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2023年12月31日 (日)

家族の維持という「任務」

映画「SPY×FAMILY」を観た。テレビアニメ(マンガ原作・遠藤達哉)放映中作品の「劇場版」であり、ストーリーもスピンオフ的な映画用オリジナル。

このマンガの基本設定は、スパイのロイドと殺し屋のヨル、そして人の心が読める超能力者アーニャが自分の正体を隠すため、それぞれ「父」「母」「娘」として、世を忍ぶ仮初めの家族を作り生活するというもの。特にロイドにとってフォージャー家は、自分のミッションを達成するために必要不可欠な、何が何でも維持するべき「家族」。映画の前半はフォージャー家の「家族旅行」という感じで割と穏やかに進んでいくが、後半になると怒涛の急展開。アクションとスペクタクル満載、ロイドさんもヨルさんも超人的な能力を発揮する大活劇になっていて、さすがに映画だわーと感心した。しかし、こんな突拍子もない非日常的な経験をした夫婦なら、お互いただ者ではないと気づきそうなものだが。(笑)

この人気マンガについて評論家の宇野常寛は、「全力で家族を演じ、維持しなければいけない」という物語が支持されているのは、多くの人にとって、「戦後的な核家族の幸福のフォーマット」が、「渇望しているけれど手に入らない憧憬の対象になっているからではないか」(『2020年代の想像力』ハヤカワ新書)と評しているのだが、ちょっと考え過ぎかなという感じもする。

昔だったらこのマンガは、父であるロイドさんだけが自分の正体がバレないように、ジタバタする設定になるのではないか。それが父母娘の3人ともジタバタするのが、今風だなと思えるところだ。なので「核家族の幸福」にフォーカスしてるとは思えなくて、やはり家族全員が特殊な人物でありながら、普通の家族を結構一杯一杯で演じている、というのが共感を呼ぶポイントではないか。つまり今は誰もが、家族の一員を演じているという意識を、多かれ少なかれ持っているのだと思う。それは言い換えれば、個人の中に家族というものに対する距離感が多かれ少なかれあり、そこから家族を機能させるためには演じることが必要だという意識が生まれる、ということなのだろう。あるいは今の多くの人にとって、家族を維持するのは「任務」になっている、ということなのかもしれない。

さて、最終的にロイドさんのミッションが達成されて完了した時、フォージャー家はどうなるのだろうか。目標を達成したから「解散」となるのか、それとも仲良し家族として「継続」していくのか。まあミッション達成まで、まだまだ先は長いと思うけど。

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2023年12月29日 (金)

『構造と力』40年後の文庫化

1983年の刊行から40年を経て、『構造と力』(浅田彰・著、勁草書房刊)が文庫化(中公文庫)された。哲学者・千葉雅也の解説文からメモする。

大きな図式を把握すれば、ひとまず、この本を読んだと言える。その大きな図式は、「本体部分+α」という形で捉えられる。本体部分は「近代の構造」であり、+αは「ポストモダン論」である。『構造と力』は、「近代(モダン)とは何かを論じた上で、そのリミットとしてポストモダンの可能性を示唆した本」だと言える。

近代とは、資本制(資本主義)が全面化へと向かう時代であり、経済は流動性を増して、事物と第三者=貨幣の変換が加速する。このことを論じる際、背景には、岩井克人の不均衡動学、および柄谷行人のマルクス論がある。そこに、「脱コード化」というドゥルーズ=ガタリの概念が導入される。そして、近代的脱コード化のただなかにおける別の可能性として、ポストモダン的なあり方を素描する。そこで、ドゥルーズ=ガタリが提案した「リゾーム」という概念を用いる。リゾームとは、二元論的にではなく、多方向に展開する関係性を言うための概念である。

議論の展開を骨組みだけで捉えてみよう。(1)内部に対し、第三者が位置する外部がある。(2)次に近代の段階となり、内部/外部が脱構築されて循環する。さらに「リゾーム」的見方を導入し、(3)内部/外部の大きなペアを立てることなくして、いたるところが外部だらけだ、という描像を採用する。この外部性のことを本書では「力」と言っている。異質な力が、互いに「外部同士」として交錯する。

二元的な構造とその脱構築(すなわち、構造主義のリミット)を説明した上で、複数的な力の場を考えるーーゆえに、本書は「構造と力」と題されている。

・・・『構造と力』は、「ポストモダン」とか「ポスト構造主義」という思想を解説した本というよりも、「資本主義社会」を論じた本であるように思う。80年代半ばの、いわゆる「ニューアカ」ブームが過ぎ去っても、『構造と力』が読まれ続けた理由は、そこに求められるのではないだろうか。

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2023年12月25日 (月)

新NISA、「オルカン」投信が人気

日経新聞昨日24日付記事「新NISA好調、月2300億円予約」からメモする。

2024年1月に始まる新NISA(少額投資非課税制度)で、毎月定額で投資信託を購入する積み立て設定の事前予約額が、少なくとも2000億円規模にのぼることが分かった。

SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブコム証券のネット証券大手5社に20日までの新NISAでの投信積み立て申し込み状況を聞き取りした。5社は現行NISA口座で証券会社の6割強のシェアを持つ。

5社合計の積み立て投資の予約額は月間2300億円。積み立て設定で購入予約している個別銘柄をみると、世界株や米国株に投資する投信に人気が集中している。首位は三菱UFJアセットマネジメントが運用する販売手数料ゼロ(ノーロード)の投信「eMAXIS(イーマクシス)Slim 全世界株式(オール・カントリー)」となった。

・・・記事によると、積み立て投信の月間予約額は1位イーマクシスの全世界株式が725億円、2位も同じイーマクシスの米国株式が605億円で「2強」となっている模様。インデックスファンドは機械的な積み立て運用に向いている金融商品とされるが、その中でも「オール・カントリー」、いわゆる「オルカン」が人気を集めているのは、「ほったらかし投資」を説く経済評論家、山崎元氏の影響も大きいんだろうなあと思う。「週刊ダイヤモンド」新年合併特大号の「新NISA徹底活用術」記事の中でも、山崎氏は「つみたて投資枠も成長投資枠も、『オルカン』1本が正しい運用」であると言い切り、「個人の属性、資金使途、運用期間の長短が違っていても、運用は最も効率的な一つの方法かつ商品、すなわちオルカンでやるといい。無駄なことを考えずに人生を楽しむことに集中しましょう」と提言している。

ところで(つい最近知ったことだが)、山崎氏は食道がんの患者である。自分と一歳違いの人のがん闘病は、かなり気がかりではあるのだが、自分も人生を楽しむことに集中しようかと思う。

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2023年12月24日 (日)

メリーメリークリスマス

先日、博多に行った時、JR駅前でクリスマスマーケットやってました。でっかいツリー型電飾も輝いてました。メリークリスマス!(12月9日撮影)

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2023年12月23日 (土)

象徴天皇制の行方は

日経新聞電子版22日発信の編集委員コラム記事「象徴天皇が傷つけられていく」から、以下にメモする。

天皇は日本国憲法第1条で「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」とされている。ただ、国事行為以外に象徴としての具体的役割は明記されていない。立憲時の本旨としては、天皇に象徴としての能動的役割を期待せず、その権威を軍部に悪用された戦前の反省から、天皇を政治権力の手の届かない場所に隔離する狙いがあった。しかし、天皇も人間であり、国事行為以外は皇居の中で蟄居(ちっきょ)し続けるわけにはいかなかった。全国各地への行幸や式典への出席など、憲法と法律が定めていない活動が増えていった。

そこで案出されたのが「象徴としての公的行為」という概念だった。あとづけだったが、天皇の様々な活動を象徴的行為として正当化できた。ただ、昭和天皇は戦争責任問題もあったことから活動は抑制的で、象徴的行為が深く論じられることはなかった。平成時代に天皇の活動領域が大幅に拡大されたことから、「象徴の活動とは何か」が本格的に注目されるようになった。

上皇さまが上皇后さまとともに実践した象徴の活動は、昭和から一変した意味を込めて「平成流」と呼ばれた。その内容をキーワードで列挙すると、「社会的弱者」「自然災害」「戦没者」「沖縄」「情報発信」「全国への旅」だろうか。

上皇さまは、上皇后さまの伴走を得て、その内容が憲法、法律では何ら規定されていない「象徴のあり方」を創設したのだ。この「あり方」は多くの国民に支持され、他者の境遇、とくに社会の片隅に置かれた人々の存在への気づきを与えた。ある意味、日本人の精神性を高める活動だったといっても過言ではない。

一昨年末、政府の有識者会議が皇族数の減少に対処するため、女性皇族が結婚後も皇室に残る案と旧皇族の血統にある男系男子を養子にする案を併記した報告書をまとめた。岸田文雄首相は今年10月の所信表明演説で、皇位継承と皇族数の減少は「国の基本に関わる重要な課題」と言及し、11月に自民党内に総裁直属機関として「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」が設置された。

気にかかるのは、これまで政府や自民党から「皇室のあり方と皇位継承は国の根幹」という声はあるものの、「あり方」について具体的な意見、考えがほとんど述べられていないことだ。

「象徴天皇はかくあるもの」「平成で築かれた『あり方』のここを尊重し、継承していくべき」といった理念が聞こえてこない。 

平成の30年間、国と国民のため献身した営為について、為政者が深く考察せず、紋切り型の表層的な天皇観で制度を見ているとしたら、これほど傷つくことはないだろう。

象徴天皇という制度は、すでに満身創痍なのかもしれない。

・・・おそらく今、象徴天皇のあり方をまじめに考えている日本人を見つけるのは、ひどく難しいと思われる。いわゆる保守派の人々も、天皇家の「存続」だけしか頭の中にないだろうし。そもそも、天皇は「国民統合の象徴」であると言われても、自分は正直「はあ?」という感じである。結局、象徴天皇制も「戦後」という時代と分かち難く結びついた歴史的産物である、と考えるほかないように思う。

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2023年12月17日 (日)

黒田長興(秋月藩初代藩主)

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先日、秋月城下町(福岡県朝倉市)を訪れた際、当地にある秋月博物館で「藩祖黒田長興」展を見学した。黒田長興は、黒田長政の三男。黒田孝高(官兵衛)の孫である。以下、展覧会図録の解説文からメモする。

元和九年(1623)、戦国時代を駆け抜けた福岡藩初代藩主黒田長政が没する。生前、言動や素行に問題があった嫡男忠之の将来を案じた長政は、優秀の誉れが高い三男の長興に跡を託したいと考えるが、家老達の反対に合い断念した。

しかし、長興の才を惜しんだ長政は、死に際して秋月を含む下座郡、夜須郡、嘉麻郡の内五万石を与え、福岡藩支藩とすることを遺言する。元和九年(1623)、この遺言に基づき、秋月藩が成立した。

長興は、幕府から独立した藩として認めてもらうために、将軍拝謁を目論んだ。長興を家臣として遇し、福岡藩の一部としたい忠之から妨害を受けたが、寛永三年(1626)に前将軍の台徳院(秀忠)に拝謁し、朝廷から従五位下甲斐守に任じられる。その後も江戸幕府に忠勤を尽くし、寛永十一年(1634)に本領安堵の朱印状を得て、独立藩としての地位を固めた。

寛永十四年(1637)10月、島原・天草一揆(島原の乱)勃発。翌年1月、一揆軍が立て籠る原城攻撃のため、秋月藩は福岡藩と共に出陣。2月の幕府軍総攻撃で秋月藩も奮戦、原城を攻め落とした。

大坂城や江戸城天守台の普請、朝鮮通信使饗応、長崎警備など、幕府に貢献する働きを続けた長興は、寛文五年(1665)に数え年56歳で死去。

・・・福岡藩主となった早々、忠之は家老と対立し、お家騒動に発展。長政の遺言により、長興を藩主とする秋月藩が作られたのも、長政の先を見通す力の現れだったのだろう。

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2023年12月16日 (土)

秋月城下町

先日、秋月城下町(福岡県朝倉市)を訪れた。博多からJRで基山へ、そこから甘木鉄道に乗り換えて終点の甘木まで乗り、甘木駅からはバスを使って20分くらい。博多駅から、所要時間1時間半程で当地に着く。

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上の写真は黒門(県指定有形文化財)、紅葉は殆ど落ちちゃってました。(12月9日撮影、以下同じ)
下の写真は順に旧田代家住宅(市指定有形文化財)、石田家住宅(県指定有形文化財)、町並みの眺め。国の重要伝統的建造物群保存地区だそうだが、電線地中化を実行してもらいたいね。

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2023年12月 4日 (月)

大刀洗で「震電」を見る。

先日、福岡県の大刀洗(たちあらい)平和祈念館を訪ねた。ここに展示されている「震電」の実物大模型が、映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」で使われたものと聞いたので、行ってみた次第。

「震電」は、終戦間際にほぼ完成していた幻の戦闘機。映画では、主人公が乗り込んでゴジラに立ち向かう。

実は自分は、飛行機にはそれ程魅力を感じない。どっちかというと戦車や軍艦の方が好き。映画でゴジラと戦った大型軍艦は重巡・高雄。あのゴツい艦橋は戦艦並みに映える感じ。それから、やはり幻の戦車、四式戦車もミニチュアでチラッと出ていた。これもできれば実物大模型で出して欲しかったけど、まあ戦車なんかゴジラに簡単にやられちゃうので、あんまりお金かけられないのだろうなあ。

自分は、大刀洗というところをまるで知らなかった。なので「震電」をきっかけに、知らないところにある平和祈念館に、とにかく行ってみようと思った。かつて大刀洗には、日本陸軍の広大な飛行場と飛行学校があったのだが、昭和20年3月の空襲(東京大空襲と同じ月)で壊滅したとのこと。

博多からJRで30分くらいの基山駅まで行き、そこから甘木鉄道に乗り換えて20分くらいで大刀洗駅に着く。駅を出ればもう目の前、通りを一本隔てたところに平和記念館がある。

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館内に入り、「震電」実物大模型の前に立つ。一人乗りでも、飛行機って結構大きいなと単純に思う。

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プロペラが機体最後尾に付いていて、大きい主翼も機体の後部に付いてる。普通のプロペラ機と逆になっている特異な形状。B29爆撃機を迎撃する戦闘機として開発され、試験飛行に成功したところで終戦を迎えた。現存している1機は、アメリカにあるという。

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この公設(筑前町立)の記念館は2009年に開館した。しかし、それ以前から私設の記念館があり、それは大刀洗駅の駅舎を利用した建物(下の写真)だったとのこと。建物に着陸?している飛行機は、自衛隊の練習機だそうです。今はレトロ物品の展示館とのことだが、有料だったので中には入らなかった。(苦笑)

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しかしまあ、そもそも新作ゴジラを観る気は無かったのに、好評価のレビューを目にしてとりあえず映画を観てしまい、その次は「震電」の話を聞いて、名古屋からはるばる大刀洗まで出かけてしまった。自分の行動は偶然や気分に左右されて決まっている。と、つくづく感じる。でも、いろいろ知らないことを知れたので、まあ別にそれでいいんですけどね。

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