コヘレトの言葉
『すべてには時がある』(若松英輔と小友聡の共著、NHK出版)は、旧約聖書「コヘレトの言葉」を取り上げたEテレ「それでも生きる」(NHKこころの時代)放送終了後に、番組内の対話を書籍化したもの。同番組は現在再放送中であり、もしかして「コヘレト」の静かなプチブームが起きているのかも・・・。
さて、NHK番組の「コヘレト」の取り上げ方は、当然ながら真面目だ。NHK本の各章のタイトルを見ても、「価値」が反転する書、「束の間」を生きる、「時」を待つ、「つながり」を感じる、「言葉」を託す、という具合で、かなり真面目感が強い。自分が「コヘレト」に関心を持ったのは、『「バカダークファンタジー」としての聖書入門』(架神恭介・著、イースト・プレス発行、2015年)なので、余計にそう思う。架神本は語り口が軽やかな(不真面目ではない)ところに好感する。以下に「コーヘレト」(架神本の表記)紹介部分をメモしてみる。
旧約で、もっともカッコイイのはこのコーヘレト。何を言ってるのか分からない。でもカッコイイ。いや、分からないからカッコイイのか。
このコーヘレトさん、やたらと空しい空しい言ってます。
彼の根底にあるのは「死ねばオワリ」という「空」の感覚。
全ての者に訪れる「死」を見据えたコーヘレトさん。彼には全てが空しい。不条理や社会悪にも直面し、彼の心はまた空しくなる。
でも、そんな空しい気持ちになっててもメシを食えば旨いと思うし、お酒を飲んだら楽しくなっちゃうわけです。知恵もまあ役に立つよね、と思ってるし、お金があると何でも買えるなあ、とか思ってる。だけど、ある時ふと、「空しいな・・・」と思っちゃう。空しいんだけど、じゃあ、どうすればいいのか? うーん・・・と考えて、コーヘレトさん。
「・・・やっぱメシ食って酒飲むか」
そう、この書はリアルなんですよ! こんな経験、僕たちにだってあるでしょう? 「死」を見据え、世界の空しさを感じても、それはそれとしてメシは旨い! 逆に未来が無価値、無意味だからこそ、今の一瞬の楽しさに意義を感じてしまう。その楽しみもまた空だとしても!
というわけで、この書はとってもデカダンだけどリアルでカッコイイ作品だと思います。
・・・コヘレトの言葉はデカダンでリアルでカッコイイという架神本の評価、なるほどなと思いつつ、NHK本を読んで真面目な見方も学ぶとするか。
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