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2020年4月12日 (日)

カミュ『ペスト』が売れてるとか

「死病」が「大流行」している、というわけでもないのに、カミュの小説『ペスト』が売れているという話を聞いた時は、「へぇ~」って感じだった。リーマンショック時に、『蟹工船』が軽く流行ったことを思い出した。(苦笑)

新型コロナウイルスの感染拡大以来、新潮文庫の『ペスト』は15万部以上を増刷。これは通常の年間販売数5000部の30年分に当たる。また、累計では100万部を超えたという(文庫発行は1969年だから50年間の累計)。

そんなちょっとした「ブーム」に後押しされたのだろう、昨日土曜日の午後には、『ペスト』を取り上げたEテレ番組「100分de名著」が再放送されていた。本放送の2018年6月当時は、震災後の日本を考える一冊として読む、というのが番組テーマの狙いだったようだが、2年後の今、図らずもパンデミックという、本の内容により近い状況にマッチした番組になっちゃったんだなあ。

自分も『ペスト』という小説があるのは知っていたが、これまで読もうという気持ちになったことは無かった。しかしまあ、これもきっかけだと思ってとにかく読んでみた、というか目を通してみた・・・けど、やっぱりそんなに面白い小説じゃないな。でも、例えばペスト終息を待ち望む人々がノストラダムスなどの予言を持て囃すとか、ディテールの一部には妙にリアルな感じもある。

カミュに『カリギュラ』という演劇作品がある。そこでは暴君として知られるローマ皇帝カリギュラが、人々に理不尽な死をもたらす不条理そのものを体現する存在として現われる。すなわち主役は不条理そのものと考えてよい。
一方、『ペスト』では、不条理の象徴と見られるペストに襲われた町で、人々が次から次に死んでいく場面をこれでもかこれでもかと描写するというよりは、様々な考え方を持つ登場人物たちがペストに立ち向かう姿を淡々と述べているという印象。言い換えれば、巨大な「不条理」に対する人々の「反抗」と「連帯」が描かれているという具合で、これに「殺人の拒否」も加えて、カミュ的テーマの大部分が小説的表現として現われている作品といえるだろう。

Eテレ番組でも紹介されたように、1947年に発表された『ペスト』には、ナチドイツ支配下のフランスにおけるレジスタンス経験が色濃く反映されているのだとすれば、この小説が今の日本で売れているというのも、解るようで解らないという感じになってくるけどね。

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