ウクライナの「バルジ大作戦」
最近、ウクライナがロシアのクルスク州に攻め込んでいる。というニュースを聞くと、往年の戦車ファン、プラモ好きは、どうしてもクルスク戦車戦を思い出してしまう。1943年7月に起きたクルスクの戦いは、独ソ戦のハイライトの一つだ。旧ソ連映画「ヨーロッパの解放」で「再現」された、ティーガ―戦車とT34戦車の対決を覚えている人も多いと思う。
現在のウクライナのハルキウ(ハリコフ)とロシアのクルスクは、1943年春から夏にかけて、独ソ両軍が取ったり取られたりの攻防を繰り広げた激戦地だった。その80年後に同じ大地で、旧ソ連の国同士だったウクライナとロシアが戦っている。現実とは思えないような現実だ。
今回のクルスク攻撃は、いわばウクライナの「バルジ大作戦」みたいな感じがする。「バルジ大作戦」は、ドイツ軍最後の反撃と言われる1944年末のアルデンヌ攻勢を描いた映画で、やはり戦車が大量に登場する。この戦いでは、ドイツ軍が米英軍の不意を突いて大打撃を与えて、有利な講和条件を引き出そうとする。実際、今のウクライナも国境線からロシア側にはみ出す形の突出部(バルジ)を作り、停戦交渉の材料にすることを目論んでいるようだ。そんな感じでクルスクとアルデンヌを重ねて、外野にいる自分は面白がって見ている。
このまま戦線の拡大が続くと、ロシアが国内受けに「特別軍事作戦」とか「対テロ作戦」とか、いつまで言い続けられるのか怪しくなってくる。しかし、これをひとたび国家同士の「戦争」であると認めてしまうと、ロシア国内の動揺も目に見えて大きくなるだろう。
ウクライナもクルスク州侵入が成功したとはいえ、勝利の道筋が見えているわけでもないだろう。当面は兵力を効率的に使って、敵に打撃を与え続けるしかないように見える。
今のところ、戦争の終わりがいつ見えるのか見当もつかない。リーダーのどちらかが暗殺でもされない限り、終わるきっかけすらつかめないような気がする。
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