株価最高値へ、日本企業の変貌
本日付日経新聞オピニオン面コラム記事「株価最高値は変革の出発点」(小平龍四郎・上級論説委員)からメモする。
「経営者自身がROI(投資収益率)や資本コストに対する認識を高めるとともに、(中略)ROE(自己資本利益率)やDOE(株主資本配当率)の向上を第一義的に考え、経営の根幹に据えていくことが重要であると考えられる」
93年7月、証券団体協議会という証券業界のシンクタンクが発表した「コーポレート・ガバナンスのあるべき姿」。だれの目にも株価低迷が明らかになっていた時期に、資本市場の活性化を提言した。昨年来、東京証券取引所が企業に「資本コストや株価を意識した経営」を求めている内容と驚くほど似ている。
30余年の歳月を経て二重写しになる提言・要請は、この国の企業と市場に求められてきた課題が、ずっと変わっていなかったことを雄弁に語る。すなわち、株主と向き合い対話する経営だ。
この30余年、日本の株式市場で劇的に変わったのは株主構成だ。90年度に計31%だった銀行や生損保の比率が2022年度には6%に急減。事業法人も30%から19%に減った。持ち合いの解消が進んだ結果だ。一方、外国人は4%から30%に急増した。
「ニッポン株式会社」の大株主の顔ぶれの変化は、含み益経営や単体決算、生え抜き男性だけで構成する取締役会など、日本固有の会計・ガバナンスに見直しを迫った。連結ベースの時価会計や、外部の視点を取り入れる経営改革を企業が積み上げた結果が、株価の最高値更新だ。しかし、企業価値の向上に向けた変革の競争はここから始まる。現状はスタートラインにすぎない。
・・・思えば、バブルが崩壊した90年代は、日本経済システムや日本的経営の見直しが盛んに議論された時代だった。日本経済の基本的課題は、当時議論し尽くされたと言ってよい。しかし90年代は政策的には、不良債権処理と財政出動に明け暮れて終わり、官民が実際に日本経済を改革する施策を進め始めたのは21世紀に入ってから、小泉構造改革以降のことになる。その辺りから数えても、20年余りかけて、日本の経済と企業は課題解決に向けて自らを改造してきており、その結果が最高値目前の株価ということになるのだろう。
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