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2024年2月 4日 (日)

黒田日銀の10年

ドキュメント異次元緩和』(西野智彦・著、岩波新書)は、副題「10年間の全記録」の通り、黒田東彦総裁時代の日銀(2013年~2023年)が実行した「異次元緩和」と呼ばれる金融政策の動きを振り返った本。綿密な取材を基に、異次元緩和の舞台裏を、ドラマのように浮かび上がらせる。

黒田日銀は、2012年末の総選挙で勝利した自民党の政権復帰に始まる。大規模金融緩和実行を掲げて総理大臣となった安倍晋三は翌年2月、日銀の新総裁に財務省出身の黒田東彦を指名。この本によると、安倍総理は野党時代に経済学者の岩田規久男の本で勉強したらしい。振り返れば、第1次政権の時は「美しい国、ニッポン」とか何かズレてること言ってた安倍総理が、第2次政権では経済政策を前面に打ち出したのは、かなり意外な感じがした。そして岩田先生という日銀に対する徹底的な批判者が、黒田日銀の副総裁となったのも驚きだった。

こうしてデフレ脱却を目指す黒田日銀の下で、2013年の春から、桁外れの量的緩和により2年で2%の物価上昇を掲げる異次元緩和が開始されたわけだが、確かに開始当初のインパクトは誠に大きかった。しかし時間の経過と共に「神通力」が薄れて、2年で2%の物価目標も達成できず、開始から3年後の2016年にはマイナス金利、さらに長短金利操作(YCC)を導入。政策的にはここで弾が尽きて、異次元緩和は「持久戦」に入った。

この本を読んで認識したのは、異次元緩和の具体的な戦術を考えた政策立案者は、企画担当の雨宮正佳理事(後に副総裁)であるということ。黒田総裁はむしろ国際金融の場で存在感を発揮していたようだ。

2018年に黒田総裁は再任されたが、黒田日銀の後半戦は異次元緩和の調整、微修正に止まり、金融政策の大きな方向転換はないまま終わった。任期終了直前には、物価は上がらないという「ノルム」(社会規範)が強かった云々と、言い訳じみた説明をしてるようにも聞こえたな。

異次元緩和は、2%物価上昇という一番の政策目標が達成できず失敗だった、と言えるのかもしれないが、証券会社に勤める者としては、黒田日銀10年の株価は大勢上昇相場だったため、基本的に成功だったと思います。(笑)

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