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2020年8月24日 (月)

ハイデガーの反ユダヤ思想

全体主義の克服』(集英社新書)は、マルクス・ガブリエルと中島隆博、哲学者同士の対談本。以下に、ガブリエルがハイデガーの「黒ノート」について語っている部分からメモする。

「黒ノート」で衝撃的なのは、戦争が始まってから、1940年代の末にかけて書かれた部分です。ハイデガーは、はっきりこう信じていました。技術的な疎外(技術によって人間が駆り立てられることで疎外されていくこと)の知的かつ歴史的な起源は、ユダヤ人およびユダヤ的精神であると。
というのも、ユダヤ人が世界を脱呪術化させたとハイデガーは考えていたからです。脱呪術化という考え方はマックス・ウェーバーの社会学から学んだものです。ウェーバーはユダヤ人が技術と近代、そして合理主義を発明したと主張するために、聖書の考え方を取り上げました。

「黒ノート」を書き始める以前に発表された論考では、自然を数学的に理解することは、デカルトやデカルト主義に結びつけられていました。しかし、「黒ノート」では、デカルト主義がユダヤ人に置き換わったのです。
ハイデガーによるデカルト主義批判は、公式には、フッサールの『デカルト的省察』(1931年)への批判として現れました。そうすると、フッサールがユダヤ人であるということで、デカルト主義とユダヤ人は互いに置き換えることができることになります。

ハイデガーが『存在と時間』を「尊敬と友情の念を込めて」フッサールに捧げたことは有名な話ですが、ナチスが政権を掌握し、ハイデガーがフライブルク大学の総長になると、うってかわって、1942年に刊行された第五版では、その献辞そのものを削除しました。
これは非常に恐ろしいことです。フッサールがユダヤ人であるというだけで、ハイデガーはフッサールを攻撃しているのですから。彼は、筋金入りの反ユダヤ主義信者でした。

(「黒ノート」の中身が)ここまでひどいとは誰も予想していなかったでしょう。ハイデガーは本物のナチです。ナチに単に幻想を抱いた愚か者ではありません。

・・・ハイデガー=ナチ問題は哲学業界では大問題なんだろうけど、一般人にはほぼどうでもいい話としか思えない。ハイデガーの何を評価するかと言えば、とりあえず自分としては、「哲学史家としてのハイデガー」を重視する木田元先生に倣っておけば良いと考えています。

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