« 米共和党、無惨なり | トップページ | マイナス金利と構造改革 »

2021年1月26日 (火)

「能力主義」称揚と米国政党の変質

新しい世界』(講談社現代新書)は、副題に「世界の賢人16人が語る未来」とあるように、「クーリエ・ジャポン」のインタビュー記事を集めて再構成したもの。賢人の一人、政治哲学者マイケル・サンデルは、革新派の政治家がグローバル化に対応するにあたってメリトクラシー(能力主義)の文化を持ち上げてしまったせいで、労働者階級の人びとが当然のごとく怒りを抱き、惨憺たる結果を招いてしまったという。サンデルの述べるところから以下にメモする。

(中道左派の政党は)労働者の高まりゆく怒りと不満の声が耳に入っていませんでした。グローバル化の唯一の問題点は、勝ち組から負け組への所得再分配が不充分なだけだとみなしていたところがありました。しかし、これは単に正義と再分配の問題ではないのです。これは社会から承認されたい、社会的に尊重されたい、という問題でもありました。
労働者階級の白人男性は、社会が自分たちを尊重しなくなったと感じているのです。

政党の支持基盤の変化は興味深いです。社会民主主義の政党は本来、労働者と中流階級のための政党であり、彼らに支持されていました。従来は、富裕層と高学歴層が共和党に投票し、労働者が民主党に投票する傾向があったのです。それが1970~80年代から変わりはじめ、90年代の時点で、ビル・クリントンとトニー・ブレアが新自由主義的なグローバル化や金融の規制緩和を推し進めるようになっていました。中道左派の政党は次第に、高学歴の官僚やビジネスエリートの価値観に自分たちを合わせていき、労働者階級の支持を失ったのです。いまでは大卒が民主党に投票し、低学歴者がトランプに投票しています。教育が米国政治を分断する最大の要因になっています。

・・・サンデルは、能力主義の闇の部分に気付くことなしには、民衆の怒りを利用するポピュリズムに対抗できる政治を用意できないことを、とりわけ革新政党に分かってほしい、と語っている。

|

« 米共和党、無惨なり | トップページ | マイナス金利と構造改革 »