼ばれていた。昨今の「デジタルネーティブ」の若い投資家たちも、昨年の「コロナ暴落」からの急回復を経験して、まだまだ意気盛んと思われる。その一方では、老後2000万円必要という意識から、相場変動に負けない長期積立分散投資に地道に取り組む若い人たちも増えているようだ。こういう若い人たちが、貯蓄から投資への流れ、その本流になっていくことが期待される。

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2021年1月 3日 (日)

2021年株式相場の見通し

「日経ヴェリタス」1月3日号、新年最初の特集は、もちろん2021年株式相場の見通し。専門家69人のアンケート回答から今年の日本株相場を占うというもので、以下はメモと感想。

まず今年のテーマは「コロナからの回復」。日経平均の高値安値及び時期の最多予想は、高値が12月の3万~3万1000円、安値は1月の2万5000~2万6000円。株価上昇予想の大前提は、コロナの影響後退に伴う経済活動正常化による企業業績の回復期待、そして金融緩和や財政出動など政策面の支援が引き続き見込めること。リスクとしては、コロナ変異種の感染拡大や、景気急拡大が金利上昇を招く可能性。為替相場はドルが売られやすい地合い。ただし円高と日本株安の連動性は、一時よりも低下しているという。

以上から、日経平均3万円に向けた上昇相場が基本シナリオ。とはいえ、今年の干支である丑年の相場格言は「つまずく」とされる。最近の丑年は、2009年は日経平均のバブル後最安値(7054円)、1997年は山一証券自主廃業ということで、何だか波乱含みの気配もある。

このほか記事は、「景気が回復するにもかかわらず緩和的な金融政策が維持される『いいとこ取り』を見込む声が多い」ことや、「株価予想の根底には『金融緩和の継続でPER(株価収益率)などのバリュエーションが高い状態を維持したまま、業績が回復する』との見立てがある」ことも伝えている。

確かに、低金利環境持続と企業業績回復が共存する(「コロナ・ゴルディロックス」と呼ぶ人もいる)相場に発展する可能性はあるのかもしれないが、一方でコロナと金利の動向という結構微妙なバランスの上に、株式相場は乗っかっているともいえる。また、現状の株価水準からは企業業績の回復期待が強すぎる感もあるため、今後バリュエーションが頭打ちになる可能性もある。つまり実際に企業業績が回復しても、いわゆる材料出尽くし感から株価が上昇しない可能性も、もちろんある。さらに株価の変動幅を考えると、昨年の日経平均は高値と安値の間で1万円以上動いた。つまり上昇にも下降にも相当なエネルギーを使った相場だっただけに、今年は逆に相場変動が小さくなる可能性はある。日経平均3万円とは言っても、現状の株価水準から1割程度の上昇に止まるとも言えるし、今年の相場は基本的に強いとしても、派手な上値追いは期待しない方が良いのだろう。

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2020年12月31日 (木)

株式相場「よもや、よもや」の2020年

2020年の株式相場が終わった。春先よもやのコロナ大暴落、そこからよもやの年末高。大ヒットアニメ「鬼滅の刃」に出てくる鬼狩り剣士、煉獄さんのセリフじゃないけど、まさに「よもや、よもやだ」というほかない激変相場だった。

12月30日大納会の日経平均株価は2万7444円で終了。年間ベースで2年連続上昇し、年末終値としては1989年末3万8915円(史上最高値)以来の高値。今年3月安値と12月高値の差は1万1015円。この値幅も1990年の1万8491円以来、30年ぶりの大きさという。

本日付日経新聞の記事によれば、東証1部上場銘柄のうち上昇したのは4割に止まる。今年は春先のコロナ暴落以降の対処について、投資家は悩ましくも難しい判断を迫られたと思うが、結局は単純に日経平均のインデックスを買っていればオッケーだったという、何とも拍子抜けするような後悔を感じる展開だった。

株価は30年ぶりの水準とはいうものの、本日の日経記事にもあるように、30年間日本株相場を見てきた者には、結局日本株は景気循環の中で上げ下げするだけ、というイメージが拭い難くあるのも確か。さらに今はいわゆる超金融緩和相場ということもあり、景気や企業業績の実態から株価は大きく乖離している、と言われれば否定できない。

そんなことで上昇相場の持続性には懐疑的になってしまうのだが、じゃあ今の日本株はバブルなのかというと、人々の株に対する関心度から見れば、80年代後半バブル当時の財テク(死語)ブームの熱狂からは程遠いとしか言いようがない。当時の日本経済は世界最強という自信に満ち溢れていた。対して今の日本経済は、どっちかといえば衰退イメージが優勢だろう。今の日本株は金融緩和にも支援されて、稼ぐ力のある銘柄の集中買いにより相場全体を引っ張り上げているような感じである。

来年2021年は株価3万円という声もある。金融緩和政策は基本的に続くとして、今年上がらなかった6割の銘柄が、来年どれくらい評価を上げられるか。日経記事にもあるように配当利回りの改善など、とにかく日本株が長期投資の対象となることができれば3万円、さらにはその先の史上最高値の更新も視野に入ってくるのだろう。

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2020年4月15日 (水)

革命的投信に、新型ウイルスの打撃

日経新聞記事「分散投資が効かない 人気ファンドにコロナの誤算」(13日付電子版、14日付朝刊)から以下にメモする。

あるファンドが逆境に立たされている。日興アセットマネジメントが運用する「グローバル3倍3分法ファンド」の基準価格が急落したのだ。
18年10月に設定した3倍3分法ファンドの昨年の資金流入額は5276億円。日本の公募投信の中で実質的にトップだった。
ファンド名の「3倍」は、3倍のレバレッジを効かせるという意味だ。実際は、少ない証拠金で持ち高を増やせる先物取引を活用する。「3分法」は株、不動産(REIT)、債券の3資産への分散投資を指す。株20%、REIT13.3%、債券66.7%の比率に分けた上で3倍のレバレッジをかければ、株60%、REIT40%、債券200%に膨らむ。株とREITで期待リターンを高めながら、債券で全体のリスクを抑える算段だ。レバレッジの仕組みを長期投資のために初めて導入したという意味で、革命的な商品だった。
3倍3分法の売れ行きをみて、他の運用会社も追随。ライバルの設定が相次ぎ、合計の残高は一時1兆円を突破。投信業界の一大勢力に成長した。
そんな順風満帆な運用環境が一気に暗転したのが、新型コロナの感染拡大で米国株が崩れた2月下旬だった。3倍3分法ファンドの基準価格は2月21日から3月19日にかけて37.1%下落した。同期間の下落率が30%程度だった日米の株価指数を超える下落を余儀なくされた背景には、3つの誤算がある。
1つ目は、株と債券価格の逆相関が崩れたことだ。コロナの感染拡大を恐れた世界の投資家が、現金を求めて株も債券も投げ売りしたからだ。期待した株と債券の分散効果は働かなかった。
2つ目は、REITの下落が株以上に大きかったことだ。日米のREIT指数の下落率は40%を超えた。株の下げを相対的にリスクの低いREITで一部相殺するという分散投資のねらいが、ここでも外れた。
3つ目は環境が急変しても資産配分を変えないという「設計」だ。基準価格の値下がりが小幅にとどまったファンドには、環境悪化時に株やREITの組み入れを引き下げて、運用リスクを落とす機動的なリスク管理手法(リスクパリティ戦略)を導入している商品が多い。コロナショックの際は、相場のボラティリティーの上昇を受けて、リスクパリティ戦略を採用する世界の投資家が、リスクを落とすために一斉に株も債券も投げ売ったとみられる。株と債券の分散効果が効かなくなった3倍3分法ファンドは、こうしたリスクパリティ勢のリスク管理のあおりを受けたともいえる。

・・・リスクパリティに従った投資家の動きが資産価格の暴落を招くというのは、「合成の誤謬」(不景気だからといってみんなが節約するとますます不景気になる)みたいな話だな。株もREITも米国債も金も売られて、欲しいのは現金だけという市場では、どんなに工夫された投信でも打撃を免れることは不可能だ。自分も3倍3分法投信は持ってるので、痛感しました。はあ。

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2020年4月 5日 (日)

コロナショック相場の行方

本日発行の「日経ヴェリタス」では、2020年度の株式相場見通しを12人の市場関係者にヒアリング。株式相場混乱の収束時期は「夏までに」「年度末までに」の2つの意見、いわば「早期収束派」と「持久戦派」に分かれたという。

今後、株式相場がいわゆる二番底を付ける見通しでは両者の見方は一致。景気や企業業績など実体経済の悪化を織り込むという想定だ。さらに二番底を付けた後の相場は上向きに転じるというのも共通している。各国の金融・財政政策の効果が徐々に現れてくるというのが、その理由。ただし実体経済及び市場心理の好転を株価が映すパターンについては、両者に差異がある。「持久戦派」は二番底が3月安値(16500円)を下回り、年度中に1月高値(24000円)を超えることはないと見ているのに対し、「早期収束派」は株価が二番底を付けた後、年度中に1月高値を上回る可能性もある、と見ていることだ。

・・・という具合に記事では説明されているのだが、12人のプロが示す株価の安値高値の時期と水準を見ると、

安値の時期は4-6月が最多の10人、7-9月が2人
高値の時期は来年1-3月が最多の8人、10-12月が3人、7-9月が1人
安値は16000円が最多の7人、17000円と15000円が2人ずつ、13800円が1人
高値は25000円から20000円まで分散し、最多は22000円の3人

ということで、イメージとしては、4-6月に16000円台で相場は二番底を付けて底入れ。その後相場は上昇に転じて、来春に今年1月の高値を更新する可能性がある、逆に言えば年内に高値まで戻る可能性は小さい。というのが今のところ、最大公約数的な株式相場のシナリオということになるのだろう。

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2020年3月28日 (土)

「アルゴリズム相場」と向き合う(続)

日経新聞(3/27付)連載記事「科学と心理 市場急変に迫る」から、以下にメモする。

株式相場乱高下の根底にあるのは「人間の恐怖心」
「確かにアルゴリズムのようなコンピューター取引の普及により、売買執行のスピードを速めてしまった部分はあるかもしれない。だが、そもそも機械自体は感情を持たず、『コロナ=売り』という判断はできない。売りたい人がたくさんいる状況で、売りを実現するためのツールとしてアルゴリズム取引がある。株価変動の出発点はあくまで人間心理の悪化だ」(ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント計量運用部長の内山雅浩氏)

売買執行やリスク管理の手法が相場変動拡大につながる場合も
「取引の大半を大手金融機関だけではなく、HFT(高速取引)などの業者が同時にマーケットメークしている。はるかに速く多くの取引を低コストで処理できるため良い面の方が大きいが、日中の値動きが激しすぎる場合はどうしても売りと買いの提示値が開き、変動幅が大きくなりやすくなる」(同)
「リスクを抑えようとするターゲットリスクファンドや、各資産のリスクが均等になるよう分散投資するリスクパリティの台頭も変動を大きくさせ得る。今回のようにリスクが高まり過ぎると、リスクを下げるために株売りの取引を実行せざるを得ない。それが結果的にリスクを高め、また次のアンワインド(巻き戻し)を生むという負のスパイラルが働く」(同)

・・・迅速に価格形成や取引執行する効率的なシステムは平時は良いのだが、ひとたび波乱が起きると恐ろしく破壊的に作用するということを、今回の株価大暴落は示している。

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2020年3月27日 (金)

「アルゴリズム相場」と向き合う

日経新聞(3/25、26付)連載記事「科学と心理 市場急変に迫る」からメモする。

アルゴリズム取引について
「コンピュータプログラムに基づき自動発注するアルゴリズム取引は、世界の株式市場で売買代金の8割程度を占めるとされる。最近は人工知能(AI)に過去の市場データを学習させ、パターンを認識させるやり方が主流だ。株価に、あるパターンが生じた場合、どのような売買をすればもうかる可能性が高いのか瞬時に判断できる」(足立高徳・首都大学東京教授)

HFT(高速取引)業者とは
「HFT業者は、1秒間に数千回の取引を繰り返し、市場のマーケットメーク(値付け)の役割を担っている。市場の売買注文の7割を占めるといわれる」(NTTデータ・フィナンシャル・ソリューションズの城市 泉氏)

アルゴリズム取引のショック反応⇒人間心理増幅による相場の乱高下
「引き金となる出来事が生じた時に、瞬時に反応するHFTのようなアルゴリズム取引が、人間の心理を増幅させた。『ショック→心理の悪化→アルゴリズム取引』という3段階の構造だ」(和泉 潔・東京大学教授)

HFT業者はリスク回避から売買手控え⇒薄商いによる相場の乱高下
「HFT業者は過去の取引データから見つけ出したアノマリー(経験則)をもとに売買注文を出して利ざやを稼ぐ。ただ参考にできるデータは、長くても過去10年程度が限界だ。リーマン・ショックやブラックマンデーなどの過去の暴落時のデータは使えないので、急落してどのように稼げばいいかわからなくなり、リスク回避のために売買注文の減少や停止に踏み切ってしまう」(みずほ証券ヴァイスプレジデントの等々力昌彦氏)

・・・過去のデータにない事態が起きると、アルゴリズム取引は立ち往生してしまう。新たなデータを取り込みパターン認識を修正しながらAIの進化は続くとしても、相場の極端な変動が出現する可能性がゼロになることは当面期待できないだろう。

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