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2021年5月26日 (水)

バブル崩壊のトラウマの無い世代

昨日25日付日経新聞市況面コラム「大機小機」の表題は「トラウマを知らない子供たち」。その昔、「戦争を知らない子供たち」という歌があったなぁ、と思いつつ、以下にメモする。

日本の個人金融資産は2020年末に1948兆円に達し、2000兆円到達も目の前だ。一方、日本の家計の金融資産の54%は現預金、しかも円で保有され、欧米のようにリスク資産に分散された状況と大きく異なる。
しかしこうした状況は、1990年前後のバブル崩壊を機に、資産デフレと円高のダブルパンチが加わった中での必然でもあった。
こうしたバブル崩壊以降の負の体験、いわゆるトラウマが四半世紀近く続いたなか、リスクテイクを行うことを恐れる世代が生じたのも無理もないことだ。

一方、実質的にアベノミクスが始まった12年末以降の8年間の局面で、為替は1ドル70円台から100円台後半の水準に定着し、株式市場も日経平均が1万円割れから2万円台後半の水準に達した。
今日、20歳代の若者は社会人になって以降、アベノミクス相場の資産運用で成功体験しかない。同様に30歳代も金融危機以降に社会人になり、比較的トラウマは少ない。
これらの「トラウマを知らない子供たち」は、それ以前の世代と異なることを認識する必要がある。こうした世代が昨今、ネット証券を中心として口座を急増させているのだ。
トラウマを持たず、かつパソコンやインターネットに囲まれて育った「デジタルネーティブ」の若者世代の台頭が起点となって、日本でも貯蓄から投資への流れが生じていく可能性を秘めている。

・・・90年代バブル崩壊の「トラウマ」。確かに90年代の記憶のある者と、アベノミクス以降しか知らない若い世代とは、株相場に対する世界観はおそらくまるで違うだろう。過去を知らないというのは、それはそれで強みであると捉えることもできる。が、果たして「トラウマを知らない子供たち」は、新しい時代を開くことになるのだろうか。思い出すのは80年代バブル相場初期の株価高騰も、若い世代の機関投資家が主役の「新人類相場」と呼ばれていた。昨今の「デジタルネーティブ」の若い投資家たちも、昨年の「コロナ暴落」からの急回復を経験して、まだまだ意気盛んと思われる。その一方では、老後2000万円必要という意識から、相場変動に負けない長期積立分散投資に地道に取り組む若い人たちも増えているようだ。こういう若い人たちが、貯蓄から投資への流れ、その本流になっていくことが期待される。

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