ウルトラマン俳優の「役者魂」
『ウルトラマン不滅の10大決戦』(集英社新書)は、マンガ家のやくみつるとライターの佐々木徹が、ウルトラマンを演じていたスーツアクター古谷敏を迎えて、ウルトラマンと怪獣の名勝負、というか格闘そのものにフォーカスしつつ語り合うという企画。格闘として見どころが多いという観点から、やくの選出した「10大決戦」は、レッドキングもバルタン星人も登場しないという、ちょっと異色のランキング。しかしこの評価を補強するかのように、古谷さんからも、ダダやケロニアという「人型怪獣」との格闘は、自分も動きやすかったし自分の出す技も見映えがしたとの感想が。特にケロニア役者さんは、受け身が素晴らしく上手だったという話も(笑)。そして深い感銘を受けるのは、対話の中から見えてくる、ウルトラマンという「役」に向き合う古谷さんの真摯な姿勢。以下に古谷さんの発言からメモする。
僕なりに顔が出なくても、ウルトラマンのスーツの中で役者魂らしきものをたぎらせていたのは本当です。全39回の戦いにおいて、怪獣が現れた、ウルトラマンが派手に登場し、パンチやキックを見舞い、最後はスペシウム光線を決め、一件落着、空に飛び立つ――と形式的に考え取り組んだことは一度もありませんでした。
戦いひとつひとつに、なぜ怪獣は現れたのか、この怪獣は単に人類を苦しめるためだけに地上に現れたのか、他に目的があるのか、だとしたら、攻撃を受け止める自分(ウルトラマン)はどのように戦えばいいのか。
他にも、強い怪獣に対し、自分はなにを信じ、なにを願いながら戦うべきなのか。また、スペシウム光線で怪獣を倒すことが本当の終焉、地球の救いとなるのだろうか――たった3分弱の戦いでしかありませんでしたけど、その3分弱に、僕は演じる者のプライドや心意気といったものを奮い立たせ、本編の脚本を踏まえた上で、もうひとつの自分だけのストーリーを作り上げてから、怪獣との戦いに臨んでいたんです。
・・・小生は、やく氏と同じ1959年生まれ。ウルトラマン放映時の自分は小学一年生、たぶん初代ウルトラマンの記憶を持つ最も若いというか幼かった世代だと思う。もう50年以上も前になるわけだが、成田亨デザインの怪獣たちにコーフンしていた記憶は鮮明である。本当にあの頃の子供番組は、大人たちが多大な情熱とアイデアを注いで作り上げてくれていたのだと、あらためて思う。感謝、感謝、感謝のほかありません。ニッポンの子供で本当に良かった。
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