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2022年5月28日 (土)

映画「シン・ウルトラマン」

映画「シン・ウルトラマン」が公開中。言わずと知れた、鬼才・庵野秀明が手掛ける「シン」作品である。この「シン」の意味するところはとりあえず、「新」および「真」であると見ていいと思うのだが、「新」はもちろん新しい、そして「真」はオリジナルを超える、くらいの意味合いか。この了解を元に考えると、セルフカバー的な「シン・エヴァンゲリオン」は置いといて、「シン・ゴジラ」は「シン」と呼べる凄い作品だと思うが、「シン・ウルトラマン」の出来はオマージュ作品の性格を大きく超えるものではない、というのが自分の感想。

ウルトラマンの姿で、オリジナルと一番異なるのは、カラータイマーが無いところ。もともと成田亨のデザイン原案にはカラータイマーは無く、いわば原点回帰の姿。カラータイマーは、テレビ番組の演出上付け加えられたものであり、しかも当時カラーテレビの普及が道半ばだったため、青色から赤色の変化を点滅で示す仕掛けも作られた。「シン」ではその代わり(なのか)、エネルギーが減少するとウルトラマンの体色の赤が緑に変化する。その他は、おなじみのスペシウム光線や八つ裂き光輪が、必殺の武器として繰り出されるのは変わらない。

怪獣は「禍威獣」と称されて、ネロンガとガボラが登場。宇宙人は「外星人」と称されて、ザラブとメフィラスが登場。デザインはオリジナルにまあまあ近いものもあれば、かなり異なる印象のものもある(ネットには「エヴァ」の「使途」を想い出すとのレビューが目につく)。映画冒頭にウルトラQ怪獣のパゴスもちょっとだけ登場するが、パゴスの頭部はガボラと同じに見えるし、パゴスの胴体はネロンガとほぼ同様の形状で、これはオリジナルでも着ぐるみの使いまわし(頭部を改造)していたことをベースにしているのだろう。

ストーリーでは、オリジナルの「にせウルトラマン」「巨大フジ隊員」が取り入れられているし、最後にゼットンが登場するのもオリジナルをなぞった展開。ただしゼットンは怪獣ではなく、全人類抹殺のための巨大な最終兵器という形で、しかもウルトラマンと同じ光の星からやってきたゾーフィ(ゾフィーではない)が持ってきた兵器という、かなり捻った設定である。

映画の結末では、ウルトラマンは死んだ・・・と思われる(セリフによる説明から推測するしかないけど)。これがオリジナルだと、ゾフィーが「命を二つ持ってきた」(!)と言って、ウルトラマンもハヤタ隊員も生き続けるわけだが。「シン」では、人間の自己犠牲的行動に強い関心を持ったウルトラマンが、最後には自分も自己犠牲の道を選んだ・・・ようにも見えるが、どうなんだろう。

まあ結局自分は、ウルトラマンよりも怪獣が好き。なぜ当時の(自分も含む)子供たちが怪獣に熱狂したのか。今から思えば成田亨という芸術家がデザインし、高山良策という芸術家が造型したからだよ、つまり僕たちは芸術を愛好していたのだと、何の迷いもなく言うことができる。

だから映画の冒頭を見た時に、庵野氏は先に「シン・ウルトラQ」を作るべきだった、と強く感じた。今からでも遅くない、怪獣だらけの「シン・ウルトラQ」が観たい!

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