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2024年8月21日 (水)

岸田首相の大胆不敵

本日付日経新聞オピニオン面、フィナンシャルタイムズのコラム(岸田首相、「大胆さ」の遺産)からメモする。

岸田氏の時代は、その任期の短さと不人気ぶりから、あっという間に人々の記憶から消え去ってしまうかもしれない。しかし、同氏は1980年代のバブル期以来、間違いなく日本にとって最も大きな変化をもたらした3年間を導いた。

岸田氏と緊密に仕事をした人々は、同氏は主義主張に縛られない人物として驚くほど大胆不敵だったと評している。ある政府高官は、多くの首相ができなかったにもかかわらず、岸田氏は財務省を説得しての減税を実現させたと指摘している。

おそらく、岸田氏の大胆さが顕著に表れたのは、外交と防衛の分野だった。防衛予算の国内総生産(GDP)に占める割合を倍増させたことは、その規模だけでなく、国民の反発がなかったという点でも、注目すべき政治的偉業だった。世界における日本の立場は歴史的な変化を遂げた。欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)との関係強化をより積極的に進め、以前はぎくしゃくしていた韓国との関係改善にも貢献した。

退任する岸田氏に対する辛辣な批判は多く、彼を「フォレスト・ガンプ」(編集注、ウィンストン・グルーム作の小説の主人公の名前。米国の激動の時代を駆け抜けた誠実な男として描かれた)のような人物として表現したがるかもしれない。つまり、歴史上の偉大な瞬間に、才能や策略ではなく偶然によって主導権を握ったような単純で控えめな参加者ということだ。

しかし、それでは岸田氏の功績を大いに過小評価することになる。後継者が日本の現在の勢いを維持できなければ、その代償は大きなものとなるだろう。

・・・岸田氏が外相を務めた安倍政権では、むしろ安倍首相が外交で前面に出ていた印象があり、むしろ首相になってから岸田氏は広島サミットなど外交的成果を挙げたと言えるのも面白いところだ。

ネット民から「増税メガネ」と揶揄されたりした岸田首相だが、むしろ減税を(無理矢理?)実行し、防衛政策や少子化対策でも財源を明確にしなかったなど、結構ポピュリズム的政治家にも見える。証券業界に身を置く者から見ると、やはり個人向けの投資「減税」政策とも言える新NISAの導入は、非常に大きな業績に思えるのだなあ。岸田さんが任命した植田・日銀総裁も、前任者の「異次元緩和」の修正(後始末?)に踏み出したし、岸田時代は後から振り返ると、かなり大きな転換点だったと評価されるかもしれない。

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