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2015年5月26日 (火)

『大分岐』邦訳、ようやく刊行

ポメランツの『大分岐』の邦訳がやっと出る。原著『The Great Divergence』刊行は2000年だから、もう15年も経ってる。「大分岐」については池田信夫先生がしばしば言及しているだけに、気にはなっていたけど、大著なのですぐ読もうという気も無いし(苦笑)、とりあえず検索して出てきた10年以上前の書評(帝国書院「世界史のしおり」2004年10月号、大阪市立大学・脇村孝平教授の執筆)から以下にメモする。(ここでは書名は『大いなる逸脱』)

ポメランツが提起する主要論点の第一は、市場の発展という基準で比較して、近世(16~18世紀)のヨーロッパとアジアでは、遅くとも18世紀末までその程度にまったく差はなかったという主張である。ここで比較されるのは、どちらも先進地帯のイングランドと中国・江南(長江下流域)という地域である。工業化以前の世界では、アダム=スミスが『諸国民の富』で描いたように、市場の発展による分業の程度が経済発展(生活水準の向上)を可能にする。かかるスミス的な意味での経済発展という点で、両地域に違いはなかったという。

第二の論点は、数世紀にわたるこのような市場主導の経済発展と人口増加の末に、18世紀後半にどちらの地域も、資源(環境)危機に直面したとするものである。すなわち、食糧・繊維原料・燃料・建築資材などの土地から得られる資源に限界が訪れていた。

しかし、かかる隘路に直面して、イングランドと江南ではその後の軌道が大きく異なることになる。ポメランツの第三の論点は、この点に関わっている。
ヨーロッパは、18世紀後半以降、次の二つの要因によって資源危機から脱出し、「逸脱」したという。第一は、石炭の存在とその利用である。イングランドには石炭が豊富に存在した。これが、「エネルギー革命」としての産業革命を可能にした。第二は、「新大陸」(アメリカ大陸)の存在である。ヨーロッパ(イングランド)は、15世紀末以降に獲得した新世界の資源を自由に利用することによって、資源危機を突破しえたということになる。

ポメランツ説の新しさはどこにあるのだろうか。第一は、18世紀後半までは、アジアにおける経済発展は、ヨーロッパと同等もしくは凌駕していたと強く主張した点である。第二は、ヨーロッパに「大いなる逸脱」を可能にさせたのは、内在的に形成された優位性ではなく、「石炭」と「新大陸」という、ヨーロッパにとっては半ば「外在的」で「偶然的」な事情、すなわち比喩的にいえば「タナボタ」的な要因であったと主張した点である。

正統的な世界史解釈に大きな動揺を与えたという意味で、既に本書は古典的位置を獲得しているとさえ思われる。

・・・脇村先生の言ったとおり、グローバル・ヒストリーの「古典」となっている本書。挑戦する価値のある分厚い本としては、ピケティ『21世紀の資本』に勝るとも劣らない?

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