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2017年8月 1日 (火)

ROEが示す企業の行動パターン

日本企業の自己資本利益率(ROE)は10%に満たない水準であり、米国企業のおよそ半分にとどまる。2016年度の日本の上場企業のROEは8.68%で、これはバブル最盛期の1988年度の8.65%とほぼ同水準。しかしその中身は大分異なるものだという。日本経済新聞電子版7/30付記事「日本企業のROEはなぜ1桁なのか?」からメモする。
 
ROEという指標は事業の総合的な採算を表す「売上高純利益率」、資産の効率利用の度合いを測る「総資産回転率」、負債の多寡を示す「財務レバレッジ」の3要素に分解して考えるのが一般的です。
この3要素に分解すると、昨年度がそれぞれ「4.37%、0.78回、2.55倍」だったのに対して、88年度は「1.88%、1.14回、4.02倍」となっています。バブル期に比べ直近の数値が上昇している、すなわち計算上はROEの押し上げにつながる項目は「利益率」だけで、「回転率」と「レバレッジ」は低下しています。
 
ここから、過去四半世紀余りの日本企業の行動パターンが浮かび上がります。まず、過剰債務の解消に向けて銀行などからの借り入れをひたすら返済してきた姿です。これがレバレッジ低下になって表れています。財務体質の改善は経営にとって決して悪いことではありませんが、適度な借り入れによって負債と資本のバランスを調整することは、洗練された財務戦略の一つでもあります。良くも悪くも、日本企業の財務行動にはこの視点が欠けています。
 
もう一つ気になるのは、総資産回転率の低下です。通常、この回転率が1倍を下回ると、企業が収益を生みにくい資産を持ちすぎていると解されます。
何が無駄なのでしょう。企業によって事情はさまざまなのでしょうが、思い当たるのは過去最高水準に積み上がっている手元資金です。昨年度末は1年前から約3兆円増えて112兆円になりました。一般的に手元資金は平均月商の1倍強もあれば十分とされますが、112兆円という水準は2倍にも相当します。
 
手元資金積み上がりの理由を企業に聞くと、最も多いのは「不確実性への備え」です。リーマン・ショックに続き東日本大震災も経験した日本企業は、先行きへの警戒心が非常に強く、万が一への備えとして現金を多めに持つ習性がついているのです。
 
借入金を返し、収益を生みにくい資産を抱えるなかでROEを高める方法は、売上高純利益率の上昇しかありません。王道は値上げや、利益率の高いプレミアム製品・サービスを世に出して利益率を高めることです。
 
・・・バブル崩壊後の日本企業の行動は、基本的にリスク回避傾向の強いパターンのまま現在に至っている、と言えそうだ。

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