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2017年6月12日 (月)

「貿易問題」=「円買い」ではない

米国トランプ政権が「貿易不均衡」を訴えるわりには、円高が進まない。なぜか・・・日経新聞電子版の本日付発信記事(「貿易摩擦=円高」の誤解)からメモする。
 
なぜ「貿易摩擦=円高」の構図が生じないのか。この解を導くには、この構図が顕在化した95年の円急騰局面を振り返ってみる必要がある。
 
94年6月、円相場が1ドル=100円の節目を突破。95年に入ると、当時の米クリントン政権が日米包括経済協議の自動車・同部品交渉で対日圧力を強め、歩調を合わせるように円高が加速する。95年4月にはブラウン米商務長官(当時)による「ドルが対円で下落しても米政府の日米自動車協議への強い姿勢は変わらない」との発言を受け、一気に当時の最高値79円75銭を記録した。
 
重要なのは円急騰を招いた仕組みだ。当時の円買いを主導したのはヘッジファンドでなく、日本の輸出企業だった。90年代前半、日本の貿易黒字は10兆円を大きく上回り、企業は輸出で得た膨大なドルを円に替える必要に迫られていた。
為替対策が未成熟だった企業は90円や85円といった節目の水準に円買い注文を置く。それを見越してファンドが節目の水準を狙って円買いを仕掛けると、一気に膨大な円買い注文が成立し、円高が加速する仕組みだ。ファンドは円急騰の媒介で、主役は日本の輸出企業だったわけだ。
 
これを現在に当てはめると「貿易摩擦=円急騰」の構図が成り立たないことがよく分かる。
 
2011年3月の東日本大震災で日本のサプライチェーン(部品供給網)が寸断されて以降、日本は貿易赤字に転じた。急激な原油安が生じた16年こそ貿易黒字になったが、90年代前半とは比べものにならない規模にとどまる。トランプ政権が日米の貿易摩擦をあおってファンドが円買いを仕掛けても、主役である輸出企業の円買いは限られ、円高が加速しない。
しかも大震災を機に、生産体制は大きく変わった。日本企業が部品供給網を海外に求めた結果、製造業の海外生産比率は急上昇し、一気に20%を突破。10%にも満たなかった90年代前半と比べ、海外で得たドルを円に戻さず、海外での再投資に振り向けるケースが急増している。
 
過去の経験則を頼りに貿易摩擦が浮上すると、ヘッジファンドや機械取引による短期的な円買いは出てくる。だが中長期的な円相場は需給要因に依拠する面が大きい。「貿易摩擦=円急騰」の構図が現実にならないのは異変でなく、当然のことになりつつある。
 
・・・「貿易摩擦」は、もはや円買い材料にならない。そもそもグローバル経済の構造が出来上がっている現在、個別の国との貿易不均衡を問題視する意味があるとも思えない。トランプ政権はホントに不可解だ。

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