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2022年4月25日 (月)

へドラ・日本沈没・大予言

先日、「生誕100年特撮美術監督井上泰幸」展(東京都現代美術館)を観た。

井上泰幸(1922-2012)は、円谷英二特技監督の下で特撮美術を担当し、精巧なミニチュア作りで東宝特撮映画の全盛期を支えた人物。ゴジラシリーズを中心とする怪獣映画、「日本沈没」などSF映画、「連合艦隊」など戦争映画、それらの特撮場面に登場する都会、山や海、熱帯のジャングルや氷に覆われた極地等々、あらゆる情景を精密なミニチュアで再現し、迫力ある映画作りに貢献した。

会場を歩くと、まず大量の絵コンテ、設計図が展示されていることに息を呑む。あらためて認識したのだが、自分が子供の頃に観た怪獣映画の殆どは井上さんが関わるものだった。自分は大体、昭和40年頃から映画館で怪獣映画を見始めたので、ゴジラだと「南海の大決闘」「ゴジラの息子」「怪獣総進撃」、ゴジラ以外だと「フランケンシュタイン対バラゴン」「サンダ対ガイラ」(怖かったぁ)の辺り。加えて春休み、夏休み、冬休みの「東宝チャンピオン祭り」で、「キングコング対ゴジラ」以降の作品を観た。これらの作品の殆どに井上さんは関わっている。このほかテレビ「ウルトラQ」の「ゴメスを倒せ!」は、重厚な画面そのものがドキュメンタリー的かつドラマティックだ。そして展示順路の最後に置かれているのは、「空の大怪獣ラドン」の名場面、井上特撮美術の最高傑作とも言えるであろう岩田屋百貨店のミニチュア。復元されたセットの出来栄えは圧巻で、深く静かな興奮を覚える。

井上さんは「ゴジラ対へドラ」では、へドラの造形も担当。下はデザイン画。

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そして「へドラ」を最後に、東宝から独立してフリーの特撮美術監督になるが、東宝作品にも引き続き参加。展覧会では、独立前後の東宝作品である「ゴジラ対へドラ」「日本沈没」「ノストラダムスの大予言」がまとめて展示されているスペースがある。これらの作品の公開時期は「へドラ」が1971年夏、「日本沈没」が73年末、「大予言」が74年夏。石油ショックが起きたのが73年秋。公害やら人類滅亡やらが取り沙汰されて、何しろ暗い世相で、74年の世の中は終末観のピークに達したという感じではなかったか。異色のゴジラ映画と評価される「ヘドラ」、「マントル対流」を学んだ「日本沈没」、何故か現在「封印」作品扱いの「大予言」。この3作品を、自分は小学校6年生から中学生の間に観てしまったわけで、人格形成に良くない影響があったかも知れない。(苦笑)

それはともかく井上泰幸展、興味深い展示内容でありました。CG全盛の現代から見ると、ミニチュア特撮はまさに職人芸、アナログの極致となるのだろうが、だからこそアナログの凄みを感じることができる展覧会だと思う。

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