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2021年12月18日 (土)

小説『ひと』について雑感

書店の文庫本コーナーで、「本の雑誌が選ぶ2021年度文庫ベストテン第1位」のオビが巻かれた『ひと』(小野寺史宜・著、祥伝社文庫)が積まれているのが目についた。

自分が『ひと』を読んだのは今年の春、文庫新刊として書店に置かれていた頃である。何となく手に取って本を開いて見ると、冒頭の一行の「砂町銀座」に何とも意外感があった。砂町銀座、要するに東京下町の商店街である。大昔、江東区に住んでいたことがある自分にとって、砂町銀座が小説の舞台になるものなのだろうかと思った。普段小説を読まない自分がこの小説を読んだ理由は、殆どそれに尽きるかもしれない。

「砂町銀座商店街は不思議な場所だ。JRや地下鉄が縦横無尽に走る東京二十三区内。なのに、どの駅からも遠い。それでも賑わっている」。確かに。商店街のある北砂町まで、公共交通機関で行くとすれば都バスしかない。自分は高校生の頃、南砂町から亀戸まで、この路線バスに乗って、砂町銀座入り口の前を毎日往復していた。結局、当時は商店街に足を踏み入れることはなかったけど。

「WEB本の雑誌」では、主人公の人生がちょっとした人との出会いで変わっていく感動作、と紹介されている。主人公は20歳の若者なので、ジャンルとしては、いわゆる青春小説と思っていいんだろう。地味だけどね。何しろ砂町銀座だし。主人公は両親を亡くし、大学をやめたという設定なんだけど、優しくて落ち着いていて淡々としている。何か普通なら「世界で一番不幸なのはこのオレ」とか思って、自暴自棄になりそうなところだが・・・若くして、いきなり人生半分悟っちゃったような感じ。

文庫解説の中江有里は、この小説について、主人公の「成長譚であり、孤独を具現化した」ものであると評する。中江はまた、「孤独は人生において本当に大切なものを浮かび上がらせる。孤独は自分との対話を促し、孤独は自分に問いかける。その時間が孤独を深め、さらに孤独な時間を研ぎ澄ましていく。独りだから、そばにひとがいるありがたさを知る」、と述べている。(孤独の説明としては結構ベタである)

で、孤独の名言として自分が推すのは、平原綾香の歌う「ジュピター」の一節。「愛を学ぶために孤独があるなら、意味のないことなど起りはしない」。なるほどそうか、と思う。軽く無理矢理感があるのもイイ。

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