「関ヶ原」と「ドイツ三十年戦争」
戦国マンガ『センゴク』で知られるマンガ家・宮下英樹の最近作の単行本『大乱関ヶ原』(第2巻)と『神聖ローマ帝国三十年戦争』(第1巻)が出た。
関ヶ原合戦は言うまでもなく、1600年に起きた「天下分け目の戦い」。三十年戦争は、1618年に当時の神聖ローマ帝国(ほぼドイツ)で始まり、ヨーロッパ各国を巻き込みながら1648年まで続いた大戦争。
関ヶ原合戦は最近急速に研究が進んでいる。徳川家康が天下を取った戦いというよりも、1598年に豊臣秀吉が死んだ後、豊臣政権内で2年余り続いた権力闘争の最終決着の戦いと考えられている。
三十年戦争の源は、戦争開始から更に100年前に遡る。1517年ルターの宗教改革に始まる、カトリックとプロテスタントの争いが背景になっている。1555年のアウクスブルクの和議でいったん小康状態となったが、1618年にボヘミアから戦火が広がり、ドイツ国内だけでなく、スウェーデンやフランスなども巻き込む大戦争に発展した。1648年にウェストファリア条約締結で戦争終結、これにより教科書的に言えば、主権国家体制が確立したとされる。
1517年に宗教改革が始まり、それが130年後の主権国家体制確立に帰結するプロセスには、まさに歴史のダイナミズムを感じる。日本でも、応仁の乱(1467年)から130年後の関ヶ原合戦が戦国時代の総決算になったのを見ると、歴史的な混乱から新しい秩序が作られるまでは100年以上かかるのだな、と思う。
「三十年戦争」単行本の帯には「ヨーロッパの戦国」の惹句があり、発行会社は別である「関ヶ原」単行本の帯にも「三十年戦争」が広告されている。関ヶ原はともかく、三十年戦争は馴染みのない人が多いだろうから、「関ヶ原」を買った人が「三十年戦争」にも興味を持ってくれるといいなと思う。いずれにしても、日本とヨーロッパの歴史的な時代の転換点を描く二つの宮下作品に、とても期待している。ただ「関ヶ原」は月刊誌連載、「三十年戦争」は隔月刊誌連載で、特に「三十年戦争」は完結までに何年もかかりそうだなあ・・・。
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