2024年8月 6日 (火)

日経平均、過去最大の上昇幅

日経新聞電子版の本日付記事は伝える。「6日の東京株式市場で日経平均株価が急反発し、前日比の上げ幅は3217円(10%)高の3万4675円で取引を終えた。上昇幅は過去最大となった。」

これまでの株価上昇の最大幅は、1990年10月2日の2676円。1990年は、前年末にいわゆるバブル高値の3万8915円を付けた後に大暴落した年。年明けから株価は下落を続け、10月1日にはザラ場で一時2万円割れ、丸9カ月でほぼ半値になった。10月2日は、政策当局から対策の示唆があり、これが好感されて株価は急反発した。

今年の株価は2月のバブル高値の更新から4万円台乗せ、7月に4万2000円の高値。直後に下落が始まり、8月5日にブラックマンデー時を超える過去最大の下げ幅、翌日の6日は一転して過去最大の上げ幅と、まさに「史上空前の乱高下」。多少他人事みたいに言うなら、まさにドラマだと感じる。

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2024年8月 2日 (金)

「ブラックマンデー」の記憶

日経新聞電子版の本日付記事は伝えている。「2日の東京株式市場で日経平均株価が急落し、終値は2216円(5.8%)安の3万5909円になった。 終値ベースでの日経平均の下げ幅2216円は、ブラックマンデー翌日である1987年10月20日(3836円)に次ぐ歴代2番目の大きさ。」

最初に「史上2番目の下げ幅」と聞いた時に、1番はいつだっけ、そうかブラックマンデーか、と思い出した。もう37年も前の話だ。しかし今でも一日の株価の下げ幅としては、史上最大なのだ。1987年10月19日月曜日にNY市場が508ドル安。当時の株価で2200ドル台から1700ドル台に暴落、これがブラックマンデー。これを受けて翌日10月20日の日本株市場にも売りが殺到し、当時の日経平均で2万5000円台から2万1000円台に暴落した。

当日の取引は、殆ど全ての銘柄が売り気配のまま終了。文字通り相場の「底が抜けた」と感じたのは、後にも先にもあの時だけだ。ところが翌10月21日、個人投資家の注文が大量に入り、相場は約2000円上昇。前日の下げの半分程を戻した。あの頃の日本は本当に強気だった。もう二度とあんな時代は来ないだろう。

日経平均が1989年末のバブル高値を約34年ぶりに更新したのは、今年の2月。半年前のことだ。そして今度は37年前のブラックマンデーの記憶を呼び覚ます株価急落。リタイア間近の証券会社員としては、摩訶不思議な感慨がある。

(8月5日追記)本日の日経平均株価は3万1458円、4451円(12.4%)安で終了。下落率ではブラックマンデー時の14.9%に及ばないとはいえ、下げ幅ではブラックマンデー時を大きく超える歴代1位。半年間でバブル高値更新と、ブラックマンデー級の暴落の両方を見るとは。

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2024年3月31日 (日)

日本株、最高値更新の意味

3月28日付日経新聞コラム記事(株高持続、ドラッカーの教訓)から以下にメモする。

株式市場の歴史から考えるべきことがある。米国最大のバブルは1929年が頂点。そのあとに来たのが大恐慌だ。米ダウ工業株30種平均が次に最高値を取り戻すのが1954年。つまり25年間の月日を費やした。

この54年という年は重要だ。米経営学者ピーター・ドラッカー氏が「現代の経営」を刊行した年に当たる。ゼネラル・エレクトリック(GE)などが取り組んだ経営の分権化を軸に、現代的な管理の重要性を説いた。「マネジメントを発明した」と呼ばれ、米国の企業経営が洗練されていく。「50年代以降の米国の株価上昇は、30年代の大恐慌を経て本当に苦労して米国企業が作り上げた組織革命の成果だ」。米倉誠一郎・一橋大学名誉教授は話す。

50年代は同時に、米国の証券市場も変化していく時期だ。米国の証券史に詳しい日本証券経済研究所の佐賀卓雄名誉研究員は、米国人から繰り返し聞いたフレーズがある。「祖父が大恐慌で株で大損した」
深く記憶に刻まれ、株式には「絶対手を出すな」の世代だ。実際、50年代までの米国の家計は預貯金中心だった。

ただ1世代が入れ替わる歳月が経過し、米企業自身が新たなビジネスモデルで収益力を高めると市場の風景が変わった。持続的な株高局面になるにつれ、「市場に構造変化が起き、時間分散と銘柄分散によって長期的に保有することでリスクを抑えられるとのアイデアが広がっていった」(佐賀氏)。

ゼネラル・モーターズ(GM)が年金基金に自社株を組み入れるなど、それまでは債券中心で安定志向だった年金基金が、50年代から徐々に株式の保有を高め始めた。

市場の価格形成への信頼回復も大きい。バブルとその後の暴落を招いた不正行為を暴き、証券市場制度を整えた。

日本はどうか。もちろん70年前の米国株と簡単に比べられるものではないだろう。ただ日本の株高が持続する条件を照らす手がかりになる。

・・・アメリカ株の最高値更新まで要した時間が25年、日本株はそれを上回る34年。日本のバブル崩壊は、アメリカの大恐慌以上の影響があったのかもしれない。日本株の最高値更新までのプロセスは、会計制度の整備やコーポレートガバナンス改革など、日本企業がグローバル基準に適合していくプロセスであり、今ようやくグローバル投資家から「合格」の評価を得ることができたようである。いずれにしても株高持続のためには、これからも企業組織の改革や証券市場制度の整備を不断に続けていくことが求められるのだろう。

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2024年3月10日 (日)

清原達郎氏の『わが投資術』

20年前の高額納税者トップ、長者番付1位の清原達郎氏。推定年収100億円サラリーマンとして、週刊誌ネタにもなっていた覚えがある。その「伝説の人」が本を出したというから驚いた。自身の投資ファンドの運用終了、引退を機に書いたものという。その著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社発行)から、氏が得意としていた中小型割安株の投資アイデアをメモする。

見るべきは、会社が赤字になろうがなるまいが、同じ値段で売れる資産がどれほどあるか、ということです。それに会社が持っている現金を足して、全負債を差っ引いた数字がキーなのです。それがネットキャッシュです。

ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ/時価総額

ネットキャッシュ比率が1というのは、「会社がただで買えるほど割安」ということです数字が大きいほど割安、ということになります。ネットキャッシュ比率が1なら、お金を借りて時価でその会社の株を全部買うと、借りたお金は、会社にある現金や換金可能な流動資産を売って返済できます。さらにネットキャッシュ比率が1を超えている株式は、「ただで会社をもらった上に現金までもらえる」ということです。

「もし割安株を買って儲からないなら、そもそも割安の定義が間違っていた」ということです。逆に(正確には対偶命題で)言うと、「①割安株に投資すると儲かります」。もちろん、すぐ儲かるかどうかはわかりませんが。

低PERの株は将来の業績予想をするとき、別に増益になる必要がないのです業績横ばいでも、株価が上がる可能性は十分あります。なぜなら、過大な固定資産投資をしなければ、ネットキャッシュが毎年大きく積み上がってくるからです。ある意味、ネットキャッシュ比率が1以上というのは「矛盾」です。だから、正しい「割安」の定義は、「②割安な株の株価が上がらず、割安に放置されたままだと、時間の経過とともに矛盾がさらに大きくなる」ということかもしれません。そして、その矛盾は無限に大きくなることはなく、どこかで解消されていくということなら、①と②の命題は一致します。

我々は、PER、ネットキャッシュ比率で割安である順に銘柄が出てくるよう、スクリーニングを行います。すると、基本ダメな会社順に並んで出てきます。でも、その中に「この会社ってそんなにダメなの? ちょっと調べてみようか」という会社が、何社か出てくるのです。それを一銘柄ずつ会社訪問をし、丹念に調べていこうというのが、我々のやり方でした。

成長の源泉は、オーナー社長のガッツと能力ですから。社長に会って話を聞くのが、一番手っ取り早いですよ。

・・・キャッシュリッチかつ利益も出し続けている企業の株を保有して、企業評価の修正、割安な株価の水準訂正を待つ、というイメージだろうか(ちょっと根気が要るかも)。清原氏が強調するのは、株式投資の才能というものはない、自分の失敗から学ぶしかない、ということ。運用で財を成した人の言葉を肝に銘じよう。

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2024年3月 8日 (金)

市場制度、バブル期とは大違い

日経新聞電子版本日発信のコラム記事「株価4万円、80年代と違う 過熱はあってもバブルではない」(小平龍四郎・編集委員)から、以下にメモする。

「バブルの懸念はないのか」。日経平均株価が史上初の4万円台をつけるに至って、こんな質問を受けるようになった。現状では、バブルの懸念は小さい。

少し歴史をひもとこう。日経平均が初めて1万円を超えたのは1984年1月、2万円が87年1月、3万円は88年12月のことだ。大台乗せを次々にクリアしていった80年代は、日経平均株価の黄金時代といえる。

当時の株式市場は今と比べ、どのような様相だったか。よくあるPERなどの単純比較が本当に有効かどうかは、議論が分かれるところだ。当時の主流は取得原価会計に基づく単体決算、現在は公正価値を重視した連結決算。すなわち、80年代と2024年現在の1株当たり利益や1株当たり純資産(BPS)は成分が異なる。当然、それらに対する株価の倍率も単純に比べることはできない。

指標もさることながら、筆者が注目しているのは株式取引のインフラや規制など市場の制度比較だ。同じ「株式市場」とはいえ、80年代の株式市場は今とは驚くほど質が異なっている。

もう少し歴史をたどる。インサイダー取引規制をきっかけに株式市場の近代化は進み、不透明な株式の買い集めをあぶりだす「5%ルール」も90年12月に導入された。不公正な市場取引に目を光らせる「証券取引等監視委員会」の設立は92年7月。証券会社の収益の源泉だった固定手数料の自由化が加速したのは90年代後半の「金融ビッグバン」から。公正価値(時価)を重視した連結主体の企業決算は、2000年前後からの「会計ビッグバン」のもとで広まった。

インサイダー取引規制、5%ルール、監視委、手数料自由化、時価会計、連結決算・・・。今では当たり前の制度が整い始めたのは、1989年以降のことである。日経平均が1万〜3万円の大台を次々にクリアしていった時代(84〜88年)は、そうした近代的なインフラが整備されていない発展途上国のような市場で株式が取引され、株価が形成されていた。

あらためてふり返ると、バブル期の株式市場には無法地帯が少なからずあり、デタラメもかなりまかり通っていた。バブルにとどめを刺すのは、バリュエーションの高さではなく、見えないところで横行していたいかさまや、不健全な取引だ。そして、崩壊して初めて「あれはバブルだった」と人は気づき、時間の経過とともに事態の深刻さを認識する。1989年末に日経平均株価が当時の最高値3万8915円87銭をつけた時の報道は、同年12月30日付日経新聞1面左下の小さな囲み記事。なんとも象徴的である。

・・・1989年末大納会の株価のバブル高値は、それ程強く記憶に残っていない。今年も高く終わったな、来年は4万5000円だ、くらいの感じだったように思う。それが年明け以降の株価暴落で、長い間「大天井」として意識されることになった次第だ。そしてバブルが崩壊してから、市場の制度があるべき姿に向けて整えられていくという流れになった。今の日経平均4万円は、株価低迷期に整備された市場制度に支えられている。80年代のバブル株価とは違う。

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2024年2月25日 (日)

株価最高値、バブルではない

日経新聞電子版本日発信のコラム記事「株最高値、今回はバブルにあらず 89年と違う企業と個人」(鈴木亮・編集委員)から、メモする。

日経平均株価が22日、1989年に付けた過去最高値の3万8915円を上回った。今の株高は実績に裏付けられた、堅実な上昇だ。日経平均の過去最高値到達は、まだまだ通過点とみていい。

筆者が日本経済新聞に入った1985年4月、まだ日経ダウ平均と呼ばれていた日経平均は、1万2600円台だった。そこから5年、一気に3万8915円まで駆け上がった。最高値を付けた日の大納会、「来年の日経平均は4万5000円ですね」などと明るい展望が語られていた。

今から思えば、89年末はいびつな株高だった。日経平均ベースの予想PER(株価収益率)は62.58倍と今の(22日終値ベース)16.47倍に比べ、大幅に高い。予想1株あたり利益(EPS)は622円と、今の2373円の4分の1程度、予想配当利回りは0.38%と今の1.73%に比べて大きく見劣りする。

高いPERを正当化するため、証券業界はQレシオと呼ばれる投資指標を生み出した。 株価を1株あたりの実質純資産で除したもので、帳簿上の純資産の含み益を加算して算出した。当時の含み資産といえば不動産だ。東京湾周辺に工場跡地など巨大な土地を持つ企業、例えばNKK、川崎製鉄や、東京ガスなどがウォーターフロント銘柄とはやされた。

当時は個人投資家が十分な知識もないまま、株式に資金を投じていた。外国人投資家の参戦は少なかった。買いの主力の一つが企業だった。企業の買いといえば、今なら自社株買いを連想するが、当時は違う。特定金銭信託やファンドトラストと呼ばれる資産運用に、企業は走った。本業の事業利益よりも、運用益の方が大きい企業は珍しくなかった。

翻って、今の株式相場は89年当時とは、何から何まで違う。62倍台のPERは16倍台と大幅に低下した。配当利回りは4.6倍になり、時価総額は606兆円から932兆円に増えた。当時の株高要因の一つが、株式の持ち合いだった。お互いに安定株主として保有し、決して売却しない。銀行は取引先企業と株式を持ち合い、大手生保は保険の大口法人顧客となる企業の株式を保有した。今は持ち合い構造がどんどん見直されている。

企業は今、自社株買いなどの株主還元や、大型M&A(合併・買収)などの成長戦略に資金を使い始めた。大幅な賃上げは続きそうだし、企業業績は3期連続で過去最高益を更新する。こうした改革を評価する外国人投資家が日本株を買っている。

今年に入って、新たな少額投資非課税制度(NISA)を通じ、6000億円もの新規資金が日本株市場に流れ始めた。コツコツと積み立てNISAで将来に備える今の個人は、何の知識もないまま、儲かりそうだからと、株を買っていたバブル時代の個人とは大違いだ。89年当時のバブルに比べたら、今はバブルとは呼べない、地に足がついた堅実な株高だ。これが日経平均3万8915円は通過点だと考える最大の根拠だ。

・・・鈴木編集委員は「株屋さん?」という感じの記者で、いつも強気の人です(笑)。バブル期は野村證券の存在感が圧倒的で、「ウォーターフロント」のほか「トリプルメリット」(円高・低金利・原油安)「債権大国」「内需拡大」などの言葉も使って、壮大なシナリオ相場を展開していた。企業や個人もそれに乗って、こぞって「財テク」に励んでいたわけです。その一方で、高PERを説明するのには四苦八苦していて、「Qレシオ」のほか、持ち合い株数を除いて(分母を小さくする)PERを試算するとか、また当時は単体決算で見ていたので、一株利益が小さかったことも、高いPERの理由だったような。今は225銘柄ベースで純利益が4倍に、PERは4分の1になったわけだから、とにかく指標からはバブルではないと言えるだろうと。

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2024年2月21日 (水)

株価最高値へ、日本企業の変貌

本日付日経新聞オピニオン面コラム記事「株価最高値は変革の出発点」(小平龍四郎・上級論説委員)からメモする。

「経営者自身がROI(投資収益率)や資本コストに対する認識を高めるとともに、(中略)ROE(自己資本利益率)やDOE(株主資本配当率)の向上を第一義的に考え、経営の根幹に据えていくことが重要であると考えられる」
93年7月、証券団体協議会という証券業界のシンクタンクが発表した「コーポレート・ガバナンスのあるべき姿」。だれの目にも株価低迷が明らかになっていた時期に、資本市場の活性化を提言した。昨年来、東京証券取引所が企業に「資本コストや株価を意識した経営」を求めている内容と驚くほど似ている。

30余年の歳月を経て二重写しになる提言・要請は、この国の企業と市場に求められてきた課題が、ずっと変わっていなかったことを雄弁に語る。すなわち、株主と向き合い対話する経営だ。

この30余年、日本の株式市場で劇的に変わったのは株主構成だ。90年度に計31%だった銀行や生損保の比率が2022年度には6%に急減。事業法人も30%から19%に減った。持ち合いの解消が進んだ結果だ。一方、外国人は4%から30%に急増した。

「ニッポン株式会社」の大株主の顔ぶれの変化は、含み益経営や単体決算、生え抜き男性だけで構成する取締役会など、日本固有の会計・ガバナンスに見直しを迫った。連結ベースの時価会計や、外部の視点を取り入れる経営改革を企業が積み上げた結果が、株価の最高値更新だ。しかし、企業価値の向上に向けた変革の競争はここから始まる。現状はスタートラインにすぎない。

・・・思えば、バブルが崩壊した90年代は、日本経済システムや日本的経営の見直しが盛んに議論された時代だった。日本経済の基本的課題は、当時議論し尽くされたと言ってよい。しかし90年代は政策的には、不良債権処理と財政出動に明け暮れて終わり、官民が実際に日本経済を改革する施策を進め始めたのは21世紀に入ってから、小泉構造改革以降のことになる。その辺りから数えても、20年余りかけて、日本の経済と企業は課題解決に向けて自らを改造してきており、その結果が最高値目前の株価ということになるのだろう。

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2024年2月17日 (土)

投資を通じて現実を知る

転換の時代を生き抜く投資の教科書』(日経BP社)は、売出し中の経済ジャーナリスト後藤達也氏の新刊。投資の意義について述べている部分からメモする。

私は、投資は誰にとっても意義のあることだと思います。投資の世界を知ることは、これからの社会を生きていくうえで欠かせない教養・センスだといっても過言ではありません。

投資を通じて得られるのは「おカネを増やす」ということだけではありません。
いざ投資を始めると、経済や企業ニュースはもとより、政治、社会、テクノロジー、海外、自然災害・・・あらゆるものへの関心が飛躍的に高まります。
少額であれ、「なぜ株価は上がったり下がったりするのか」という意識が少しでもあれば、あらゆるニュースが自分事として頭に入ってくるようになります。

建前のないガチンコの世界で、株価は日々動いています。その動きを見て、ときにおカネを投じることで、経済のダイナミズムの理解が急速に進みます。その知識やセンスは、ビジネスパーソンとしての日々の働く姿勢にも役に立ちます

株式市場は「森羅万象を映す」といわれます。このため、「株価はなぜ動くのか」という説明も非常に複雑で難しいものです。
大切なことは基本的な視座を持ちつつ、さまざまな角度から柔軟に経済ニュースに接していくことです。

・・・自分も株投資を始めた頃は、いわゆるバブルの活況相場だったこともあり、日々のあらゆるニュースが「株価材料」に見えてきて、ひどく刺激的だったことを思い出す。まさに株相場は「森羅万象を映す」のだと。さすがに今は、そこまでは言わないけれど、それでも実際に投資をすることで、学んだことや見えてきたことはとても多かった。

振り返ればバブルの頃から、経済、特に金融資本市場を通して現実を認識することが、何事にも肝心になったと思う。当時、石ノ森章太郎の『マンガ日本経済入門』という本が出たのを見て、そうか今は、マンガでも何でもいいから、とにかく経済を知らなければいけない時代なんだと、強く感じたことを覚えている。あの頃から、経済学的に、とまでは言わないが、経済的に物事を見ることが、世界認識の基本的な方法になったのだ。

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2024年1月28日 (日)

日本株、長期保有資産に

どうも90年代のバブル崩壊が染み付いた自分の頭では、株相場の上昇は長持ちしないものと思っていたのだが、この10年余りを振り返ると、いわゆるアベノミクス以降の株相場は大勢上昇基調が続いているのだなあ。昨日27日付日経新聞記事(日本株、長期保有が肝心)からメモする。

個人には日本株への根強い不信感がある。1989年末からの長期低迷、人口減による低成長、米国に比べ低い企業収益率などが背景だ。このため多くの個人は相場が下がれば買い、少し上がれば売る投資姿勢を続けている。

確かに日本株は89年末以降、高値を回復していない。しかしこの全期間を「失われた34年」とひとまとめにみると判断を誤る。日本株は十数年前から、長期保有で報われる資産に変わってきているからだ。

株価水準を判断する代表的な指標として、株価収益率(PER)がある。「株価÷予想1株利益(EPS)」で計算し、長期間でみた国際的なPERの妥当水準は14~16倍との見方が多い。式は「株価=PER×EPS」と変形できる。EPSに14~16倍をかけた範囲を株価の適正水準とみると、89年末は1万円前後。だが当時の日経平均は4万円弱で適正水準の約4倍に達していた。「この超割高な水準の修正に長い時間がかかったのが日本株低迷の主な要因で、適正水準に戻ったのは2010~12年前後」とニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は話す。

過去十数年は利益増を反映して、株主の持ち分である1株純資産(BPS)の増加ピッチが高まっている。株価をBPSで割った指標が株価純資産倍率(PBR)で、PBRは「ROE×PER」という式に分解できる。日本企業のROEは足元では約9%だ。PERを15倍として9%を掛けると現在の妥当PBRは約1.35倍となる。PBRは「株価÷BPS」なので「株価=PBR×BPS」と変形できる。足元のBPSは約2万6000円なので、適正株価は約3万5000円となる。同じ計算でPERを16倍とすると妥当PBRは1.44倍、株価は3万7000円強だ。やはり現在の株価は計算上の上限に近いが、割高過ぎるとまでは言えない。

新年に入っても、個人は日本株を大幅に売り越している。短期的な収益が目的なら、利益確定の売却は正しい選択肢。しかし井出氏は「目標が数十年後の資産形成で、利益増と経営効率改善を背景に日本株も上昇期待があると考えるなら、目先の割高感があっても売る必要はない」と助言する。

・・・バブル期のPER50~60倍については、企業の保有土地の含み益を勘定に入れるとか、持ち合い株式を除いた株数で計算する等、説明に四苦八苦していた覚えがある。当時は単体決算で株価も評価していたという要因もあるだろう。とにかく、過去10数年はEPSとBPSの増加、PERの低下によりバブルではない株価上昇が続いてきたということで、頭を切り替えないといけないのかなあと思えてきた。

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2023年12月25日 (月)

新NISA、「オルカン」投信が人気

日経新聞昨日24日付記事「新NISA好調、月2300億円予約」からメモする。

2024年1月に始まる新NISA(少額投資非課税制度)で、毎月定額で投資信託を購入する積み立て設定の事前予約額が、少なくとも2000億円規模にのぼることが分かった。

SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブコム証券のネット証券大手5社に20日までの新NISAでの投信積み立て申し込み状況を聞き取りした。5社は現行NISA口座で証券会社の6割強のシェアを持つ。

5社合計の積み立て投資の予約額は月間2300億円。積み立て設定で購入予約している個別銘柄をみると、世界株や米国株に投資する投信に人気が集中している。首位は三菱UFJアセットマネジメントが運用する販売手数料ゼロ(ノーロード)の投信「eMAXIS(イーマクシス)Slim 全世界株式(オール・カントリー)」となった。

・・・記事によると、積み立て投信の月間予約額は1位イーマクシスの全世界株式が725億円、2位も同じイーマクシスの米国株式が605億円で「2強」となっている模様。インデックスファンドは機械的な積み立て運用に向いている金融商品とされるが、その中でも「オール・カントリー」、いわゆる「オルカン」が人気を集めているのは、「ほったらかし投資」を説く経済評論家、山崎元氏の影響も大きいんだろうなあと思う。「週刊ダイヤモンド」新年合併特大号の「新NISA徹底活用術」記事の中でも、山崎氏は「つみたて投資枠も成長投資枠も、『オルカン』1本が正しい運用」であると言い切り、「個人の属性、資金使途、運用期間の長短が違っていても、運用は最も効率的な一つの方法かつ商品、すなわちオルカンでやるといい。無駄なことを考えずに人生を楽しむことに集中しましょう」と提言している。

ところで(つい最近知ったことだが)、山崎氏は食道がんの患者である。自分と一歳違いの人のがん闘病は、かなり気がかりではあるのだが、自分も人生を楽しむことに集中しようかと思う。

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