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2022年2月 5日 (土)

岩波ホール、終焉を迎える

先日、神田神保町の岩波ホールが7月に閉館することが伝えられた。日本のミニシアター文化の先駆けとなった映画館である。以下は、昨日4日付日経新聞文化面の記事内容の概略。

岩波ホールのある岩波神保町ビルは、1968年に建設された。ビルの所有者である岩波不動産の岩波力社長は、「ホール部門の過去のトレンド、コロナ禍、将来性を考えて判断した」と語った。ビルの賃貸収入は安定しているものの、ホール部門は「50年間で黒字になった年は数回しかない」という。
岩波ホールの総支配人は高野悦子氏(故人)。先代社長の縁者で、パリ高等映画学院に学んだ。74年から、名画上映運動「エキプ・ド・シネマ」を開始。以来岩波ホールでは、65ヵ国・地域の271作品を紹介してきた。
80年代にミニシアターは全盛期を迎える。岩波ホールに限らず、地味な良作や野心作がじわじわと浸透し、時に半年近くもロングランした。
2013年に高野氏が死去した後、岩波ホールは業務の見直しも徐々に進めていたが、コロナ禍の影響も大きく、今年1月11日に閉館発表。配給会社からは驚きや残念な思いが示される中、ホールの存続を願う声も上がっている。

・・・というようなことなのだが、ベタに言えば「一つの時代の終わり」的な感慨も、自分にはちょっとある。日経記事では、企業の文化事業支援の限界という指摘もされていたが、岩波社長の「将来性も考えた」という言葉からは、映画産業における娯楽性優先・文化性後退、映画作品に文学性を求める観客の減少、というような現状認識も、閉館決断を後押ししたのではないか、とも感じる。

約40年前の昔、自分が岩波ホールで観た映画は、ミニシアター的にはメジャーな監督作品であろう、ルキノ・ヴィスコンティの「家族の肖像」「ルードウィヒ」、アンジェイ・ワイダの「大理石の男」。同じ頃に、メインではないサブの上映で、ヴィスコンティの「異邦人」(原作は言わずと知れたカミュの小説)も観ていた。比較的最近では、ワイダの「カティンの森」を2009年末に観て、2013年初にはカミュの遺作「最初の人間」の映画化作品を観た。もう9年も前だな。おそらくこれが、岩波ホールで自分が観た最後の映画になるのだろう。

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