「新しい資本主義」を問う(岩井克人)
岩井克人・国際基督教大特別招聘教授は、会社の存続と成長は経営者の義務であり、マクロ政策にはストーリーが必要だという。本日付日経新聞のインタビュー記事(「新しい資本主義」を問う)から以下にメモする。
「短期的な利益を追う株主主権から、長期的な視点で持続可能な経済を目指すという(岸田政権の)方向は間違っていない。」
「早大のスズキ・トモ教授の研究によると、日本の企業はバブル崩壊以降、売上高も従業員への給与も設備投資も横ばいで推移したが、配当金だけは4倍にも増えた。さらに自社株買いによって株主還元に拍車がかかった。」
「経営者は次の成長に向け、生み出した付加価値を設備投資や研究開発、従業員に対する人的投資などに振り向けるべきだ。株主主権論に配慮して、株主還元で責任回避している。経営者は会社の存続と成長という義務を負っている。この義務は資本主義の根幹だ。」
「(岸田政権の)新しい資本主義というキーワードは興味深いが、それを物語る筋書きが足りない。」
「アベノミクスには批判もあるが、3本の矢の物語があった。1本目の大規模な金融緩和でインフレ予想を醸成し、2本目の財政政策とあわせてデフレから脱却し、3本目の成長戦略で長期成長を目指す筋書きだった。期待されるほどの成長は実現しなかったが。」
・・・「新しい資本主義」の何が新しいのかは不明だ。それこそ気候変動対応型の資本主義だったら、「新しい」と呼べるのだろうが。先行のアベノミクスも別に新しいところは無かった。金融緩和と財政出動は、普通の経済政策だ。ただし「異次元の」金融緩和と「機動的な」財政出動で、多少新味を出してはいたが。結局、経済は十分に成長軌道に乗れなかったのだから、ここで「分配」を言うのは早すぎる。岸田政権の経済政策のセンスの無さは絶望的である。先週末の日経新聞も「ばらまき色」濃い、と身も蓋もない書き方だったし。(苦笑)
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