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2019年4月30日 (火)

平成という時代

平成とはどういう時代だったか。証券業界の人間としては、経済的に見て結局、バブル崩壊とデフレの克服、グローバル化の時代だったというほかない。つまり平成という時代の性格は、最初の10年間すなわち90年代に決まっていたと言える。現在デフレはおおよそ終了した気配はあるが、有効な成長戦略の実行も容易ではないという感じ。
政治的にも90年代初頭の冷戦の終わりから、大国の立ち位置の変化や新興国の台頭、テロの活発化などを背景に、日本も国際貢献や日米関係の再構築など従来とは次元の異なる対応を迫られた時代だった。今後も国際関係において日本は難しい舵取りを迫られるのだろう。
加えて地震や津波など自然災害、さらには原発事故など、重大な事故災害への対応も、国家レベルの課題として平成の時代に立ち現れた。これもまた新時代に引き継がれる課題だ。

日本が確固とした方針を持って、政治・経済共に新たな展開を図れるのか。それが新しい時代への期待と不安だ。

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2019年4月25日 (木)

哲学はロックなのである

哲学を語るコンサルタントとして知られる山口周氏。サイト「NewsPicks」4/16発信記事「ビジネスで武器になる哲学」から、氏の話を以下にメモする。

哲学者はロックンローラー。世の中に対して「それって違うんじゃない?」という批判的なまなざしを、常に提示し続けてきた人々です。

「自由はキツイですよ」と説いたのが、ドイツの哲学者フロムです。例えば、ナチスドイツで発生したファシズム。「自由」はもともと市民が頑張って手に入れた権利ですが、人々はそれに伴う孤独と重い責任に耐えられなくなり、こうした全体主義に傾倒するようになったと、フロムは言います。自由に耐え得る強い人とは、自分の力で考えることができる人です。自由になるとは「年収が高い方がいい」とか「学歴が高い方がいい」とか、こうあるべきという他の人の物差しからどんどん外れること。そんな中で、無規範に陥らずに、自分の規範でしっかり生きることができるのか。そういう強い人だけが、本当の意味で自由を謳歌することができるのです。

不良と優等生、世界を悪い方に導くのはどちらでしょうか。それは「無批判な優等生」と答えたのが、哲学者のハンナ・アーレントです。彼女はナチスドイツでユダヤ人虐殺計画において、大きな役割を果たしたアドルフ・アイヒマンについて本にまとめています。彼はナチス党で出世するために自分の任務を一生懸命こなした結果、恐ろしい犯罪を犯すに至った。つまり、悪とは「システムを無批判に受け入れること」なのだと、アーレントは分析しています。

人間には、アイデンティティに偏執するパラノ(パラノイア)型と、直感の赴くまま柔軟に生きるスキゾ型がいる。そう考えたのが、フランスの哲学者ドゥルーズです。パラノ型は時代や環境の変化に弱い。それに対して、スキゾ型はしなやかに時代の変化に対応していけます。ここはやばそうだと直感的に感じたら、さっさと逃げる。物事が目まぐるしく変化する現代では、逃げる勇気を持ったスキゾ型の生き方こそが必要となってくると思います。

「無批判な優等生が世界を悪くする」というお話をしましたが、哲学者は「真面目な不良」だと言えます。おかしなルールには従わないけれど、人が幸せに生きるということにかけては真面目な人々なのです。ビジネスの世界で活躍しながらも、優等生にならず「不良の魂」は失わない。そんなしなやかな精神が、今後はさらに求められてゆくでしょう。

・・・自分にとっては「スキゾ」と「パラノ」といえば浅田彰なんだよなあ。「逃走論」という本もあったっけ。とりあえず社会システムに従いつつも、時に批判し、逃げるというやり方で反抗する。自分の規範を持って反抗する、それが哲学すなわちロック、だと思う。

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2019年4月24日 (水)

『82年生まれ、キム・ジヨン』

韓国で100万部の大ベストセラーという『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳、筑摩書房)が、日本でも多くの女性たちの共感を集めている模様。「フェミニズム小説」との評価もある作品だが、ストーリーが淡々と語られていくなかで、主人公であるキム・ジヨンが一人の小説的人物としてリアルに立ち現れてくるという感じは余りしない。全体の叙述は精神科医のカルテという体裁を取っており、文中には各種データの出典を示す注釈も付けられるなど、様々なエピソードが集められたノンフィクション、あるいは社会学的なレポートのような印象もある。キム・ジヨンという名前は、82年生まれの韓国女性に最も多い名前であるそうだが、主人公はまさに現代の韓国社会で生きる女性たちの様々な経験を最大公約数的にまとめたモデルとしての人物像であるように思われた。 

それにしても韓国社会において、儒教的伝統に由来する男尊女卑の価値観は非常に根深いものがある、と感じる。主人公は学校や会社の中で、あるいは主婦という立場になってからも、社会の中で女性に向けられる視線の冷たさ、女性がぞんざいに扱われることのストレスを感じ続け、ついには心身の不調に陥ってしまう。主人公に起きる「憑依現象」から、物語の「書き手」である精神科医が疑うのは解離性障害(多重人格障害)だが、これは、つらい体験から自分を切り離そうとするために起こる一種の防衛反応とされる。ただ諸々の「差別的」状況の過酷さが主人公の心の病につながる因果関係を、読者がリアルに感じられるかというと、そこまで充分に小説的に描かれているとは思えない。

小説としての評価はともかく、「キム・ジヨン」は韓国社会の今を考える材料としては興味深い作品だと思う。「キム・ジヨン」の話を読むと、韓国社会の置かれている状況はどういうものか気になってくる。試しに少し検索してみると、若者が恋愛、結婚、出産を諦める「三放」、加えて人間関係とマイホームを諦める「五放」、更に夢と就職を諦める「七放」とか、出生率1割れの0.98、あるいは「Me too」運動の盛り上がりなど、社会が大きな困難に直面していると思われる話ばかり目に付く。これら韓国の状況と課題は、多かれ少なかれ日本も共有していると見てよいだろう。つまり「キム・ジヨン」を読めば、自ずと日本の状況についても考えざるを得なくなる、ということだ。

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2019年4月17日 (水)

ROIC(投下資本利益率)

本日付日経新聞記事(投下資金「生かす力」頭打ち)から以下にメモ。

ROICは一般に税引き後の営業利益を、投下資本(自己資本と有利子負債の合計)で割って算出する。

日本の上場企業のROICはリーマン・ショックがあった08年度に3.24%まで下がったものの、それ以降は世界的な景気拡大と円高是正による輸出採算の改善などで緩やかに上昇していた。ところが18年度は6.75%、0.03ポイントの増加にとどまった。リーマン前のピークだった07年度の6.81%を目前に足踏みしている。

ROICを分析するには、売上高を投下資本で割った「投資資本回転率」と売上高営業利益率という2つの要素に分類するとわかりやすい。
18年度の日本企業は投下資本回転率が1.2回、営業利益率が5.5%だった。これをリーマン・ショック時の08年度と比べると、営業利益率が3.2ポイント改善する一方、投下資本回転率はむしろ0.2回下がった。
事業の大胆な「選択と集中」が進まず、売り上げを伸ばしきれていない。

積み上げた利益を再投資に回して新しい収益源を開拓するよりも、経営環境が悪化したときに備えて現預金のままため込む傾向も強い。

・・・最近はコーポレート・ガバナンス改革で、日本企業の稼ぐ力への期待もそこそこ盛り上がったような感じだったが、指標数値から見るとそれ程劇的な変化を遂げているわけでもないようで。何となく思い切りがよくないというかリスクを負わない、ディフェンシブに傾く。みたいな、日本企業のアティテュードは昔とあんまり変わんないように見える・・・し、これからもあんまり変わらないのかなあと。

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2019年4月 9日 (火)

「トラスト」経営が重要に

本日付日経新聞オピニオン面コラム記事(「トラスト」欠いたゴーン氏)からメモする。

米人事コンサルティング会社のコーン・フェリーが最近、世界の経営者や管理職など約15万人を分析して選んだ「これからのグローバル経営者に求められる5つのキーワード」は、「アンティシペート(変化に俊敏に対応する)」「ドライブ(他者に活力を与えてものごとを進める)」「アクセラレート(アイデアを素早く実行する)」「パートナー(他者と協力し、アイデアを交換する)」「トラスト(多様な力を結合する)」だ。

トラストというと、一般的には「信用」「信頼」などの意味を思い浮かべがちだ。だが、欧米企業では最近、「多様性を認める」「人と人を結合する」などと発展的に解釈するようになっているという。より具体的に言い換えるなら、「国籍や性別、年齢に関係なく、励まし合いつつ、ものごとを成就する」「日本人、フランス人という単一的な集団ではなく、多様な層の間で信頼のネットワークを築く」状態だ。

「格差が広がり、破壊的技術が産業や社会を大きく変える時代だからこそ、あらゆる層の人々を結合する力がリーダーには求められる」(米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の創業者、ヘンリー・クラビス氏)。

新結合とも訳されるイノベーションの現場を例に引けば、それが起きなくなった組織には、「とてつもないことを考える人材がいなくなった」のではない。組織をもり立て、様々な層の人材を結合できるリーダーが不足しているのだ。経営者に求められるのは必ずしも一人で引っ張るカリスマ性ではないだろう。むしろ、人にささげることに徹する「サーバントシップ(同伴者精神)」こそ、これから求められる経営者像ではないか。

・・・日産自動車の危機的状況において求められたのが、カリスマ経営者カルロス・ゴーンだった。ということは、日産の業績が急回復を果たしたとっくの昔に、ゴーン氏の役割は実質的に終わっていたと言えるだろう。その後は後継者が見出せないまま、ゴーン氏が惰性でトップを続けていたという印象がある。今後は特に日産に限らず、多様な人材を結合できる企業経営者の登場が期待される。このタイプのリーダーは企業だけでなく、昨今様々な「分断」が取り沙汰される状況にある国家のトップにも求められるものだろう。

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2019年4月 6日 (土)

新世代の投資マインドに期待

金融リテラシーの向上が叫ばれるニッポンだけど、言うは易く行うは難し。結局は地道なマネー教育を忍耐強く続けていくしかない。日経新聞電子版4/1発信の経済評論家・豊島逸夫氏執筆のコラム記事(「令和世代」が日本人主導の市場形成の息吹)から、以下にメモする。

一般個人の意識を変えるのは10年かかる。筆者(=豊島氏)も現場で痛感している。初心者向けセミナーでは、「どの銘柄を買えばよいか」との短絡的質問が圧倒的に多い。このような個人投資家の多くは中高年層なので、今から投資マインドを変えるのは簡単ではない。

このため筆者はもっぱら、若い世代を中心にマネー教育を説いている。バブル経験がなく、経済的に良いことがなく、これからもっと厳しくなる、と覚悟している世代だ。令和の時代に社会の中核を担う世代ともいえる。
この世代相手のセミナーの雰囲気は、投資セミナー特有のギラギラした雰囲気がない。進学塾のごとく、講師の話を熱心にノートにメモするペンのサラサラという音だけが会場に響く。赤ちゃん連れの若夫婦も見られほほ笑ましい。こうした層からは「この子が成人になる20年後に日本はどうなっているかが気になる。投資もコツコツタイプの長期投資に切り替えた」という声が聞かれる。「自分たちの時代が厳しいことは覚悟のうえだが、この子につらい思いはさせたくない。そのために勉強を続けたい」と言われると、講師としてもやりがいを感じる。

次の株式市場を担うであろう「令和世代」の投資家たちが、日本市場の主導権を外国人投資家から奪還することを期待したい。

・・・バブルの崩壊後、政策当局は「貯蓄から投資へ」の旗を振り続けてきたが、現実は期待ほどには進んでいない。それでも、若い世代に「長期分散投資」の考え方が着実に浸透していけば、日本の株式市場の基盤がより健全で厚みのあるものになっていくことは間違いない。

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