『わが闘争』ドイツで出版
ドイツで発禁本扱いだったヒトラー『わが闘争』が、70年ぶりに出版されたそうだ。ただし学術研究書として。今月8日に現代史研究所(ミュンヘン)から発行されている。「日経ビジネスオンライン」の本日付発信記事から以下にメモする。
ヒトラーが1920年代に著した『わが闘争』は、33年にヒトラーが権力を掌握して以降、全体主義と反ユダヤ主義を掲げるナチズムを推進する支柱となり、ドイツ敗戦の45年までに発行部数は実に1200万部にも達したという。
敗戦に伴い占領軍としてミュンヘンに駐留した米国軍は、ヒトラーの当時の私的住所がミュンヘンにあったことから、『わが闘争』の著作権を地元バイエルン州政府に移すことで同著出版の道を封じた。同州政府が以来、ドイツ語による出版を全て拒絶してきたのだ。
しかし、ドイツの著作権法では著者の死後70年で著作権の保護期間が切れる。『わが闘争』の著作権も2015年末で消失し、誰でも再出版できるようになることが分かっていた。そのため、ドイツでは何年も前から『わが闘争』の再出版問題にどう対応するか、様々な議論が重ねられてきた。
その結果、各連邦州政府の司法当局は、ドイツの「反扇動法」を根拠に無批判なまま同著を出版することを禁じることで合意。その一方で進められてきたのが、現代史研究所による注釈付き学術版である『わが闘争』の出版だ。
現代史研究所は、ナチズムがなぜ台頭するに至ったかを研究すべく1949年に設立された。同研究所の歴史家5人が3年の歳月をかけ、3500以上に上る学術的注釈を加えながら編集した新版は上下2巻、計約2000ページに及ぶ。
『わが闘争』の書店からの注文が予想より多かったため、現代史研究所は発行部数を当初の4000部から急遽1万6000部に拡大した。独アマゾンでは8日、数時間で完売したという。
・・・ナチズム研究はピークを過ぎた。という話を聞いたことがある。確かに、これから新たな事実や新しい視点が出てくるというのも想像しにくい。となれば、ここでナチズムの「原点」である『わが闘争』の研究書版を世に送り出すのも、充分意義のある仕事だと思われる。これはもうとにかく純然たる歴史研究の資料として扱えば良いわけだし。
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